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「二十一章・戦犯」

システィナとフリオは、我々に降り、カシスは死んだ。

人を支配していた神はいなくなり、人は自由を再び勝ち得た。


だがそれは、人類の自由であって、俺の自由ではないことを

この後、痛感することとなる。


システィナとフリオは、神の力を持つ者として

俺の弁護の甲斐もなく、全身を拘束され地下牢に幽閉された。


戦後処理を行う会議の中では、彼ら神の力を持つ者は

S級戦犯として扱われ、どう殺すべきか、という

処刑を前提とした話し合いが行われていた。


人は何故こうも醜くなれるのだろう。

自分たちが受けてきた苦しみを、何故苦しめた者にも与えたいと願うのだろう。


S級戦犯である二人をかばい続けてきた俺は

総帥という地位にありながら、その発言権を確実に失いつつある。

人道に反するクローン兵器も俺の一存で計画して実行したことになっており

俺自身もA級戦犯として、裁かれるかもしれない。


次の総会で、総帥解任の動議が提案される動きがある。

そうなったら、俺はあっという間にA級戦犯になって、処刑まっしぐらってわけだ。

これを裏で操っているのが、長い間俺をささえてくれたソニアだというのだから

人生何があるかわからないものだ。


俺は、総帥としての権限が失われないうちに行動することにした。


「これはフィル総帥!

 何かご用でしょうか。」


地下牢の警備兵が俺をみるなり敬礼の構えをとって話しかけてくる。

俺の地位が危ういというのは上層部だけで進められている話で

こういった末端の立場では、俺はまだまだ英雄扱いしてもらえるらしい。


「ちょっと、地下に降りてみたいんだけど、頼めるかな。」


「はっ・・・ですが、委員会の方より

 例え総帥であっても、ここは誰も通すな、と言われておりますので・・・。」


「馬鹿、それは例え話だろう。

 俺がこの国の中で入れない所なんて、あっていいはずないだろ?」


「確かに。委員会の方は少し神経質になりすぎなのですよね。

 聞けば神々は、あのカシスというのが一番やっかいな奴で

 残りの二人はカシスが倒されるとすぐに命乞いをしてきたとか。

 いやはや、これもフィル総帥の武勇あってこそ、ですな。」


一体、どういった話になって広がっているのか。

あの時とまったく異なるその武勇伝を苦笑いで聞きながら

俺は兵士に案内され、地下牢へと降りていく。


厳重な扉をいくつも抜けた先に、全身を拘束された

システィナとフリオがいた。


「ありがとう。しばらくこいつらと話をしたいから、

 おまえは外で見張っていてくれるかな?」


「はっ・・・しかし、フィル総帥に万一のことがあったら・・・。」


「俺が拘束された二人にやられるぐらいなら、

 どうやって、俺はカシスを倒して二人をここへ連れてきたんだ?」


「確かに、そうですね。

 それでは、私は外で待機しておりますので、

 何かあればお声かけください。」


「あぁありがとう。」


警備兵は、疑いもせずに外へでていった。

まぁ総帥っていう肩書きを使うのも、これが最後になるかな。


俺は警備兵がでていったのを見計らい二人の拘束具を外しにかかった。

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