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「二十二章・脱走」

「まったく、君たち人間っていうのは

 カシスなんかよりもよっぽどたちが悪いよ。」


フリオが拘束具の痛みがまだとれないのか、

苦悶の表情を浮かべながら、ぶつくさと文句をたれる。


私も長い間拘束されていたため、体の感覚がついてこない。

ふらふらとよろめきながら、フィルに肩をだかれ、支えてもらう。


「疲れている所わるいが、すぐにここを離れないと。

 おまえ達は、いつ処刑されてもおかしくないんだからな。」


「まったく、カシスを倒せたのは誰のおかげだと思ってるんだよ。

 君たち人間じゃ何もできなかったくせにさ。

 ちぇっ。こんなことなら、おとなしくつかまるんじゃなかった。」


「ほら、フリオ。文句いってないで支度しましょう。

 フィル、何か武器になるようなものはないかしら。」


神々とはいっても、人と同じように素手では大した力もない。

武器をもってはじめて、神たる力を振るえるのだ。


「こんな場所にたいそうなものはもってこれなかったが、

 ほら、この簡易デバイスぐらいならあるぜ。」


「はぁ・・・私たちにしたら、こんなのおもちゃみたいなものなんだけど・・・。

 まぁ何もないよりはいいか・・・。」


「おもちゃって・・・それを造るだけでも・・・はぁ、まぁいいや。

 さぁとりあえずおまえ達を連行するって感じにするから。

 ほら、それっぽくしてくれよ。」


ゆるゆるに拘束具を再度つけなおして、それなりに連行されているような形になる。

こんな手にダマされる人っているのかしら・・・。


「やや、フィル総帥!どうされました!

 後ろの二人は牢につないでおきませんと、危険ですよ!」


「この二人はこれから処刑を行うことになったため

 私自らつれていくことになった。」


「なんと!そのような役目は私がいたします!

 フィル総帥がなさらなくても・・・。」


「ゴホン。これは、人が偽神を断罪するという、

 神聖な儀式の一環であり、総帥自らが行わなければならない仕事なのだ。

 君の心遣いはありがたく受け取っておく。」


「こ、光栄であります!

 神聖な儀式に立ち会え、私は感激しております!!」


まぁなんていうか、騙す方も騙される方も・・・。

直立で敬礼して私たちを見送る警備兵を後に

私たちは足早に牢屋を抜け出す。


牢屋から抜けたら普通の服に着替えて、眼を隠せば

普通に歩いていても見つかることはない。

このまま、この場を切り抜けられるかと思ったその時だった。


彼女が私たちの前に立ちはだかったのは。

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