イラスト頂きました!4+小説
今回は涼雅様のイラストと勝手にコラボしちゃいましたっ
ほのぼのするはずが…食うか食われるか?
女は怖い?的な話になったのはご愛嬌でっっ
「本日は、あー、愚息の婚約披露パーティーに、えー、お集まりいただき、そのー、ありがとうございます」
正式な騎士となって3年。チキが帰ってから2年目のこと、ようやく行われた第五小隊同期入隊の山賊風魔道士ログ・ウーラと、デルフォード家メイド兼女性騎士副隊長エマ・リュンナの婚約披露パーティーが行われた。
思えば長い道のりである。
相思相愛であったのにもかかわらず、ここまでずるずると延び延びになっていたのは、主であるチキが行方不明になったり、エマが女性騎士団を立ち上げたりと忙しかったせいもあるが、ログがここぞという時に申し込めなかったせいもある。
行方不明になる前のテレジア事件から数えて5年。
女性騎士団立ち上げに手を尽くしたマリーも呆れるほど長い時間だ。
「愚息というのは正しいわっ」
ログの父親であろう。山賊の大ボスのような初老の男のスピーチに、マリーは鼻息を荒くしながらぷりぷり怒っている。その手にはチキンレッグが握りしめられ、豪快に齧り付いていた。
「そうなの?」
「そうよっ。5年も待たせたのよ。その間、チキは知らないだろうけど、あの二人は廊下ですれ違っては目配せし合うし、手が触れては二人して真っ赤になるし、周りの者が胸焼けしそうな青春爽やかバカップルぶり。それなのに婚約を言い出さないものだから、その間にどんだけエマのファンが彼女にアタックしたことか」
男性並みに背の高いエマは、今日はマリーがデザインしたスラリとしたマーメイドラインの、体の線が出てしまうようなドレスを着こなして幸せそうに笑っている。
5年前はただひょろりと背が高いだけのカカシのような娘だったが、今はふくよかな女性らしいラインをもつ実に魅力的な女性になった。
確かにあれなら男達が放っておかないだろう。
現に、ログの周りで目を光らせている者達が今もいるくらいだ。
「でもゴールしたし。本当のところ、マリーは何で怒ってるの?」
肩の無いドレスを身に纏い、純白の髪に黒のメッシュが入った髪を結い上げたチキは、じっと大人しくしていれば深窓の令嬢のように美しいが、周りが見知った騎士ばかりのせいで気が抜けているらしく、大皿にこんもりと料理を載せて結構な勢いで食べ、初めて彼女を見る者達をぎょっとさせ、遠ざけている。
「べ・つ・にぃぃ~」
まぁ、男達が遠ざかる半分の理由は不機嫌なマリーにもあるが。
マリーはちらりと視線を第五小隊隊長、俗に山賊隊長とも言われるバーデ・ムートに向けた。
今夜のパーティーには騎士達のパートナーの女性もいる。もちろん本当に婚約もしくは結婚していたりと間違いなくパートナーである女性もいるが、今夜集まる騎士の多くは第五小隊。山賊の集まりと言われる彼等にはあまり女性が寄り付かないため、ほとんどが近所の女性や、知り合い、妹などで、彼女達はここぞとばかりに結婚相手を探している。
その候補が、独身で隊長格のバーデなのだ。
長年アタックを続けるマリーとしては面白くない。
しかも、ついこの間、清いお付き合いでキープしていた彼氏のトムが、マリーを捨てて別の女性と結婚してしまったのだからなおさらだ。
「あの朴念仁っっ」
チキンレッグに豪快に齧り付くマリーの方がよほど山賊の様なのだが、チキはとりあえず黙っておいた。
「そういえばヴァルとユリウス遅いねぇ」
当初チキとマリーをエスコートする予定だった二人は、隣国の女王を迎えるために国王に頼まれ、見栄えを良くする+女王の護衛にかりだされてしまい、少し遅れるというので二人でやってきたのだが、二人が会場入りしてもう随分経つ。
「お兄ちゃんとユリウス様が来たらすぐわかるわよ」
「どうして?」
「…ほら」
マリーがそういった瞬間、女性達が騒ぎ出し、バーデを取り囲んでいた女性達が一気に大移動を始めた。
何事かと見やれば、会場の入り口から、本日の仕事着だった軍服に徽章を付けた姿のユリウスとマリーの兄ラインヴァルトが入ってくる。
「あ」
どうやらチキは出遅れたらしい。
ユリウスはあっという間に女性に取り囲まれ、憮然とした表情ながらも応対している。
チキはむぅっと唇を尖らせた。
「マリーの気持ちがよくわかった」
「でしょうっ」
マリーは頷き、女性に逃げられたバーデを見て胸をすっとさせる。
チキは持っていた大皿をテーブルに置くと、すっと背筋を伸ばし、持ち前のニワトリ走法で人の間をすいすいとすり抜け、するりとユリウスの前に現れる。
「チキ、遅れてすまない」
チキを目にして柔らかくなるユリウスの表情にチキはにこりと微笑んだ後、周りを取り囲む女性達へスッと視線を向けてにこりと微笑む。
「お集まりの皆様、とても失礼なこととは思いますけれど、夫に用がございますの、そこを通してくださるかしら?」
チキの視線に女性達がささっと動き、チキは満面の笑みでユリウスの腕に腕を絡めてその場を抜けた。
ちなみにラインヴァルトには人身御供になってもらった。
独身なのだから喜んで相手をすべきだろう。
二人が女性の輪から抜けると、バーデがにやにやしながらユリウスに手を上げて挨拶する。
「意外と怖い女だったんだなぁ、チキ。気をつけろよユリウス」
お嬢様モードのチキはクスリと笑い、バーデの背後を見つめる。
「普通ですわ。それより、隊長のほうこそ後ろに気を付けた方がよろしくてよ」
「は?」
振り返ったバーデが見たもの、それは、チキンレッグ片手に、おっそろしい笑みを浮かべるマリーの仁王立ちした姿である。
ユリウスは凍りついたバーデの肩をポンポンと叩き、呟く。
「早くしないと食われるぞ」
・・・・・・・
「何が!? 肉が!? 俺が!?」
「どっちだろうな?」
その夜、バーデの悲鳴が響いたとか響かなかったとか…
真相は闇の中である。