石と意志と年下のあの子と02
目を開き、銃声の聞こえた方をみると、そこには少年が立っていた。銃を構えて……。まさかとは思うが、あいつがこのバケモノを撃ったのか?
硬い身体を貫通させるほどの力を持った少年は高くジャンプすると連射した。
バキュンバキュンバキュン、と次々に撃ち、ホルトは膝をついた。
「先輩、トドメさしちゃっていいっすよ」
言い方が物凄く腹立つけれど、そんなことでグチグチ言ってる暇はない。崩れ身動きの取れないホルトの額にある印に切っ先を向けた。
ス、と今度はうまく斬れ、ホルトは消滅し男子生徒がひとり倒れていた。
「お前は一体なんなんだ」
黒髪のアシメの少年に聞くと、自己紹介を始めた。
「俺はホルトを倒す者。北村薫、ここの一年っす」
「一年?ここのって、お前高校生だったのか……」
禁句だったのか、険しい表情になる。けど無理ないだろ、身長150センチあるかないか位だし。
「あんた今、身長低いって思ったろ?」
「いいや、俺の名前は言ってなかったな……」
「早乙女迅、知ってますよ、鈴の迅。この前神社で見かけましたから」
「神社で?」
嗚呼、浜田の時か。あの場所にいたって……。
「こいつがうるさいんでね、一応行ったら終わってました」
こいつ、と言いながら銃を向けてきた。身構えると、北村はくすりと笑い銃を投げる。すると銃は武器化から具現化し、青年の姿になった。
「こいつはバク、俺の相棒っすわ」
赤い髪に金色の瞳、長髪を括ったバクというヤツは、北村にすり寄った。
「なぁ、コイツらとは殺り合わねえのかよ」
「ああ、早まって攻撃するなよ」
「お前の命令以外は聞かないから安心しろぉ」
手から剣が離れて、ミクとカナが現れた。ミクは笑う。
「久々ね、バク」
「よぉ、ミク、カナ。封印が解けたとは噂に聞いてたけんど、まさかまた契約したとはなぁ、物好きなやつらだぁ」
封印……?また?
引っかかる言葉を訪ねようとすると、北村がいった。
「先輩に、いろいろ教えておきたいことがあるんですけど」
「教えたいこと?」
「そう、先輩が死なないように、ね」
意味深に言う北村に、俺は鳥肌がたった。死、だなんて、物騒なことをいう。だけど、知りたいことは山ほどある。仕方なく俺は明日北村を家に呼ぶことに決めた。
「じゃ、今日は帰りますわ。また明日」
帰っていく北村を見送り、俺も帰宅した。
その日の放課後、俺は約束通り校門で北村を待っていた。
「あれ、迅帰んねぇの?」
「あぁ、ちょっと約束があってな」
「ふぅん、ま、いいや。俺先帰るから」
「ごめんな、じゃあ」
おぅ、と行って龍也は帰った。それと入れ替わり北村が来る。
「ども。待たせましたすみません」
「いや、待ってないから大丈夫だ」
「でしょうね、見てました」
「……」
じゃあ、さっきの謝罪はなんだよ。なんて、言葉は飲み込み、気になることを先に聞いてみた。
「シャカシャカ音が漏れてるぞ。ヘッドホンくらい外せよ」
「あー、そうっすね」
赤い色したヘッドホンを外し首にかける。携帯を取り出し操作すると音がやんだ。ヘッドホンにコードはない。携帯と連動するタイプのようだった。
「これ、実はバクなんです」
「バク?昨日の……」
「そう、具現化する前の。ね」
俺で言う鈴みたいなものか。話ながら歩いていれば、すぐに家が見えた。ここが家だ、そう言うと北村は少し驚いているようだった。
「先輩の家、病院なんすか」「まぁ、小さいけどな。悪いけど今日は一応休みだから家に人がいる。部屋に行くから関係ないとは思うが」
ただいま、と入れば、忍が顔を出した。
「早かったな、て、お前なぁ」
俺たちをみると盛大にため息をついた。なんなんだよ、失礼だな。と思っていれば、もっと失礼なことを言い始めた。
「人を呼ぶっつぅから、また龍也かって聞けば違うっていう。しかも年下なんていうからてっきり俺は……」
今朝の会話を思い出すと、確かにそんなことを話した記憶はあるけど。忍はずれた家用のメガネを直すと、咳払いをした。
「まぁいい。もしかしてと思った俺が馬鹿だった。おい、名前は?」
「あ、お邪魔します。迅先輩の後輩にあたる北村薫です」
「薫な。ま、ゆっくりしてげよ」
そう言うと忍は自室に戻った。俺が首をひねっていれば、北村が吹き出す。
「何笑ってんだよ」
「だ、だって先輩鈍いから」
「はぁ?忍がおかしいんだろ」
「意味わかってないの、先輩くらいですよ。忍さんは先輩が彼女連れて来るんじゃないかって思ってたんでしょうね」
部屋までの階段を上りながら会話する。そう言うことだったのか……、なんて考えながら部屋に入ると、北村を座らせ俺は飲み物を取りに行った。するとそこにはもう飲み物とケーキまで準備されてて、俺は笑ってしまった。忍にも可愛いところあるんだな。