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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第2章 地を裂く、碧き爪
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#02-02 私からの挑戦状

大発生から数日後、例の部隊の大規模な人数の拡充が行われることが発表され、一部界隈が盛り上がっていたところに、奏は遥人からメールを貰った。


内容は、『1から育てるより、ある程度ゲームデータが育っている人の方が使いやすいので中に入って見つけてきて』という無茶苦茶なものだった。

1人で行くのはつまらなかったので、とりあえず紫苑と漸苑、姉と妹を誘い一斉にVRの世界にダイブする。

久々の感覚と共に、目を開くと、そこは見覚えのあるものの、何かが違う場所。


「ふふ、ゲームの方は久しぶりだなぁ」

「そうですね」


自分の寝転んでいたベッドの上から起き上がり、装備を確認する。

自警団の制服を装備し――


「あれ?紫苑の声がしたような……」

「いますよ、ここに」


背後から抱き着く紫苑。


「なんで私の部屋からスタートなのに紫苑もいるの?」

「わかりませんけど」

「まあ、いっか」

「ですね――ところで、奏さん。髪の色とか変わってますよ」

「え!?」


慌てて鏡を覗き込む。

奏の髪の色は一部紫のメッシュの入ったプラチナブロンドに、瞳の色は暗い赤と変わっていなかった。

紫苑の方は銀の髪に、サファイアと奏と同じ色のオッドアイ。


「変じゃない?」

「大丈夫です。紫もワンポイントですしあまり目立ちません。いつも通り綺麗です」

「ありがと、紫苑も綺麗――っと、キャラクター名変わってるんだった。外だと気を付けないとね」


奏達のステータスは高すぎるため、このゲームの中では普通のキャラクターとしては存在できない。

よって、普段は名前と役割を持ったNPCとして置かれている。

なお、役職は自警団の隊長となっているので、スペーラの中で不届きな行為をしたプレイヤーを斬り捨てることもできる。


『奏、どこにでたの?私詰所なんだけど』

「姉さん?あ、私自分の部屋だよ。紫苑――“ルリア”も一緒。」

『ああ、名前気を付けないとダメね。適当に奏っぽい名前にフレンドコールしたんだけどあっててよかったわ』

「私の名前“アリア”なんだけど、何で私っぽいと思ったの?」

『言わないで置くわ。なんで、紫苑は漸苑じゃなくて奏の方に名前引っ張られてるのか謎だけど』

「なんでだろうね?」

「遥人さんが気を利かせてくれたのでは?」

「とりあえず、姉さん。そっち行くから待ってて――さ、いこっか」

「はい」


建物から出るのは一瞬で、多くのプレイヤーが前を行きかっている。

皆、こちらを向いて驚いた表情を見せるのはこのキャラクターがどんなものか知っているからだろう。


「ふふ、今PCだって知ったらどんな顔するかなぁ」

「かな――じゃなかった。アリアさん、まだネタばらししてはダメですよ」

「だね。じゃあ、とりあえず―――あれ?なんでルリアはデフォでパーティに入ってるの?別にいいけど」

「愛の力ですかね」

「なるほどねー」


紫苑と腕を組んで、街歩く。どこか懐かしいが、やはり何か違う。

あと、プレイヤーたちの中から謎の歓声が聞こえる。


「案外寄ってこないね?」

「なんでも痴漢しようとしたら、速攻でキルモードになる様に設定してあるらしいですよ、私たちのキャラ」

「鈴音さんの設定だね。その方がいいけど……」

「ちなみにアリアとルリアは公式カップルだそうです」

「女同士なのに公式化しちゃったんだ……まあ、構わないけど」

「あ、おねーちゃん。お姉ちゃんも外からスタート?」

「いや、私としお――ルリアは私の部屋から。おと――“テクラ”はどこから?」

「え?普通にエルフの森だったけど」

「まさかのマップ外」

「姉さんはどこに行ったんでしょう」

「ルリア、私はここにいるよ」

「あ、姉さん。どこにいたんですか?」

「港に。あ、なぜか私6番隊隊長に昇格してたんだけど」

「“ゼナイド”ってなんかかっこいい名前ですね」

「そうかな?とりあえず、シズ――じゃなくて、何て名前?」

「えと、確か“ティアナ”です」

「ティアナの所にいこう――というか自警団にいるんだろ?ここに溜まってるってことは」

「そうみたいですね。連絡ありましたし」

「まあ、お姉ちゃんはすぐわかったよ」

「だから何故?」


唐突に始まったNPCの集会に何事かとプレイヤーたちが集まり始めているので急いで中へ入る。この、自警団詰所は基本的にプレイヤーは入ることができないエリアだ。

人のいない廊下を歩いて1番の部屋に入ると静音がスペンサー(燕真のキャラクター)をいじって遊んでいた。


「……なにしてるの?」

「うーん……やっぱり、反応少ないと面白くないわね」

「そういう問題なの?」

「というか、燕真ってそんな大げさなリアクション取らないでしょ?」

「そうでもないわよ、音羽」

「音羽じゃなくて今は“テクラ”!」

「ごめん、外では気を付けるわ……というか、うちの姉妹全員プラチナブロンド+属性色メッシュになってるのね」

「確実に女神だとばれてると思うんだけど……」


音羽が自分の髪のオレンジの部分を摘まみながら言う。


「それで、何するんだっけ?」

「ゲリラクエストを開いて、見込みのあるプレイヤーを数人拾う」

「どうやって開くの?」

「GM権限与えられてるはずよ。私はマーレ、ゼオ――じゃなくて、“ゼナイド”はプリマ、テクラはグロリアね」

「私とルリアは?」

「ここ」

「えー……ここが一番人多いでしょ?」

「だから二人でやるんでしょうが」

「そのマップが選ばれた理由は?」

「アクティブなプレイヤーの数かな」

「一応全部実装されてるみたいだけど、あんまり進んでないんだねぇ……」

「私たちトップ人がごそっと抜けたせいもあるけど、そもそも実装されてからそんなに時間経ってないし」

「何時からにする?」

「じゃあ、きっかり14時……あと5分ね」

「「「「了解」」」」


静音たちが転移門の方へと向かうのを見送ってから、奏達も移動する。

場所はギルドの真正面。


「さて、どうするかな」

「範囲はどれぐらいにしますか?」

「街全域」

「強気ですね」

「ルリアが一緒だから負けはないよ」

「うふふ、そうですね」


1分前、武装を行う。

それに気づいたプレイヤーたちがざわめき始める。

懐かしい刀二振りの重さに感動しながら、奏が表示枠を操作する。


◇――――――――――――――◇

ゲリラクエスト:アリアとルリアの挑戦状

目標:アリアもしくはルリアの打倒

期限:14:00から20分間

報酬:妖星の首飾り(SS+)

※このクエストは“スペーラ”のプレイヤー全てが強制的に参加対象となります。

※このクエストによる死亡は死亡回数にカウントされず、ペナルティも発生しません。

※このクエスト中は非戦闘領域での戦闘行為が許可されますが、他のプレイヤーへの攻撃や窃盗などは通常通りの処罰が下されます。

※このクエストをキャンセルすることはできません。また、このクエストが終了するまで以下の行動が制限されます。

・各店舗での購入/売却

・街の外への離脱

・転移門の使用

・建物内への移動

◇――――――――――――――◇


ふわりと飛び上がると、ギルドの屋根の上へ。


「ふふ、じゃあ、みんな、私たちとあそぼっか」


誰もが見惚れるような笑みを浮かべて奏が開始のボタンをタップする。


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