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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第2章 地を裂く、碧き爪
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#02-06 蹂躙開始<ユージュアリィ>


+*+*+


鈴音は、翔が投影している表示枠を眺めながら遥人との通信を行う。


『え?奏さんが単独行動?』

「いえ、単独というわけではないですが」

『困ったなぁ』

「実は困ってないですよね?だって――政府に事が露見する前に収集を付けられればかなり大きなアドバンテージになりますから」

『それは、敵の規模によりけり、かな』

『こちら、クーゲル1。目標発見。詳細解析は不可能ですが、外見上で判断するなら―――龍です』


*+*+*


人の身の限界をはるかに超える速度で移動する奏たちは、着実に目標地点――富士山の麓へと近づいていた。

やはり、パワースポットであるためか、地脈の活性も強く、その影響を大いに受ける魔物たちにも変異が訪れたようだ。


「そういえば、奏さん。左手、包帯巻いてますけど、あ、明日香も」

「これはちょっといろいろあってね」

「採血的なかんじだよ?」

「えっと、どういうこと?」

『こちら、フリューゲル2。目標地点到達、クーゲル隊との合流完了。これより解析を始めます』

「了解。クーゲル1~3は解析が終わるまで待機、クーゲル4、5は周辺住民の避難誘導を」

『わかりました』

「ごめんね、美星、谺さん。ちょっと、本気出すから、離れててほしいの」

『いえ、私レベルではあの戦闘には着いていけませんから』

『同じく』

『解析完了。鈴音さん経由でデータを共有します』


奏が走りながら、前方に表示させたデータを確認する。


「碧爪龍イヤド。スペックは天龍並みか……」

「属性は樹ですね」

「弱点は一応火だから、そっち方面で調整しておいて。私たちももう着くから」

『わかりました』


奏の掛けている風と時空魔法の効果によって極限まで高まった行軍速度は新幹線と比較しても劣らないほどには早く、目標地点までわずか数十分で到着する。


「遅くなったね。ごめん」

「十分早いですよ」

「直線距離で300kmぐらいありますよね?確か」

「海翔、気にするな。奏さんだぞ。それぐらいできる」

「なるほど」

「いや、そんな謎の納得されても――美咲も頷かないの!」

『奏さん、どうやら到着なされたようですが。どうですか』

「思ったよりすごいですね。明日香視点で見えてますよね」

『はい。これは、厄介そうですね』

「――全員、構えて。属性は火で統一、翼・美咲を先頭に次が私と紫苑。翼と美咲は敵の防御崩して離脱、海翔と萌愛はその補助。私と紫苑も、一撃離脱で。攻撃まともに喰らうとさすがに死にそうだし」

「それがいいと思います。蘇生はできますけど」

「明日香と七海は遠距離で私たちが離脱して次の攻撃に入るまでよろしく」

「「わかりました!」」

「奏さん、見た感じ、星影よりは弱そうですけど」

「とりあえず、今言った感じでやってみて、その後は総攻撃かな。油断はしない方がいい」

「わかりました」


+*+*+


奏の号令で一斉に、隊員たちの目の色が変わるのを自衛隊、そして新隊の面々は見ていた。


「さすがだなぁ」

「なんやかんやであの部隊が一番戦闘回数多いですよね。練度も異常に高いし」

「全員が隊長級に強かったからねぇ。翼とはよく手合わせしてたけど、勝率的にはギリギリ6割オレが勝ってるという状況かな」


全員が食い入るように、無言で映像を見つめている。

最初に突っ込んだ翼と美咲が恐ろしく息の合ったコンビネーションで碧龍の攻撃を受け止め、跳ね上げる。予定外の展開に、大きく体勢を崩したものの、ブレスで応戦しようとする竜の顎を、萌愛が蹴り飛ばし、その鼻面に海翔が刃を打ち下ろす。

奏と紫苑の高速の居合はばっちりと決まり、片目、片腕、そして前面をずたずたに切り裂いた。


「なんつー威力」

『あれ、こんなに威力でたっけ?』

『奏さん、ステータスあがってますし、武器の性能も上がってますから』

『あ、そっか、あまりにも手になじむから忘れてた』


奏の手に握られていたのは今までの物よりも少し長い太刀。

一振りのみだが、腰には少し短めの刀が差されている。


一方、紫苑の持つ者は、かなりシンプルな形の太刀だが、敵からの攻撃を弾く際に一瞬、大きな刃を持った大鎌へと変形したような気がした。


「おーい、質問いいですか?」

『どうしましたか?』

「武器一振してるみたいだから詳細聞きたいなって」

『私の武器は千変万器です。特殊な武器で、好きな武器の形に変形することができます』

「それが名前?」

『いえ、名前は、華を撫でると書いて“華撫”です』

「うわぁお」

『ちなみに、この強力な武器を作るのに、高純度の魔力物質“奏さんの血”を使っています』

「うわぁ……――病んでるなぁ」

『何か文句がおありですか?』

「ないない。奏さんのは?」

『長い方が“枝音”、短い方が“朱鳥”です』

「えっと、それは……」

『はい。私たちの血をそれぞれ使っています』

『紫苑、思ったより回復速いから焼き尽くすよ』

『わかりました』


*+*+*


『奏さん、山火事はやめてね?』

「なんだ遥人さん、見てたんですか」

『そりゃ、ね……』

「全員、火エンチャント。七海、いける?」

「詠唱速度上昇切って、コスト下げるので時間かかりますけど、いけます」

「七海の詠唱が終わるまでに3割以下にしよう」


奏の宣言と共に、準備を終えた海翔と萌愛が、敵の攻撃をスルスルよけながら、一見獣のようにも見える、鋼よりも硬い鱗に覆われた蜥蜴の腹へ強烈な一撃を決めた。


「いい感じだね」

「行くぞ、美咲」

「うん!」


苦しみながら半ばヤケクソの攻撃を仕掛けてくる竜の爪を翼は剣で弾き、その方を足場にして飛び上がった美咲が傷ついていて、なおかつ治りの遅い左目へと突き刺した。


「あらら、紫苑。これ、私たちいらないんじゃない?」

「そうですね」


そういうと、太刀を鞘に収める2人。


「でも、まあ、お手伝いはするよ?」


奏と紫苑の手によって各20枚近くの符がばら撒かれると、真っ直ぐかなり戦意を失っている竜の元へと飛んでいき、その体に張り付いた。


そして、しばらくすると、その紙に書かれた文字が濃いオレンジ色に輝き始める。


“火炎”


そうとだけ書いてあったが、魔術符とはもともと、“魔力で意味を込めた”ものなので、魔法陣を書いても発動するが、シンプルに事象を表す文字を書いても発動することができる。

橙の業火で焼かれるも、のた打ち回り炎を消そうとする碧龍。

そこへ、無慈悲にも七海の魔法が叩き込まれる。もう少し粘るかとも思ったが、案外あっけないものでそこで龍の活動はなくなった。


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