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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第2章 地を裂く、碧き爪
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#02-08 目指すべき数字




奏達によって、龍が討伐された直後。遥人は資料をもって、都内の某所、この国の首相たちの座る会議室へと足を運んでいた。

鈴音は現在外出中のため、付添は耀史のみである。


「それで、自衛隊の者たちはどうでしたかな?十分に訓練されているエリートたちを送りましたが。彼らならば、君に指揮権を完全に委譲せずとも充分に戦えるのではないかな?」

「いえ、約束通り、この件に関しての権限の委譲はして頂きます。それと、国として“異世界”に対する不干渉も約束してもらいます」

「ふざけたことを!言わせておけば、調子に乗――「耀史」

「ああ、うん」


耀史が空間に自衛隊の今回の作戦に参加した者たちのデータを展開していく。


「ここに挙げた10人。そして、こっちのが今回確認されている中で一番弱い魔物である“ホブゴブリン”のデータです」


比較された10と1のデータの数値の差はわずかに10人側の方が大きい。


「特殊な訓練を積まずにこれだと十分ではないかな?」


防衛大臣と書かれた名札の置かれた席に座る老人が続けて口を開く。


「不十分ですね」

「何を!?」

「この10人は全体の中でもトップの10人です。そして、この魔物のデータは平均値です。それだけではなく、この魔物は数十から数百単位で発生するもの、今日の戦闘成績を見る以上とても使えるとはいえません。まあ、拠点防衛ぐらいには着けるでしょうけど」


遥人がそう断言すると、耀史が招待ごとの成績評価を提示する。

そこに掛かれている評価はDやEばかりで、到底いい成績とは言えない。さらにダメ押しするかのように、無様に奇襲を受け壊滅する部隊の映像などが流される。



「まあ、これはわかりきってたことなので。期待はしてなかったですよ。とりあえず、装備品はそのままでも構いませんが、使えないことが分かった以上、それなりの代金は頂きます」

「いくらだ」

「一台につき30万ドル」

「ふざけるな!」

「では売りません。耀史、すぐにすべて回収するように連絡を」

「わかりました」

「な!?君には、愛国心という物はないのか!?」

「もっと安くしてえもかまいませんが、我々は既にこの値段で、米国と中国との商談を終えています」

『!?』

「それと、もう一つ」


耀史が映像を切り替える。

奏達が龍と戦闘している光景である。


「先ほど討伐した、ドラゴン型の魔物ですが、現代兵器ではかすり傷も与えられないほどの強度でした。現代兵器でこれを倒すとなると、核ミサイルを数発撃ちこまないとダメでしょうね」

「まあ、核ミサイル撃ちこんでみすぐ再生するんで時間稼ぎにしかならないでしょうけど……」


耀史による補足で全員の眉間に皺がよる。


「とりあえず、権限の委譲と不干渉の契約を結びますね。正直、著しく考える能力に劣る貴方たちに干渉されると非効率この上ないので。ああ、自衛隊はもう少し教育してから戻します。サービスです。それでは、松田首相。一言も発しないという事は、文句はないという判断でよろしいですね、サインをお願いします」

「……1ついいか」

「なんでしょう」

「先ほどの機械、24機発注させてくれ。訓練するのは上位24名のみとする」

「わかりました」

「首相!その予算はどこから出すのですか!?」

「外交費用を5億削れ。足りない分は君が持ちたまえ、岡村防衛大臣」

「何故です!?」

「君が国から横領している2億3000万円に利子がついただけだよ。そういう事だから手続きを頼むよ」

「承りました。耀史、どうなる?」

「大臣の保有する資産を最低価格で売りさばくとして……6、7億円ぐらいにはなりそうですね」

「足りそうだね。サインももらったし、帰ろうか。龍が出てきたってことは、探せばあと十何匹か見つかりそうだし」

「普通に飛んでその辺に散らばってる可能性もあるけど。しかし、岡村大臣も気の毒に」

「いや、横領の情報リークしたの耀史だろうに。散らばってるとすると……やっぱ、アメリカ空軍に仕事頼まないとダメかな……」

「流石の奏さんも飛行しながら戦闘できるほどではないよね?いや、龍に乗ればいけるのか?」

「龍なんて召喚したらまた面倒なことになるからやめてほしいけどね」





仕事を終え、清々しい気分で帰還した奏は、湯船につかりながら先ほど受け取った龍を倒した後の異世界の状況に関する調査報告資料を見ていた。


「ちょっと距離が遠くなった?……ってどういうこと?」


AとBと書かれた同じ大きさの円は、龍討伐前4割ほどが重なっていたが、龍討伐後ではその重なっている面積は少し減って35%ほどに見える。


「現在は、重なっている部分が多く、境界がかなり不安定なっており、またこのまま放置すれば双方の世界は崩壊する……」


AとBの円が5割重なった図には“世界崩壊”と書かれている。


「結構危なかったんだね。それで――“Dragon”という象徴的な大きな力の塊を排除することによって、こちら側の世界(A)からB世界側の要素が大きく削がれ、A世界側に引き寄せられる作用が弱まり離れていくことが判明。双方の世界が互いに不干渉となるために必要な距離は-30%以上と考えられる――ということは、あと13体龍を倒せばいいの?――ん?」


文の続きの内容に驚き、思わず二度見する奏。

持っていた電子端末を湯船に落としそうになったが何とか踏みとどまった。


「なお、世界の距離が25%~-25%程度であれば、条件を満たす者のみB世界側への移動ができる可能性がある……ってことは、あと二匹たおしたら向こう側に行けるってこと……?」

「お姉ちゃん!」

「うわ!?どうしたの音羽!?」

「いや、このメールに添付されてたファイル見て!」

「見てる見てる、今見てる!上がってから話聞くから、お風呂に乱入するのやめて!」

「だって、お姉ちゃん!もう一回あの世界に行けるかもしれないんだよ!」

「わかったから!一回出ていって!」

「女同士なんだからいいじゃん、別にー……あれ?お姉ちゃん、また胸大きくなった?」

「え?変わってないよ?……というか出ていってってば!」

「えー……じゃあ、私も入るから!」

「そんなに湯船広くないから」

「奏お姉ちゃんとはいったら髪洗ってくれるから楽なのに」

「音羽が今から入るとしても私もう出るよ?そろそろ30分ぐらい浸かってるし」

「紫苑とは入るくせにー」

「いや、紫苑ともお風呂はそんなに入ってナイヨ?」

「そんなに……?」


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