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「十章・紅眼狩り」

システィナを連れ去られた俺の手元には

いくつかの武器や食料、俺の命令に従う人形のようなものが数体与えられた。

それらを使い、村の仲間と力をあわせて、食料を奪い歩いていた連中を捕らえ従わせ、

貧しい人に食料を分け与え、荒れた田畑を耕し、街を復興させる。

そういうことを繰り返しているうちに、この周辺の

以前で言えば国1つ分にはなろうかという広大な地域が俺達の勢力圏のようなものになった。


しかし、他にもそういった力を持つ者が何人かおり

伝え聞くところによれば世界全体で20近くは似たような勢力があるという。

もちろん、それらの全ては紅眼の人間と引き替えに得たものだという。


こうまでして、あのカシス・ミリキュアールが探す紅い眼をもつ人間には

いったい何が隠されているのだろうか。


他の地域では、紅眼狩りを行う集団があるという。

眼の色をみて、赤みがかったものを拉致し、あの神を名乗る男に引き渡すというのだ。

しかも、最近では眼球を手術して紅い眼を持つ者を作り出した奴までいるという。

しかしそういった噂のある地域はその後、消息を絶つ。

神を欺く者には制裁を、ということらしい。


どちらにしろ、俺はそういう露骨な紅眼狩りには否定的だ。

だが、システィナを差し出して力を手に入れた手前、表だってそれを避難することはできない。

そんな時だった。あの知らせが入ったのは。


「フィル総帥、お耳にいれておきたいことが」


公務を終えて、私室とはいっても、公務室の隣にあるのだが。

その私室に入って俺に話しかけてきたのは、俺の参謀のソニア・ウィールズ。

1年前は俺の許嫁ってことになっていたが、ここ最近のバタバタで

そういった話はうやむやになり、今はただの参謀として俺を助けてくれている。


「公務中以外は総帥というのはやめてくれないか?

 どうにも肩がこって・・・。」


そういってわざとらしく首を左右にふる俺を、厳しい目で

ソニアはにらみつける。ちょっと冗談が通じない子なんだよな。ソニアは。


「そんなことを言っている場合ではありません!

 見つかったのです!我々の勢力圏で、紅眼のものが・・・。」


「な、なに・・・?もう一通り確認はしたはずだが・・・。

 また、保護目当てのカタリじゃないだろうな?」


俺たちの勢力圏では、紅眼狩りというのはしていない。

だが、紅い眼をもつものを探し、保護するという形をとっている。

そのため、生活が苦しいものが、まれに紅眼をかたって、保護を求めてくることがある。

単に寝不足で眼が真っ赤、っていう笑い話のような本当の話もあったぐらいだ。

その笑い話に騙されたのが目の前にいるソニアなので、また今回も、と思っていたのだが・・・。


「ち、違います!今回見つかった少年ですが、眼に傷を負っていたおかげで

 眼球が確認できずに前回の調査では対象とはなっていなかったのです。

 密偵の調査から、傷を負う前は紅い眼をしていたことがわかったそうです。」


「なるほど・・・ね。

 わかった、詳しい場所を教えてくれ。俺も至急そっちへ向かう。」


「はい、よろしくお願いします。」


もし、その少年が”本物”の紅眼であるなら。

あの男、カシス・ミリキュアールが求める秘密がつかめるかもしれない。

その秘密を手に入れることが、あいつをうち倒す唯一の可能性となる。


あの男からの援助を度々うけなくても、俺達はそれなりに力をつけてきた。

幸い、俺たちの地域にはクローン技術に精通した科学者が多く

食料をクローン製法で量産しているおかげで国力としては非常に豊かになっている。


食料は今のような時代では一種の通貨のような役割を果たすようになった。

必然、食料を多く抱えている俺達は、他の20の勢力と比べても圧倒的に豊かになっている。


そう、いくら紅い眼を持つ者をさしだしても、あの男の裁量で与えられる

”ほどほど”の武器に頼っていては、いつまでたってもあの男に一矢報いることはできない。

我々人の知恵で力をつけていかなければならない。


そのためにも、さらなる力を求めるべく、俺は報告のあった場所へと向かった。

トルトナ村よりもさらに辺境にある、人口20名程度のさびれた集落に

その少年は住んでいた。

今も光の宿らぬその眼は、システィナのものと同じ、深い・・・深い紅に染まっていた。

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