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第四話 謎の来訪者~ちょっとヤンデレの鈴津木さん~

読み終わったら、感想ください!!!!

つまらない

この作品ひどいでもいいです。

みなさんのアドバイスが僕を成長させます!!!!

りんごの皮を剥くのにコツはあまりいらない。包丁の刃を怪我をしないように親指で押し当てながら、皮と実の間をりんごの形に沿ってすすめてゆけばいいのだ。私は皮を最後まで途切らさせずに一本の紐のようにできる。

今日は奏が背中に怪我をしてから丁度一週間がたった12月10日だ。

目映いばかりの朝の光が病室の窓から差し、一筋の明かりが眠っている奏のあどけない顔を照らす。

奏が起きたときのためにリンゴを剥いていた。彼の体調も傷もだんだんと癒え、今はもう開いていた傷がかさぶたで覆われている。

「喜ぶかな、奏。」

鈴津木はその一心で面倒な作業に身を投じた。

突然、コンコンっと誰かが病室のドアをノックした。

「すみません。」

ドア越しから巨漢と思われる野太い声が朝の光で満たされた白い空間に響き渡る。

誰だろうか。私が一週間、この病院を見た限りではこんな声の主は病院で勤務している人の中にはいなかった。もしかしたら、外部の人間かもしれない。

皿にのったリンゴと包丁を奏が寝ているベッドの傍らにあった棚に置いてから、

「はーい。なんですかー。」

いつものように可愛げに振る舞っておいた。相手を警戒させないためである。

恐る恐る、私はスライド式のドアの取っ手に手をかけ、ゆっくりと開いた。

そこには端正な顔立ちの30くらいの小男が一人、紳士な雰囲気を漂わせてたたずんでいた。

私は小男の声と容姿とのギャップの差に心底驚いた。

顔は小奇麗なのに、声はものすごく低い。とてもこの世の者とは思えなく、腹の底から這い出てくるような恐さを感じた。

「どなた様ですか?」

それでも私はこんな状況に置かれようが、欠かさない。姿勢を低くして、その小男の目を下から覗き込むようにして見る。

「あなたはどこから来たんですか?」

こうして胸元をちらつかせることで、相手の気を引く。

「安藤 奏という男を探している。ここで合っているか?」

小男は私の挑発的な態度に欲情をかられることなく、淡泊に、冷淡に言った。

反応なしか。大抵の男はこれで私におちるんだけどな。

「奏の知り合いですか?」

「いいや。少し用があってね。」

怪しい。奏には見舞いに来てくれるような友達も知り合いもあまりいない。怪我をした当日の日に奏の両親が、2日前に学校の担任が来たくらいだ。いい人なのになあ、奏は。

でも、この男が奏の見舞いでここに来たようには感じられなかった。

「何のようですか?」

「ちょっと、話したいことがあるんだよ、奏君に。」

「私、奏の彼女なんで、私に話してくれれば、私を通じて奏にいっておきますけど。」

「いいや。だめだ。二人じゃなきゃ、話せないことなんだ。少し、席を外してくれないか。」

小男は焦っているような物言いだった。

「お見舞いじゃないんですね。」

「ああ。彼と話したいことがあるんだ、席を外してくれ。」

あやふやだった小男への疑いが今、確信へと変わった。

この男、奏に何かする気だ。

体が勝手に動いていた。

咄嗟の判断で奏の頭のそばにあったナースコールを押す。私は自分の中のメラメラと立ち込める怒りに思うがままに身を任せた。棚の上においてあった包丁を右手でなぎ払うようにして取り、小男の首を左手でドアに押さえつけ、小男の鼻辺りに包丁を突き出した。

「奏に何する気?

