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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第3章 朱き炎鱗、空を翔る翼
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#03-04 絶対復讐<リベンジ>



気を失った奏と紫苑がスズネの手配したヘリで白銀の息のかかった病院へと輸送されていくのを見送る。

付添は漸苑と自身もかなり疲労している萌愛。

残りのメンバーは、一度近くの自衛隊基地にて、遥人との情報交換を行っていた。

会議室のモニターには遥人と耀史が写されている。


『まさか、奏さんと紫苑さんにあんな大けがを負わせてしまうことになるとは。本当に申し訳ない。僕の認識が甘かったね……』

『怪我自体は利里がいたおかげで完全に塞がってるけど、失血のダメージと精神的ショック、あとはあのよくわからないスキルのせいで“穢れ”なる状態異常が出てるらしいけど』

「女神には特に効くようだな。あと、あの状態だと女神としての権能が全く使えないらしい。萌愛の“神儀典装”も使えないようだし」

『利里さん、魔法で回復できないの?』

「やってみましたが、上手くいきませんでした」

『うーん……どうするかなぁ』

「まだまだ龍はいるわけだから、こんなところで奏の支援がなくなるのはきついな」

「ですね。前に立ってもらわずとも補助だけでも絶大な効果がありますから」

「そういえば、今回のアレ。Lv.300ほどあったらしいが……もう一匹の方はどうなってるんだ?」

『一応、衛星で追う事は出来てるんだけど……耀史、地図出せる?』

『ああ、うん』


画面が世界地図に切り替わり、ハワイ島方面に向けて移動していく赤い点が映る。


『まあ、御覧の通りもうすぐアメリカの領空に入るからアメリカ空軍に依頼していたんだけど』

「そもそも通常弾が効くのか?」

『耀史に作らせた特殊弾は100発ほどあるけど、どうなるかはわからない』

「だが、飛んでいる以上はどうしようもないか……」

「飛行系のスキルとか持ってないんですか?瑛大隊長」

「一応、取れることは取れるらしいが、持っていない」

「鳥系の獣人とかいないのか?」

『獣人の速度では風属性の龍には追いつけないよ』

「じゃあ、なんとかミサイルとかで撃ち落としてだな……」

『現時点だと海に落ちるからこちらも戦うすべはほぼないよ』

「いや、静音たちは水中呼吸のスキルがあるし、普通に戦えるはず」

『――あれ?そういえば静音さんは?付き添いで病院行った?』

「そんなことは……」

「え?マジでどこ行った!?」

「あ、洋のボケもいない」

「明日香もだ!」

「最悪のケースが頭をよぎる」

『おーい、誰か止めろよ!』

「そんなこと言われても」

「そもそも行く方法なんてないからそんなに焦らなくても」

『あるよ!アスカさんが一緒に行ったんだろ!?』

「……おい」

「まさか……」


その瞬間、窓の外から何か異常に重たい物がコンクリートの上に降り立つ音がしたと思うと、凄まじい突風が窓に叩きつけられた。


「やりやがった!」

『あーあ、どうやって言い訳しようかなぁ』





遥人からの情報を聞き出した後、静音と明日香は部屋を抜け出し、明日香はすぐに地脈から魔力を引き上げ、龍玉を使って風龍・(ラン)の召喚準備に入った。


「少し時間がかかります」

「ありがとう」

「いえ、私も悔しいですから」

「そうよね。仇自体は奏が自分でやっちゃったけど、やっぱり悔しいもの。このもやもやをぶつける相手がちょうどいてよかったわ」

「どうやって倒しますか?」

「明日香に撃ち落としてもらって、水中戦かしら」

「やはりそれがベストですね」

「おーい、オレも連れてってくれ」

「洋、邪魔しないで」

「邪魔なんてしないって、ついでに連れてってくれよ。オレ、空中戦できるスキルいくつか持ってるし、戦闘機の相手ぐらいならできるから」

「……本気?」

「本気本気」

「召喚、来ます!」


緑の魔法陣からゆっくりと細身の西洋竜が吐き出される。


「お久しぶりです、ご主人」

「嵐、事情は後で説明するけど、とりあえず乗せて飛んで!」

「はい」


飛び乗った明日香に続いて、静音もその背に登る。


「洋は?」

「どこでもいいから乗っけてって」

「嵐、洋さんも連れていきます」

「了解」


その巨大な手で洋を掴むと、地面を強く蹴って飛び上がった。


「ばれましたかね?」

「バレたでしょうね」

「おおおお……こわっ」

「どっちに?」

「東に!」


明日香が東を指さすのに従って、方向を転換すると一気に加速する。

乗っている人間は魔法で保護されているとは言えほぼ生身での高速飛行はかなり恐ろしいものだが、明日香は何度か経験しているので平気なようだった。


「わあああああ、速ぇええええ!?」

「洋煩い!」

「なんで平気なんだよ!というか時速何キロ!?」

「2000キロぐらいですかね?」

「ハワイまで20分ね」

「え?音速超えてんの!?」

「嵐、もう少し急げる?」

「余裕です」


さらに加速。


「う――明日香、よく平気ね」

「まあ、なんとか」

「車で酔う人間の台詞とは思えないわ」

「ここまで来ると逆に平気です」

「ああああ―――倍ぐらいの速度になってね!?マッハ2ぐらいじゃね!?」

「実際はもっと速いですけど――ああ、あれじゃないですか?」

「全く視えないわ」

「嵐、前に竜が見える?」

「視える。あと鉄の鳥みたいなのも」

「空軍、もう追いついてるのね」

「嵐、5kmの距離に着けて同じスピードを保ってくれる?」

「わかりました」


ぐんとスピードが下がり、立ち上がった明日香が矢を番える。


「一矢、外しませんので、準備をお願いします。それと、静音さん、少し力をお借りしますね――神弓一矢」


青い魔力を纏った一本の矢が、真っ直ぐに緑色の龍の方へと走り、命中した。

背の肉ごと生えた両翼を消し飛ばされた速度を落とさず真っ直ぐそのまま、海へと落ちていく。


「ありがとう、こっちは任せて」


そういうと静音が迷うことなく海に飛び込む。


「さて、洋さん。飛行機の方はどうしましょうか」

「とりあえず、明日香ちゃんは逃げる方向で。竜が見られてると面倒なことになるし」

「それについてはもう遅いと思いますが」

「とりあえず、帰りのこともあるからどこかで待機しててほしいけど、静音ちゃんの邪魔させるわけにはいかないからこっちはしっかりやっとくよ、っと」


龍の手の中から抜け出した洋が、空中に身を躍らせる。


「ええ!?」

「エアステップ!」


何もない空中を足場に跳ね上がる洋はそのまま、眼前の鉄の鳥の方へと跳ねていく。


「よし、次、風神の鎧、とマグネットフィールド――それに “華麗羨望”だな」


洋の身体から奏と同じように黒いオーラが吹き上がる。


「まあ、“穢れ”とやらはオレにはないみたいだしいけるだろ」


前方から接近してくる戦闘機に飛び乗ると、磁力の力で張り付く。

そして、剣でその機体を簡単に切り裂くと、次へと飛び移った。


「“羨望の対象が強ければ強いほど効果上昇”って話だが、対象を奏ちゃんにするこんなにも恐ろしい火力が出るか……こりゃ余裕かもな」


また一機爆発炎上し、次のターゲットへと移る。


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