第三話 初キスの味
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何の前触れもなく、自分の意識が戻っているのがわかった。
まぶたをうっすらと開けてみれば、そこには人と思われる像があった。
ん?誰だろう?目を凝らしてみて、ピントが合ってくると
鈴津木の瞳からポトポトと雫がしたたり落ちているのがわかった。
「よかった。ホントによかった。」
彼女は目の辺りが真っ赤になるまで、泣いている。
彼女とのあまりの温度差に
今いる場所の空気が変に混ざり合って、歪な形を生み出していた。なんだか、落ち着かない。
「ど、どうしたんだよ。鈴津木?」
彼女は何も答えない。黙ったまま椅子に座りこみ、手で顔を隠したまま
しゃくりあげていた。
ああいやだな。女の子の泣き顔は。それにしても何があったんだろうか?彼女はどうしてこんなに泣いているんだろうか。考えても考えても、何もできない自分に嫌気がさしてくる。
部屋はむごいくらいに殺風景な白い床や壁で覆われていて、今、病院にいることがすぐにわかった。
僕が何かをやらかしてしまったことがじわじわと伝わってくる。
「あ、あのさ。僕って何してたんだっけ?」
泣き続けていた鈴津木は泣き止み、始めはキョトンっとしていたものの、すぐにいつもの清々しい笑顔に戻った。
空気も歪な形から普段の居心地のいいものへと変わっていく。
「なーにいってんのよ、ばか奏。」
「ばか奏だと?じゃあ、お前も奏だからばかになっちゃうじゃん。」
よかった。いつもの鈴津木だ。彼女のバイタリティーがみるみるうちに広がり、彼女の虚ろだった青い目も生気を取り戻していた。
「うるさいですう。もう、あんたのせいでめっちゃ恥ずかしかったんだから。」
鈴津木はボソっとそう呟いて、俯いた。
「え?何?聞こえなかったんだけど?」
彼女の声があまりにも小さかったので、ついつい素っ頓狂な声を上げてしまう。
鈴津木は僕の反応に怒ったような素振りを見せ
「だーかーら。奏がお姫様抱っこしながら、街中走り回ったから、他の人達に超注目されて、めっちゃ恥ずかったの。」
顔を赤らめながらも、声を張り上げ、必死の形相を僕に向けてきた。
ああ。そんなこともあったようで、なかったような気がする。なんでそんなことしたんだ、俺?
「もう。みんな、ヒューヒュ言ったり、囃し立てたりで。こっちの身にもなれっての。」
だいたい、想像できる。僕がクリスマスで活気のあふれた街を鈴津木をお姫様抱っこしたまま、駆け抜ける。
そりゃ、盛り上がるだろうな。ほんと、なんでそんなことしたんだろ。
「なあ。俺、なんでそんなことしたんだ?」
「えっ。」
鈴津木がどれだけ驚いたかは明白だった。顔が少し青ざめ、視点が僕が寝ている白いベッドの足辺りで止まっていたからだ。
「覚えてないの?奏?」
深刻そうな趣をこちらに向けてくる。
「ああ。ごめん、覚えてないんだ。」
とりあえず、謝っておくことにした。
「まあ、無理もないか。かなり深い傷らしいし。」
「えっ?傷?」
あまりにびっくりして、ベットから上半身が飛び上がってしまう。久しぶりにまじまじと僕は自分の体を見た。ちなみに、僕はパジャマに着替えさせられていた。
「どこにも、傷なんてないけど?」
「ほら、その傷。背中にあるでしょ。大丈夫?痛まない?」
「あれ、ほんとだ。」
指で背中をまさぐると、肩甲骨あたりに湿布や包帯で処置が施されているのがわかった。
鈴津木に指摘されて、初めて自分でも意識するようになったのか、僕の背中に激痛が稲妻の如く走った。
「痛えっっ!!!」
まさに、背中をえぐるかのような痛みだった。これを待っていたかのように、記憶が僕の脳内で暴走し始めた。がんがん、頭をたたく音がする。
「大丈夫っ!?奏!?」
泣きつく勢いで、急に鈴津木が僕の体を横から抱きしめてきた。
「全部、思い出した。」
あの日、鈴津木をオルゴール専門店に連れて行こうとして、ばあちゃんがいて、
真っ暗闇の中、化け物に襲われたことを。背中を刃物で思いっきりえぐられたことを。
足音が遠くのほうから、ドンドンドン、ドンドンドンと迫ってきて、精神を虫食んでいくような恐怖を。
「怖い。怖い。怖い、怖いよ鈴津木。」
僕は悲鳴を上げながら、彼女を抱きしめ返した。
また、彼女に寄り添って、痛みを、不安を発散させる。僕は正真正銘の逃げ男だ。
「大丈夫、大丈夫。ねっ奏」
化け物にトラウマという、いつまでも治らない恐怖を僕の心に植え付けられた。
「悪い、鈴津木。」
「!?!?」
鈴津木にすがって、寄り添うのが一番の発散方法。
僕は横から抱きしめてきた彼女にキスを強行した。
もう、これは付き合い始めたばかりの照れあっているカップルのキスじゃなかった。
いきなりのことだったので、彼女の青いひとみが小刻みに揺れる。
のどかで、静かな夜に二人だけの息が荒い。
何秒間鈴津木と抱き合いながら、それを続けていただろうか。
僕はベッドに座っていったので、彼女は前のめりの態勢でキスをすることになった。
「ねえ。こっれって」
鈴津木は時々、子犬のようなかわいらしい顔をみせる。
「初、キス。よね。」
不安はなくなった。恐怖もとれた。
「ベッドに座りながらって。ふふ。」
でも、罪悪感だけが僕の中で回る回る回る。
「でもさあ。」
こんな衝動的な思いで大事な初キスをしてよかったのか。
「ちょっと臭かった。奏。」
彼女はそれだけ言い残すと、病室から出て行った。
前言撤回。あいつのせいで、初キスは台無しだ。
鈴津木のいない病室はやはり寒くて、苦しかった。僕は布団を足がはみ出ないところまで頭にかぶって、虚しさをまぎらわせた。
いかがでしたでしょうか。やはり、文章下手ですよね。
続きが気になる方はぜひ、第四話も読み進めてください!!!