 あんた、どうみても怪しいよ。奏に何する気なの?」

私の大切な愛しの奏は誰にも渡さない。どんなことがあっても、どんな目にあっても。

奏との時間を過ごす内に、自然とそう、決めていた。

「やれやれ。物騒なお嬢さんだ。」

小男は首を絞められ、突き出した包丁はあと数ミリで刺さりそうなのに

それなのに、苦しむ様子も観念する様子もなく、余裕綽々としていた。

「動いたら、殺す」

はあ、と小男はため息を一つつくと

「これはできれば使いたくなかったんだよなあ。あーあ。君がそうさせたんだよ。」

人差し指をこちらにむけてきた。

「動くなあああああ!!!!!!ほんとに殺すわよ。」

「うるさいなあ。おとなしくしなよ。他の人間にばれちゃうだろ。」

まだ男は手をおろさない。それどころか親指を立て始めた。

銃の形を指で作ったのだ、この男は。

「は?

 あんた、バカなの?そんな幼児がやるようなことして何がしたいの?」

大のおとながこんなことをするなんて、と苦笑がこぼれ出そうになる。

その刹那、

麻酔銃タイエス

小男がそう言った途端、

私の背筋は凍り、全身が弛緩したように脱力した。

私は打たれたんだ。ドウンっと何かが私の内側に貫くように入ってくる。

私の人生、ここで終わるのか。


                          *



「手荒なことをしてすまないね。」

小男はそう言って、安藤奏の彼女の――

「確か、鈴津木 奏だっけか?」

あの人から名前は聞いていた。

鈴津木 奏を左肩にかついだ。

彼女に意識はない。私の麻酔の魔法で眠らせている。

先刻、彼女が必死の決意で押したナースコールに呼ばれ、看護師達が駆けつけてきたのか

私の居る病室とは別の棟の廊下が騒がしい。 まずいな。

「一刻を争う。ただちに、安藤 奏を連れさらわなければ。」

小男はベットで寝ている安藤の肩を揺さぶって、彼を起こそうとする。

「安藤君。安藤君。起きて。」

「ふえ?」

どうやら安藤 奏は寝ぼけているらしいので、麻酔銃タイエスは使う必要がないようだ。

「ほら、自分で立てるかい?」

彼は私が誰かも確認しないまま、躊躇なくベットから降りて、私に身を任せた。

危なっかしい奴だ。もし私が極悪人だったら、どうするつもりなんだ。

小男はかついでいた鈴津木 奏の顔に目を向ける。

「まったく、包丁をいきなり突き出すこのお嬢さんといい、彼といい。癖のあるカップルだな。」

まあいい。

「じゃあいくよ、安藤君。しっかりつかまっているんだよ。」

「んん?うん。」

安藤はまだ寝ぼけている。

小男は左肩で鈴津木をかつぎ、右腕で安藤を抱えた。

出発しようとして、開いていた病室の窓の外枠に足をかけた。

が、

「遅かったか。」

振り返ってみれば

騒がしかった廊下は静まり返り、ドア付近にいる彼女らははただ一点を見つめていた。

この二人を連れさらおうとしている私を凝視した。

ある看護師が

「何?なんなの?」

と、言った。

「あなた、何してるの?」

初めて出会う境遇に看護師3人は驚きの言葉を口ぐちにしていた。

「ちょっと、警察呼ぶわよ。」

やってしまった。大問題発生である。

一般人に見られてはいけなかった。何回かこの作戦を実行したことはあるが、こんなミスは初めてだ。

この二人が興味深いあまり、いつもより長く時間をとってしまった。

生憎、私は記憶消去の魔術は持ち合わせていない。

というより、記憶消去の魔術はそう簡単に覚えられるものではない。

小男は自分の過失にチっと舌打ちしながらも、振り向いていた首を元に戻す。

「ちょと。あんた!?」

看護師達が引き止めるように二人をかついだ小男にかけよった。

「遅い。」

すでにもう小男は窓枠を蹴って飛び立っていた。

「え?!飛んだ?!」

看護師達は口をそろえて言った。

小男は飛んで行ってしまった。果てしなく続く高く、青い空へと。



いかがでしたでしょう?

続きが気になった方は第5話も読みすすめてください!!!

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