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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第1章 世界と、世界
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#01-04 戦力不足〈ディスアドバンテージ〉



遥人達のとの邂逅から早1週間。

あれからまだ魔物たちには出会っていないが、遥人曰く、一度出現した場所には出やすくなってるらしいので油断はできない。

校内で用いれる戦力は萌愛と大郎の二人のみ。2人ともかなりの使い手なのは承知しているが、大群で来られた時に対応しきれない可能性が大きい。


また、このことは全国的なニュースになっていて、当然学校は大騒ぎだった。

学校側の対応としては、ことが収まるまで授業を止めるという案も上がったらしいが、いつ収まるのかわからないために一先ず様子を見ることとなった。


奏としては、自分で動けないのがかなり歯痒かったりするので、早く機械の調整を終わらせてほしいのだが、かなり難航しているようだ。

一昨日の報告では、女神に限って出力を大幅に抑え支援のみを行えるような装置を一時的な物として作っているらしい。だが、基本的に魔法が使えないというのに、どこまでの支援ができるだろうか。


「奏、今日は委員会?」

「今日はないよ。そういう尋は部活?」

「私も今日はない。というか、受験勉強もしなくちゃ……」

「うちで一緒に勉強する?」

「いいの?」


鞄を持って立ち上がると、尋と共に校舎の外へ。

校舎からはグラウンドの横を通って校門を抜ける。


「奏さーん」

「あ、萌愛。萌愛も帰り?」

「そうなんですけど、音羽見ませんでした?この後遊びに行こうって言ってたのに消えまして。今瑠衣と探してるんですけど」

「約束のギリギリ直前には出てくると思うけど……どこいったのかな?」


周囲にいないとわかっていてもとりあえず見渡してい見る。

グラウンドでは陸上部が走っている。音羽達も陸上部だったはずだが、どうしてここにいるのか。


「あれ、今日部活……―――!?」


鳴り響くサイレン。

それと同時に、空間が揺らぎ始める。


「萌愛」

「は、はい!ロッカーに置いてるので着替えてきます!」

「全員校舎に入って!」


奏が珍しく声を上げ、その声を聴いた生徒たちが大急ぎで校舎の方へ駆けて行く。

インカムのスイッチを入れ、青いランプが点灯したのを確認して耳につける。


「こちら、フリューゲル1。グラウンドに敵――雷獣5体」

『――耀史だ。すぐに人を送るけど、そっちで対応できそうなのは?』

「萌愛だけです」

『こちら、フリューゲル3、萌愛です。今、大急ぎで着替えてます!』

『次からはデータとして登録されるから服も自動展開するよ。しっかり装備してね』

「奏、あれは……」

「尋、下がって」


空間の揺らぎからゆっくりと雷を纏った獣が顕現する。


「なんかバチバチ言ってるけど」

「これは……最悪周囲一帯停電かな」

『こちら、シルト3です。今からそちらに』

「わかった、装備はちゃんと整えてね」

『わかってます』

『シャッテン1からフリューゲル1へ。あと3分で到着します』

「了解―――!?」


雷獣がこちらを見つけたようだ。

動くのは下策、にらみ合いを続けるしかないが……向こうは5体。すべての目を合わせるのは至難の業。


「奏!」

「くっ!?」


跳びかかってきた1体をなんとか躱す。

鞄は邪魔になるので、遠くに放り投げる。


「尋、早く逃げ……尋?」

「うふふ、私これでも巫女なんだよね。穢れは、祓わないと」


いつの間にか矢を番え、そして、雷獣目掛けて放つ。


「ぎゃん!?」

「え?効いてるの?冗談でしょ?」

「奏、早く逃げるよ!」

「で、その御札は何……」

「持っててよかった退魔の札!」


尋が投じた札は、雷獣の頭に当たると白い光を炸裂させた。


「よし、1体倒したよ」

「うそ……」

「奏さん!大丈夫です、か……ってなんで1匹死んでるですか?」

「とりあえず、あとで説明する。大郎もよろしく」

「了解」


短刀を振るい、的確に急所を切り裂く萌愛と、細剣で急所を貫く大郎。

どちらも効率重視の戦い方なので、そう時間はかからない。


「こちらシルト3、掃討完了」

『了解。シャッテン1はこれより任務の内容を現場のあと片付けへ変更します』


少ししてヘリが見え始める。

雷獣が散らした電気のせいで、いくつか証明が壊れていたりするが、迅速に掃討が行われたためそれ以上の被害はなかったようだ。

ヘリでやってきたシャッテン1――刄金つるぎに後の事を任せて、奏は鞄を拾いに行くことにした。


「じゃあ、私も解いていいですか?」

「うん。もう終わりで――いや、ちょっと待って!」

「え?」


萌愛が同調を解いた瞬間に光と共に、武器、そして服が消える。


「ふぇええええ!?」

「やっぱり」


すぐに着ていたブレザーを萌愛に掛ける。


「装備としてこの制服が登録されちゃってるから、一緒に消える。そんな気がしてたよ」

「ど、ど、ど、どうすれば!?私、下着だけになってるんですけど!」

「とにかく更衣室まで行かないと……ごめん、尋手伝ってくれる?」

「いいよ。そっちの君は大丈夫なの?」

「あ、はい。オレは一回登録してあるんで」


大郎が同調を解くと、制服姿に戻る。


「そういう事は先に教えてよ!」

「オレだってちょうど今日の朝翔さんから聞いたんだぞ」

「あー、もう!シルヴィアに下着見られたって言ってやる!脱がされたって言ってやる!」

「ちょ!?やめろよ!」

「萌愛、とりあえず、人が出てくる前に着替えに行くよ」

「は、はい」


喧嘩を無理やり止めて萌愛を立たせる。

尋が人払いを引き受けてくれたおかげで無事に更衣室までたどり着き、萌愛が着替えるのを待つ。


「尋、さっきのは?」

「んー……魑魅魍魎を掃うお札、らしいんだけど。実際に使えたことがなかったからびっくりだよ。本当に効果あるんだね」

「今回は良かったけどあんまり無茶しないでね」

「それはこっちの台詞。奏は萌愛ちゃん?達と違って武器持ってないんでしょ?」

「うん。まだね」

「じゃあ、無茶しちゃダメでしょうに」

「おっねえちゃん!」

「音羽?」


音羽と瑠衣がこちらに向って走ってくる。


「音羽今までどこにいたの?」

「屋上で寝てましたよ」

「うわ、なにやってるの」

「瑠衣、なんで言うの!?――まあ、それより萌愛は?」

「今着替えてるよ」

「怪我とかは?なんか大郎に脱がされたって聞いたけど」

「どこから聞いたのよそれ」

「萌愛――!」


音羽が更衣室に突入していくのを見送る。


「はぁ……じゃ、かえろっか」

「あは、そうだね……」


あとの事は音羽――というよりも瑠衣に任せて奏と尋は帰路についた。


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