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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
閑章A 桜咲く、春へと
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#A-01 既視感のある日常



朝。

奏はいつも通り支度を終わらせ少し早めに家を出ようとしていると階上から静音がやってきた。


「あれ?姉さん、今日は昼からじゃなかったの?」

「ちょっと奏に渡しとくものがあって」


そういうと、奏に腕章を手渡す。


「うわ、何これ。刺繍で文字入ってるし」

「返すの忘れてたからそのまま使って」

「そこは一回返した方がいいんじゃ……」

「いいからいいから。今日校門に立つんでしょ?」

「まあ、あんまり気乗りはしないけどね。いってきます」

「うん。音羽は任せて」

「え!?お姉ちゃんもう出るの!?一緒に行こうと思ってたのに!」

「音羽、寝癖寝癖」

「そーだった!」


急いで洗面所に入っていく音羽を見てから奏は家を出た。

基本的に毎朝シズネと共に登校していたので少しさびしく感じるが、春になれば音羽が一緒に通うことになると思うのでむしろにぎやかになるだろう。


「あれ?奏、どうしたの?」


背後からの声に振り向くとそこには尋の姿が。


「尋は朝練?」

「うん」

「早くから大変だね」

「まあ、境内の掃除とかしないといけないから早起きは結構週間づいちゃって苦でもないよ」

「へぇー……そういえば、お正月に行ったときは巫女さんたくさんいたけど」

「あれは臨時のバイトだよ。来年は奏もやる?」

「んー……考えとく」

「でも、奏に巫女服着せたりするとそれはそれで混乱が起きるような……」

「何?」

「ううん、なんでもない。というかなんでこんな早くから来てるの?」

「これの仕事でねー」


ポケットから腕章を出して見せる。


「あー……結局引き受けたんだ」

「ま、夏までだけどね」

「じゃあ、鞄教室にもっていっておこうか?私一回よるし」

「いいの?お願い」

「でもまだ始業まで1時間ぐらいあるよ?」

「今日だけははやめにたっとこうかなって。なんか河田君たちが基本的に自分たちがやるからって言ってくれたし」

「うわー……もはや奏の言いなりになってるのか男子共は」

「私は別に何も言ってないんだけどね」


校門に到着する。

何故か中には委員たちが勢ぞろいしていて、


「何やってんの、みんな」

「委員長より速く着こうと思って行動してたら自然と全員集まりまして」

「そんな馬鹿な」

「……もう完全に掌握してるじゃん。あ、鞄は任せてね」

「え、ちょっと尋。逃げないで」

「いや、私朝練あるし……というか挨拶運動って全員参加だっけ、河田」

「今回だけだ。響さんの最初の仕事だから派手にな」

「……風紀委員が風紀乱してない?」

「というよりも、静音様の時も起きたことだが、これを機に話をしたいという輩がたくさん現れる、それを排除するための人員だ」

「納得した。じゃ、がんばってね!」

「ええ!?」


手を振りながら校舎に去っていく尋。


「えっと……とりあえず、皆さんおはようございます」


奏がそういうと、男子も女子もそろって頭を下げる。

役員以外は各クラス2人選出で、前後期で変わる委員。今は3年生が抜けているので20人。しかし、ここまで息が合うものか。


「とりあえず、今日はまだオレが仕切らせてもらいますね」

「お願いね、河田君」

「お任せあれ。とりあえず、委員長と副委員長は動かなくていいです。目立つ位置に立っていてください。で、その周りに斎藤、吉永、飯田の2年女子3人。それとその周りは1年男子で――」


河田によって奏の周りに人だかりができないようにするための陣形が組まれていく。


「おし、こんなところか。じゃ、全員腕章つけて。それじゃあ、委員長1言お願いします」

「えっと、とりあえず正式に委員長として働くのは今日が初めてで、夏までの短い期間だけどみんなよろしくね?姉さんの受け売りで悪いけど、挨拶運動という名目だけど、校則に大きく違反するような着崩しやその他違反は見逃さないように。うちの学校は校則が少ないんだから、これ以上増えるようなことがないように締めれるところはしっかり締めていきましょう」


「はい!」と揃った返事の後に、河田の指示通り散る。

月に一回行われる風紀委員会の恒例行事。これによってある程度風紀が保たれるので教師陣からは好評。

違反が見つかっても特にあれこれするわけでもないが、委員長にいいところを見せようと無駄に気合の入った委員たちからのありがたい説教が得られる。


「さ、じゃあ後は立ってればいいの?」

「そうですね。なんか私まで隔離されたんですけど」

「知ってると思うけど始業10分前には引き上げるから気楽にしててね」

「ありがと、飯田さん。飯田さんって風紀委員だったんだね。同じクラスなのに知らなかった」

「気にしないで。響さんに同じクラスと認識されてただけでも結構嬉しいから」

「え?そんなレベル?」

「奏さん、あんまり人と深く係わらないですからね」

「そうかな?あ、おはようございます」


登校してくる生徒たちは、腕章を付けた奏の姿に驚く。


「みんな驚いてますね」

「そりゃ驚くでしょうね」

「あ、一人連れて行かれた」


「はーい、そこの君。アクセサリーはダメだから」

「うわぁ、今日だったのか。ミスったなぁ……」

「没収はしないけど、記録はつけるから生徒証だして」

「ちなみに違反が溜まるとどうなるんですか?」

「もれなく委員長に嫌われます」

「何だその罰……」

「ちなみに委員長は2年の響さんに決まりました」

「マジっすか……ああ、マジだ」


一瞬こちらを見た生徒が何故かすごく反省した様子で校舎に歩いていく。


「うわ、なんかすごい効いてるね。よく聞き取れなかったけど」

「……あれ女子にも効果あるんですかね?」

「……まあ、響さん女子にも人気あるからあるとは思うよ」

「というか私は注意とかしなくていいの?」

「奏さんが出ると、また別の問題が起きるのでここで挨拶をお願いします」

「というか池内さんはなんで“奏さん”って呼んでるの?仲良いの?」

「えっと、まあ姉同士が友人でして、仲良くしてもらってます」

「そうなんだ。池内さんあんまり喋んない人だと思ってたけど」

「紫苑は人見知りだから」

「そうなんです」

「そうなんだ……」


何やら納得いかない顔だが、それ以上問いかけることもなく飯田は仕事を再開する。

そして、始業開始10分前まで特に大きな問題もなく、一度奏が集合を掛け、解散する流れになった。


「さて、じゃあ、みんなお疲れ様でした。えっと、報告書とかは」

「それは僕が書いて後で渡しますのでチェックとサインだけお願いしてもいいですか?」

「じゃあ、お願いします。黒田君」

「はい!それじゃあ、違反者の記録もまとめておくのでこちらに全部報告お願いしますね。響さんにはサインした後、生徒会室にお願いします」

「うん、了解」


確か同じクラスの黒田に後を任せた後、奏は飯田、黒田と共に教室に戻った。


「あー、お疲れ様、奏」

「尋。まあ、私何もしてないけどね……」

「いいのよ、委員長なんだから不遜に構えてれば」

「それはさすがにダメだと思うけど……」


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