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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
序章 変わらない、いつもの世界
3/65

#00-03 宴の始まり

コーヒーを飲みつつ、男三人でグダグダと話していると誰かが戸を叩く音がした。


「どうぞ」

「失礼します」


顔を出したのは瑛大にとっては初見の男。しかし、遥人と耀史は知っているようで。


「コガネのお爺様が到着されたようなのでそろそろ始めると……あれ、そちらの方は?」

「え?ああ、錐也は知らないかな。D-Lupusって会社の社長なんだけど」

「その会社なら知ってますよ。最近急成長してる会社でしょう?うちのデジタル事業部が負けそうとかで真剣に買収を考えてるって父が言ってましたよ」

「そうなんだ……まあ、それはいいとして」

「よくねーよ」

「で、これがその社長の岸谷瑛大。こっちは、白銀財閥の御曹司で白銀錐也」

「岸谷です、まあ宜しく」

「こちらこそ、」


互いに名刺を交換する。


「白銀って言うと、鈴音の姉弟か?」

「うん、一つ下の弟だね」

「もう今日だけでよくわからないコネクションがたくさんできすぎて混乱しそうだ」

「1つ確認いいですか?」


頭をかく瑛大に錐也が尋ねる。


「D-Lupusは岸ヶ谷組と繋がっているという噂なんですが」

「あー……それな、業務とか金銭で繋がってはないんだけど、オレがな」

「瑛大は岸ヶ谷組の今の組長の長男だからね……」

「やっぱり知ってやがったか。まあ、いい。このことはできるだけオフレコで頼む」

「わかりました」

「耀史、お前もな」

「何故オレだけ釘を刺す」

「お前はなんか酔った拍子にぽろっと言いそうだから」

「否定はできないけど努力する」

「否定しろよ」

「何を遊んでいるんですか。急いでください」


錐也の後ろから聞き覚えのある声で叱責が飛んでくる。


「鈴音か」

「こんばんは。瑛大さんはそれよりも彼女の方に」

「エスコートだな」

「はい、それでは行きますよ、遥人さん」

「え、ああ、うん。耀史は零さんと霰さんをよろしくね」

「わかった」


先に会場に向かう遥人と鈴音、錐也を見送ってから瑛大は耀史と共に零の部屋の戸を叩く。


「岸谷だ」

「今開けるわね」


すぐに零が扉を開く。

ドレスを着せられ居心地悪そうにしていた彩子は瑛大を見ると一瞬安心した顔になる。


「おいおい、似合ってるけど、彩子さん秘書なんだぞ」

「いいじゃないですか、お似合いですよ」

「零さん、それと妹さんもそろそろ向かいましょうか」

「そうね。霰、準備は終わった?」

「大丈夫よ、零姉」


カーテンの向こうから何度かテレビで見たことのある顔が現れる。

現役女子大生モデルとして人気の古屋敷霰(こやしき あられ)。あまりない名字だがまさか血縁だったとは。


「彩子ちゃんのメイクは霰に任せたのだけど、よかったかしら?」

「ああ、完璧だ」

「え?あの社長……」

「さて、行くぞ。耀史はどっちをエスコートするんだ?」

「さあ?難しいところだね……まあ、錐也君にこればっかりは任せるわけにもいかないから」


緊張でがちがちの彩子を連れて、耀史たちの後を追う。


「もう少しリラックスしたらどうだ?」

「あのですね、いきなりこんなところに連れてこられてリラックスとかできると思いますか?」

「無理だな」

「じゃあ無理を言わないでください!」


小声で文句を言いながらもこちらの腕をしっかりと掴み離さない。


「そもそもどうやってコガネグループの御曹司なんかと知り合いになったんですか?」

「まあ、色々あってな」

「だからそのいろいろの部分を知りたいんですけど!?」

「追々話していくけど、もう会場はいるぞ」


そういった瞬間に再び緊張で凍りつく彩子。

それを前で聞きながら笑っている耀史には後で蹴りを入れるとして、


「さすがの規模だな……お客さんも大物ばっかりだ」

「そうです、ね。もう気絶してもいいですか?」

「まて、オレが先だ」

「遊んでないで行くよ、瑛大」

「とはいってもどこにいればいいんだ?」

「あの右寄りで話してる政界の大物の所に突っ込んで来れば?」

「無理だ」

「だよね。じゃあ、こっち、端の方でしばらく立ってればいいよ」

「私もそうしようかしら」

「じゃあ私は耀史さんについてこうかな」

「僕は一度、黄金栄牙(かいちょう)さんの所に挨拶に行かないといけないから」

「おう、行って来い。流石にオレみたいな木端社長じゃ相手にされんだろうしな」

「どうだろう……呼ばれたってことはどこかで注目されてるんじゃないかな」

