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「十三章・三人目」

「ねぇ、あなたは映像にでるときは、

 なんであんな変なしゃべりかたになるの。」


私は最上階で、映像装置を前にしゃべっているカシスを見てそういった。

私とカシス以外の三人目の同種が見つかった。それは私もカシスも感じとったことだ。

私たちは自分たちが使う強い脳波をとらえる装置をいくつも持っている。

自分以外の脳波も検出できるし、それが強い力ならなおさらだ。

私もカシスもそれぞれ別のものをいくつももっているが、

その中のいくつかに引っかかり、お互いがそれに気が付いた。


カシスはさっそく、例の放送の準備をしだしたが、

あいつの監視下にある私は、何ができるわけもなく、

仕方なしに円卓でリーナのいれてくれる紅茶を飲みながら

カシスの大演説を生放送で観ていたわけだ。


「ばっか、あっちの方が支配者らしいだろ?

 俺が素でしゃべったら、素敵なお兄さん、ってかんじがして

 神様的な感じがしねーだろーよ?」


「はぁ・・・。」


支配者らしくもなければ、素敵でもなければ、お兄さんでもなければ

神様的でもない、つっこみどころ満載のカシスの発言に私はため息でしか答えられなかった。

こんなのが支配者って、やっぱり間違ってるわ・・・。


「ねぇ私が迎えにいってあげようか。その子。」


「だめだだめだ。

 おまえは、しばらく部屋にいろ。

 ここはまず男同士で話をしてからだ。それまでは

 おまえの部屋があるフロアからはでるんじゃないぞ?」


まー当然そうでしょうね。私はまぁごねるわけでもなく

仕方なく従う。いくらでも接触する機会はあるでしょ。

カシスとしては、相手がどれだけの力をもつか見極めて、

私と組まれても勝ち目があるかどうかを判断したいのだろう。


慎重なことだけど、まぁ映像をみた感じ、かなり子供みたいだし

戦力としてはちょっときついかなーとは思うわね。

でも、カシス側につかれるのは面倒だから、それなりに話はしたいかなー。


「じゃ、あとでいいわ。

 大丈夫だとは思うけど、あなた、少年趣味とかないわよね?」


「ぶっ!

 おまえ、何の心配してるんだよ・・・。

 さすがの俺様でもびっくりするわ・・・。」


「冗談よ。じゃー私は部屋に戻ってるわ。」


「おう、聞き分けのいい子はすきだぜ、システィナ。」


「はぁ・・・。」


私はため息で返事をして、部屋をでていく。


「な、なんかため息おおいな、システィナの奴。

 た、体調がわるいのかな、な・・・?」


カシスはそういって、リーナに同意を求めていた。

はぁ・・・。


自分の部屋にもどって、2時間ぐらいだろうか。

私はあっけなく、その少年とあうことができた。


「システィナ、いまからでてこれないか?

 あの子供と少し話をしてほしい。

 第3応接室にいる。リーナをよこすから、いっしょにきてくれ。」


部屋にある、通信機器・・・電話っぽいんだけど

カシスの側から一方的に接続できるだけの通信機器でカシスはそう告げて

特に説明もなく、通信をきってしまった。

椅子に座ってのんびりと量子デバイスの調整をしていた私は

あまりにも一方的な連絡に、何のことかわからずしばらく呆然としてしまった。


てっきりあの子の説得には一週間ぐらいはかかるかな、って思ったんだけど

私に会わせるってことは、意外と意気投合しちゃったのかしら・・・。


「システィナ様、お迎えにあがりました。」


そうこうしてると、迎えにきたリーナの声がドア越しに聞こえてくる。


「わかった、今いくわ。」


私は軽く支度をして、部屋を後にした。

リーナに案内され第三応接室といわれた所にいくと、

応接室の豪勢な椅子に座ってため息をついているカシスと、

部屋の隅の方で自分の首にナイフをあてて、小さく震えている少年が・・・ってえぇぇ!?。


「ちょっとなんなの、これ。

 カシス、私、確認したわよね。少年趣味はないかって。」


「ぶっ!

 お、おまっ!誤解だっての。

 ってか、話を聞いてから判断しろよ、まったく・・・。」


「説明・・・できるの、これ?」


いやがる少年を無理矢理って図にみえた私は・・・いや何も言うまい。


「あのな、おまえは・・・まったく・・・。

 いいか、俺にもわけがわからねーが、

 このガキはおとなしく城の中までついてきたと思ったら

 突然、システィナさんをだせ!っていいだしてな。」


「はっ?」


何でこの子が私の名前知ってるわけ・・・。

カシスの説明に、私はキョトンとするしかなかった。

当然、私はこんな子供みたことがない。


「わけわかんねーんだけど、システィナださないと

 自分の喉きって、しんでやるーっていって、だだこねちゃってさ。

 こいつ、俺に見つかるの怖くて自分の眼を切り裂いたみたいで、

 実際、今度もやりかねないなーって感じなのよ。」


そう言われて、少年の眼をみると、確かに両目に深い傷跡があり

瞳の色は一見しただけでは確かめようがない。


なるほど、私はカシスが同種を探しているというあの放送をみて

戦う決意を固められたけど、この歳だと、絶望的にもなるわね。

私もこの子と同じぐらいの歳なら、やはり同じことをしたかもしれない。


「し、システィナさんをだせ!おまえはちかよるな!」


カシスが少しでもその少年に近寄ると、少年が真っ赤になって叫び出す。


「な?この調子なんだぜ。」


カシスはやれやれ、といった感じで椅子にもどった。


「あなたの悪人面、自覚する良い機会だと思うけど?」


私はそういって少年に近づいていく。


「おま、俺のどこが・・・。はぁ・・・。」


カシスは放っておき、少年の前にいき、話しかける。


「私が、システィナよ。君とは初対面だと思ったんだけど。」


少年がナイフをぶるぶるとふるわしながら、こちらを見つめてくる。

何かの写真と見比べているようだ。


「もう大丈夫だから、少し、私と話そうか。」


少年が私をシスティナとみとめてくれたようなので、

優しく話かけてみる。


「カシス、少し席、離してくれない?」


良い機会なので、よけいな奴はおいだしておこう。


「おいおい・・・・ちぇっ・・・まぁそいつならいっか。

 俺も子守は苦手だしな・・・ったく。

 部屋の外にリーナはおいておくからな。」


そういってカシスは去っていく。

それを見送った後、リーナも部屋をでていき、扉を閉める。


「話してくれる?私を呼んでくれたわけ。」


そう問いかけると、少年はうんうん、と何度もうなずいた。

いっておくけど、私も少年趣味はないから、ね?

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