#01-09 首都奔流<スタンピード>
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「こちら、フリューゲル1。みんな配置についた?こちらはシュテフト3――ロブさんと決めた位置まで移動完了」
『フリューゲル4、明日香です。配置完了』
『フリューゲル2、配置完了』
『フリューゲル3です。敵と交戦開始……数が、多いっ!』
「急いで聖域化します、カウント5、4、3、2、1!」
青白い光が街を覆う。
これで魔物はこの中から出れず、この中に入れない状態となった。もっとも一時しのぎでしかないのだが。
「これでひとまず増えはしなくなったかな?」
『―――こちら、鈴音です。状況報告お願いできますか?』
「現在、オーガ、ガーゴイルなど体力多め、攻撃高めの魔物推定8000体と交戦中です。メンバーは―――っと」
「奏大丈夫か?」
「ありがと、ロブさん」
背後から奏に錆びた大刀を振り下ろそうとしていたオーガをロブが素手で粉砕する。
『大丈夫ですか?』
「問題ありません。メンバーはシュテフト隊3名、フリューゲル隊、クーゲル隊3名です」
『わかりました。こちらが片付き次第救援を送りますので――シルト4!道を拓いて交戦地区Bへ移動!』
『は!?オレだけなんでそんな無茶苦茶を!?』
『良いから早く行け』
応援が来るまでぐらいならばもたせることは容易いだろう。
聖域内の魔物もほとんど片付いている。
「奏、前だ!」
「――りゃあ!」
ロブの声で詰め寄られていたことに気づき、掌底でガーゴイルを破壊する。
「おお……我ながらこれはすごい――あれ?」
『……奏さん、そっちに魔物の大群が行ってますけど――推定1500ほど』
「これは……やばいかな」
『私、近いので向かいます!』
萌愛がこちらに駆けつけるほんの数秒の間に、ロブと共に素手のみで数体のオーガを葬る。
萌愛はやってきて早々、目の前にいた十数匹のゴブリンを瞬殺する。
「奏さん、今気付いたんですけど、MP回復してますよ!?」
『うそ……ほんとだ!?』
『女神系の称号を持ってるから聖域から供給が来るようです』
『魔法使えますね!』
「いや、街壊れるから魔法はできるだけ使わないでね?特に火とか雷とかは洒落にならないから」
「加速と魔力刃に全振りですかね」
そう言いながら、敵の数を削いでいく萌愛だったが、数が数なだけに一向に減る様子もなく、聖域の際まで押されている。
「援護を――虚無の短剣」
奏の放った透明の魔力でできた短剣が、一撃で魔物を仕留めていく。
しかし、まだ多くの魔物たちがこちらへと押し寄せている。
「奏さん、今のもう一度できますか!?」
「うーん……魔力の充填が遅いから2分ぐらいかかるかなぁ」
「クゲールはまだこっちに来れない!?」
『悪い、まだ行けそうにない!』
『奏さん!こちらからそちらに800ほど移動しました!』
『こっちからも500ほど移動しました!』
『アイテムボックスの中にあったはずのポーションとか使えれば……』
「今使えるのは魔力を消費しない体術系と、神格スキルか……一か八か試してみるかな」
奏が目を閉じ、集中する。
奏の足元に魔法陣が出現し、それと同じものが萌愛の足元にも表れる。
「なんですかこれ?」
「“無限の神の名に置いて命ずる。その身、我が剣として、万象一切を断ち切り、我が眼前に道を拓け”――“神授――剣”」
『何をしたんですか!?』
「萌愛を神の使いに昇格させて、私の能力を一部使えるようにした――のかな?」
『……わからないでやったんですか?』
「思い浮かんだこと試したらできた、的な感じかな」
『それで、萌愛。何が変わったの?』
美咲の声に応じて、ステータスを見ていた萌愛が答える。
「ほんの少しだけステタースが上がってますね。奏さんのステータスの0.1%が加算されるようです」
『すくなっ……』
「それと“神儀典装”っていう謎のスキルを取得してますね……使ってみますか?」
「萌愛、前!」
「“我と共に踊れ、無限の刃よ”」
呪文を唱えた途端、萌愛の身体が白い炎によって覆われる。
周囲にいた魔物は巻き込まれて消滅していくが、萌愛自体は特に問題はないようだった。
「“神儀典装――無限刀・無垢”」
萌愛の体を覆っていた炎が弾けると同時に、萌愛の手の中に白い短刀が出現する。
先ほど奏がつかった魔法にも似ているが、異なるのは、それに実体があるという事。