「まあ、少し人が空いてから、社長んとこには挨拶にはいかせてもらうよ」

「それがいいね。じゃあ、えっと霰さん?行こうか?」

「うん。少しでも顔売っとかないとね」


耀史と霰が中々にいい雰囲気で人の多い方へと歩いていくのを見ながら、瑛大と零、それに彩子は適当に飲み物を貰い壁際へと移動した。


「しかし、年越しのパーティー行った会社も結構でかい会社だったけど、戦前からずっと大財閥のコガネにはかなわないか」

「案外まともに営業してるのね」

「まあな。零は今日いきなり遥人から連絡貰ったのか?」

「コガネグループ自体からの申し入れは何度かあったし、実際2度ほど仕事させてもらってるけど、遥人から直接連絡貰ったのは今日が初めて、というかついさっきね」

「全部終わって一時間で呼び出すとかホントに勘弁してほしいな。まだちょっと混乱してるのに」

「ほんとにね」

「あの、私ここにいて良いんでしょうか?」

「ああ、気にすんな。世間話だ。それより、酒飲まないのか?」

「社長こそ」

「いや、今日は車乗って帰るし、お前も送らないと」

「遥人に言って運転手用意させたら?」

「いや、服用意させたしそこまで頼るのはな……ああ、オレの服と彩子のドレスありがとうな」

「気にしなくていいわ。どっちも家にあった試作品だし」

「よりにもよって未発表作かよ」

「せっかくだからプレゼントするわ。そのまま着て帰っていいわよ?」

「ええ!?」

「この格好のまま家に送ってやろうか?」

「それは、ちょっと……というか私が実家から通ってるって知ってますよね?」

「そんなことしたら、娘さんをくださいって言いに行っているようなもんじゃないかな?」

「たとえそうなったとしても、彩子さんの反応が見たいからやってもいいと思う」

「やめてくださいよ!」


じゃれついてくる彩子をいなしながら、瑛大はもう一度招待客たちの顔を見る。

ここでコネクションを作っておけば今後の活動にかなりプラスになるだろう。しかし、黄金遥人の一派に引き入れられてしまった可能性があるため、下手な交流を持つと遥人にとってプラスとはならない可能性があることも考えられる。


「どうしたもんだか」

「まあ、適当に声かけて回ってきなよ」

「そうはいってもお前、遥人が仲悪いとこと仲良くなるのもどうかなと思うし」

「まあ、人と交流を持つのは瑛大の方が得意だと思うから好きにしてくれていいけど」

「んー……って、お前いつの間に?」


いつの間にか隣に立っていた遥人に驚く。


「いや、挨拶一通り終わったから呼びに来たんだけど、父さんの所行くだろ?」

「あ、ああ……じゃあ頼む」

「すぐに向かわないと、鈴音に黙ってきたから下手したら殺される」

「落ち着け。ここはあの街じゃないから。法治国家日本だから」

「いや、でもね。なんか向こう行ってから加減がおかしくなったというか」

「まだ2時間ぐらいしかたってないんだぞ、何やってんだお前」

「何もしてないよ?ああ、それより急がないと」

「まあ、いい。いくぞ、彩子」

「わ、私も行くんですか!?」

「隣にいるだけでいいから」


そう言って手を引いて遥人の後に続く。

ちょうど人が切れたところに遥人が声をかけ、瑛大と自らの父――黄金栄人を引き合わせる。


「父さん、こちら、株式会社D-Lupusの岸谷瑛大社長と秘書の香取さん」

「初めまして、岸谷です」

「ああ、君の会社の事は知っているよ。白銀の製品よりも性能がいいとかで」

「そんなことはないかと思いますが」

「まあ、ほどほどにな。既に白銀からは眼をつけられているだろうが」

「まあ、その辺は僕の方でも何とかするけど」

「え、いやそこまで気を使ってもらわなくてもいいんだが」

「しかし、遥人。なかなか面白い駒を集めたな」

「個人の力も必要だけど、人って言うのはやっぱり力になるからね」

「瑛大さんは人を乗せるのが上手い人ですから、お爺様に立ち向かうのにかなり良い戦力になるかと」

「鈴音君とも知り合いか……ゲームソフト製作会社を買い取って何かしているのは知っていたが、その関係での知り合いか?」

「まあ、そんなところです。瑛大にはいろいろ手伝ってもらうことになりそうなので一応父さんに紹介しておこうかと」

「なるほど、まあ、何をするつもりかは知らないが頑張りなさい」


そういうと遥人の父は次の人垣の所へ向かって行った。


「ま、そういう事で、適当にコネクション作りにいこっか。鈴音、香取さんをお願いできるかな?」

「お前、自分でやるのが面倒だからオレに押し付けようって魂胆か?」

「気のせいだよ。さ、行くよ」


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