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「三章・神という存在」

その日、ようやくこの村は、世界でおきた事実を知ることになる。


「となり街には、首都からの難民者が雪崩れ込んできて

 街の路地にまでテント貼って生活してる奴がいるらしいぜ?」


「難民はこの国だけで10万人とか言ってるからな・・・。

 そのうち、食料求めて、この村に雪崩れ込んでくるんじゃないか?」


広場で水をくんでいると、村の人たちが騒ぎ立てているのがみえた。


「あの、何かあったんですか?」


「あぁ、姫様!聞いてくださいよ!

 戦争ですよ!戦争が起こったんです!

 首都は壊滅しちゃって、主要な都市もほとんどがさんざんな状態らしいです!

 首都からの難民がもう、隣町まで逃げてきてるらしいですよ!」


「村長の話だと、この村にも、援助物資を送るよう命令がきてるっていうぜ・・・。」


「この村のどこにそんな蓄えがあるっていうんだよ!

 日頃はさんざんな扱いしておいて、困ったときだけ虫が良すぎるぜ!」


戦争・・・?たまに伝え聞いている世界情勢では

この国がそれ程緊迫した状況とは思えなかったんだけど・・・。」


「どの国と戦争をしたのかわかりますか?」


「いや、それがまったくわからないそうなんですよ。

 とにかく、ものすごい兵器を使っていて、機関銃もミサイルも効かないし

 戦車や戦闘機が紙くずみたいに、一瞬でぺちゃんこにされるって話らしいです。」


「俺が聞いた話だと、相手はたった一人で数千の戦車や戦闘機、

 何万っていう武装した兵隊を相手にしたらしいぜ!」


「おいおい、たった一人だって!?それはいくらなんでもないだろう!」


もし、この村に伝わるまでに真実がねじ曲がっていなければ、

私は最悪の事態を想定せざるをえない。

彼らの話を実現できる程の軍事組織は人の技術水準では実現できない。

もし、これらが真実であれば、それは異能の力を持つ者の仕業である。

異能者の力であったとしても、明らかに私よりも先んじた者の仕業になる。

技術面もそうだが、それを実用化し、実際に運用する所まで行うには

それ相応の時間がかかる。少なくとも私が同じことをしようとすれば

後5年以上は時間がかかるであろう。


「お、おい・・・み、みろ!

 空に何かが・・・。」


そうして、誰かが指さした先をみると、そこには空の上に

くっきりと、人の姿が浮かび上がっていた。

大気の雲よりもやや濃く鮮明な映像が浮かび上がっている。


大気映写技術・・・それも、かなりの広範囲で濃度も濃い。

私も構想だけは試みたことがあるが、かなり難度の高い技術が要求される。


これで確信できた。あの男は間違いなく私と同類の異能者だ。

持ち合わせている技術とそれを実現するための資材の準備、

先ほどの戦争の話を聞く限り私より7年は先んじていると思う。


大気に鮮やかに映し出された人影はゆっくりと、不適に世界を見下し話し始めた。

大気映写技術だけでは声まで通すことはできないのだが

音源用の小型スピーカーポッドをかなりの広範囲にばらまいているのだろう。


「これを見ている、世界中の人間達に、まず、事実を報告しよう。

 たった今、世界中の軍事施設、行政機関。その全てを私が制圧した。

 私はまぁ有り体に言えば、君たち人間によっては神のようなものだ。」


そうして、しゃべるその男の下には、各地の戦いの様子と思わしき映像が浮かび上がっていた。

確かに、それを見る限りではまさに、圧倒的で軍隊等は何の役にもたっていなかった。


「信じられない者も多いかもしれないが、それも結構。

 いつでも逆らってくれてかまわない。

 君たちでは1000年かかっても私にあらがう兵器をつくることはできないだろう。」


その男・・・年は30程度だろうか。不老の技術を開発していたらわからないけど・・。

あまりこういう場面での代理は考えにくいので、恐らく異能者本人であるとは思う。

私とは人種が違うようだけど、1つだけ共通点があった。

その男の眼は血の色に近い、深い紅に染まっていた。私と同じ希少な瞳の色。

これは、果たして偶然なのだろうか?


「私の名は、カシス・ミリキュアール。

 これから、君たち人の神として君臨する名だ。覚えておくと良い。」


そういって、大気に映し出されていた映像が消え、

かすかな揺らぎと共に、元の青空が映し出される。

同じ異能者の存在を想定はしていたけど、まさかこれ程の開きがあるなんて・・・。


「システィナ!無事か!?」


今も映像の消えた青空をポカンと見上げる人々が集う中、

人混みをかきわけて、フィルが駆けつけてくる。


「フィル・・・。大変なことになったわね・・・。」


「あぁ・・・今のは本当なんだろうか・・・。

 空に人の絵が映ったことも、その中でみた、首都壊滅の姿も

 すぐには信じられないことばかりなんだが・・・。」


「そうね・・・そうかもね・・・。

 でも、フィル・・・これは事実なのよ。

 現に、首都は壊滅して、その難民は隣町まできているのだから。」


「あぁ・・・そうだな・・・。

 これから・・・これからどうなるんだろうな・・・。」


「そう・・・ね・・・。」


先をこされた以上、私は抗うか、隷属するか。

選ばなければならない・・・。

あの男とどう対峙するかを・・・。


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