萌愛はそのうちの一つを手に取ると、手ごろなオーガに向けて投擲した。
サクっと額に命中し、オーガ絶命する。
しかし、オーガの身体は魔力の光として空にほどけることはなく、魔力が収束され、数十本の白い短刀となり地面に落ちた。
「――使い捨てのようですけど、どうやら倒した相手の魔力を吸い上げて増えるようです」
「うわぁ……」
「でもこれ尋常じゃないぐらい魔力を持っていきますよ……正直あと30秒ぐらいしか維持できません―――なので」
萌愛は、オーガが消滅したポイントへと飛び込むと、短刀を可能な限り拾い投擲、次の短刀が現れれば、それをが地面に着く前にキャッチし、一撃で近くの敵を仕留める。
そうして次々増えていく白い刃をばらまきながら30秒。
技が解けると同時に萌愛の周囲は、崩れていく白い光に包まれる。
斃した魔物は800越え。
「萌愛、下がって!」
「すいません、はしゃぎすぎました!」
「こっちこそ、実験的に試してごめんね――でも、魔力さえあれば相当な戦力になることが分かった」
「萌愛のおかげでかなり減ったが、まだ2000近くいる。どうする?」
「ここは私が魔法で――――蒼天刺雨、一掃します」
五月の青空から降り注ぐ槍の雨。
その威力は、硬さに定評のあるガーゴイルを一撃で仕留める程度。
可能な限り街を傷つけないようにコントロールはしているが、地面は大きく削られている。
もっとも、オーガたちが暴れているせいで元よりアスファルトは粉々だったりするので、怒られはしないだろう。
「これで残り500ぐらい?」
「そうみたいですね……ああ、魔力切れで気持ち悪い」
「回復するまで二人は下がっていろ。その間にオレが少し間引いておく」
「お願いね、ロブさん」
「はっはー、奏ちゃんのピンチを助けるなんておいしい役、ロブなんぞに任せてられるかよ!」
「「?」」
何やら叫びながらこちらに向かってくる剣士がいる。
着実に数を減らしながら、聖域の前までやってくると、聖域に阻まれて止まった。
「え?なんで通れないの?」
「邪な感情を察知されたんだろ――久しぶりだな、洋」
「おう!シルト4、柴田洋。救援に来たぜ!ま、さくっと片付けるから待ってな」
そういうと再び、戦闘を再開する。
どうやら聖域に阻まれた件は既に忘れたようだ。
『うわ、洋さんがまともなこと言ってる』
「るせぇよ。あ、翼、テメェ後で覚えてろよ」
『あ、情報周ってる』
『面倒な』
「よっしゃ!いいとこ見せるぜっ!」
異様なまでに気合の入った洋によって残りの敵は全て片付けられたが、やはり自分一人が動ければ楽に片付いたはずの事なのでカナデ的には少々不満の残る終結であった。
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響 奏
Lv.11 → Lv.81
獲得称号
『多対一』 HP +10%/物耐 +20%
『守護者』 物耐+10%/魔耐+10%
『鬼殺し』 物攻 +5%
『裁きの雨』 魔攻 +5%
『超成長』 SP +3%
『閃く者』 SP +25%
『使徒使役・剣』 物攻 +5%/魔攻 +5%
『神格V』 ALL+4%/運+50%
『生存術』 HP+45%
獲得スキル
《SS》“神格”
《A》“覚悟”
《A》“呪歌”
《B》“応急手当”
《SS》“法理魔法”
《A》“魔障壁”
《S》“真眼”
強化スキル
《SS》“神格”(1/999→999/999)
《5S+》“神格V”(1/999→999/999)
《A》“覚悟”(1/100→100/100)
《A》“呪歌”(1/100→100/100)
《S》“狂歌”(1/250→250/250)
《5S》“鬼姫繚乱”(1/999→999/999)
《B》“応急手当”(1/100→100/100)
《SS》“法理魔法”(1/500→500/500)
《5S》“魔導師・修”(1/999→999/999)
《A》“魔障壁”(1/100→100/100)
《5S》“生存術”(1/999→999/999)
《S》“真眼”(1/250→250/250)
複合・昇華スキル
“神格IV”+“神格”→“神格V”
“呪歌”⇒“狂歌”
“鬼力招来”+“剣舞”+“狂歌”→“鬼姫繚乱”
“魔導師”+“法理魔法”→“魔導師・修”
“近接防御”+“応急手当”+“覚悟”+“魔障壁”→“生存術”
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