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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第1章 世界と、世界
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#01-05 予定外の戦力


音羽達をいったん放置して、奏は尋を連れて自分の家へと帰宅した。


「ただいまー……って誰も帰ってないか」

「おじゃましまーす……」

「なんか適当にお茶入れて来るから、私の部屋で待ってて」

「はーい」


階段をのぼってカナデの部屋へ向かう尋。何度か来ているので部屋はわかるだろう。というか、ネームプレートがかかっている。


「お茶、あったよね?」


最近何かと来客が多いので買い足していたはずだ。

適当な紅茶と、冷蔵庫に余っていた昨日焼いたケーキを持って上へ上がる。


「ごめん、昨日焼いたやつだけど」

「わ、ケーキだ!いいのに、別に」

「気にしないで、私が食べたいだけだから」


テーブルの上にティートレイを置くと、制服の上着を脱いで掛ける。

ブレザーを着ているとあまりわからないが、薄着になるとかなり主張する大きめの胸や細い腰が際立つ。


「相変わらず、いい身体だよねー」

「なんか親父臭いよ、それ」

「だって、奏。よく食べる割には全然余分な肉ついてないし」

「ちょ、っと、触らないで、くすぐったいから!」


腰を触ろうと手を伸ばす尋からするりと逃れると、ポットの紅茶をカップに注ぐ。


「別にいいじゃん、減るもんじゃないし……」

「尋に触られると何故かくすぐったくて笑っちゃうの」

「ほんとなんでなの?他の子なら問題ないのに」

「……なんか変なことしてる?」

「あらぬ疑いをかけられた!?」


お互いにノートを開きつつも、尋の興味は先ほどの事にあるようで、いまいち集中しきれていない。


「ねえ、さっきのことなんだけど」

「えっと、別に口止めはされてないから大体の事なら話せるけど、何が聴きたいの?」

「いや、ニュースとかで見たから何となく概要はわかってるんだけど、なんで奏たちがあれと戦ってるの?奏たち、というかあの扇子さんとか左藤君とか」

「んー……ちょっと、知り合いに頼まれて」

「知り合いって先週学校に来てた人?」

「そうそう。ほんとは私も手伝いたいんだけど、少し力が強す……まあ、事情があって」

「いや、ごまかしきれてないよ?」


奏が目を逸らしながら茶を啜る。


「でも、私の札とか弓とかなんで効いたんだろう……なんか現代兵器はイマイチ効かないみたいなこと言ってたけど」

「その後で報告して調べてもらおうか?」

「調べた結果、使えることがわかったら女陰陽師・橋上尋の誕生だね」

「巫女じゃなかったの?」

「ニーズ的には巫女かな?」

「まあ、どっちでもいいんじゃない?でも、攻撃が効くからってそのまま突っ込むのはやめてね。死ぬよ」

「え゛、あれそんなにヤバいの?」

「今日のアレなら前足で叩かれたら一発で骨なり内臓なりもってかれるし、そもそも感電して心臓止まるかも」

「そんなヤバかったんだ……でも、それだったら後輩ズも危ないんじゃないの?一応、なんか制服みたいなの着てたけど」

「あの服は特殊な繊維で編んであるし、そもそもステータスを上乗せされてるから常人の何倍かは強いし……あれ、これ言っていいんだっけ」

「すてーたすをうわのせ?」

「あー……えっと。もういいや、ちょっと待ってて」


立ち上がった奏は机の棚からファイルを抜き取り、中から資料を出してくる。


「ほら、これ」

「ほえー……」


渡したのはあのインカムの説明書だが、奏自身は扱えないので全く読んでいない。


「ということはこのぐらでぃうすなんたらってゲームのステータスを自分の身体に反映させる?みたいな感じなのかな?」

「そんな感じなのかな?」

「じゃあ、私もこのゲームでデータ作ればとりあえず即死はなくなったり?」

「それはあるかもだけど、ゲームなんてしてる時間ある?」


尋の手元にある真っ白なノートを見てカナデが言う。


「……ナイデス」

「一応、尋の事はキクロさんに相談してみるけど」

「お願いね?私も陰陽術とか神道術とかの勉強を……」

「皇鍵大受かる?」

「……それと受験勉強もガンバリマス。うわーん、数学教えて!」

「とりあえずテキスト開こうか。あと課題も片づけちゃうよ」

「はい!先生!」


それからはいくらか集中してやったために勉強の方も進んだ。

尋も成績はいい方なので、勉強に取り組むモチベーションだけなんとかすれば集中は続く方だ。

2時間ほどたち、今日の課題をすべて片付けた奏がスマホの画面を確認すると、ちょうど着信が入った。表示されている名前は遥人のものだ。都合がいい。


「あ、ごめん。電話」

「いいよ、気にせず出て」

「一応廊下でるよ」


通話状態にする。


「奏です」

『ごめんね。急に。ちょっと聞きたいことがあったから』

「ああ、大丈夫ですよ。尋の事ですか?」

『そうそう、なんかお札で魔物倒した現代の陰陽師がいるって聞いたから。ちょっと気になってね』

「こちらの方でお札を調べさせてもらえるように交渉してみますね」

『ごめん、お願いね』

「それで、代わりと言ってはなんなんですが、K-デバイスと中のデータ、それと制服とかを尋の分も用意してもらうことできますか?」

『できるよ。データはそんなに強いのを用意できないけど、チームシャッテンが使ってるデータを少しいじって調整しておくよ』

「お願いします」

『ああ、それと。出力さげて鈴音でも使えるようになったのはいいんだけど、それだとやっぱり武器が出せないらしい』

「どうやって戦えと?」

『いや、ステータスあがってたら普通に強いからね。素手で殴れって言ってるんじゃないけど。ま、とにかくそれで何度かデータを取って調整すれば完全版はすぐできるよ』

「わかりました。それで、お札はどうすれば?」

『瑛大宛で会社に直接送っておいて。あ、着払いでいいから。じゃあ、また連絡するよ』


電話が切れたことを確認し、部屋に戻る。


「尋、お札ってまだ残ってる?送って欲しいって」

「まだ結構あるよ?何枚いる?」

「一枚でいいけど……」


そう言いつつ、机の中から封筒をだし、いつか貰った瑛大の名刺を探す。


「じゃ、ここに入れて。明日コンビニで出してくる」

「え?説明とか書かなくていいの?」

「大丈夫でしょ」


封筒を閉じて、忘れないように机の上に置く。


「んー……やっぱ奏が一緒だと捗るなー」

「気のせいよ」

「そうかな。あ、そろそろ帰るね、結構遅い時間だし」

「また来て」

「うん、また来る。じゃ、お邪魔しましたー」


尋を玄関まで送ると、1つ伸びをし、奏は夕飯の作成に取り掛かる。


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