1章②
「バンくん!」
「あぁ!はあぁッ!」
「―――!」
オーリーさんが大きな盾でイノシシ型の魔物、ワイルドボアの突進を受け止め、側面から俺が首目掛けて剣を思い切り振り下ろす。どうやって扱えばいいかは、チートによってある程度頭と身体に入っていた。だから一撃のもとに、俺の腰ほどはある体高と鋭い牙、強靭な体毛を持つ魔物の頭と胴体は真っ二つに分かれた。
「ふ~っ……」
少し手が痺れている。一気に興奮した心を、深呼吸でなんとか落ち着かせていく。剣から伝わってきた命を奪う感触にはまだ慣れないものの、それでも最初と比べればかなり動けるようになってきていた。恐怖心や過度の緊張は薄れつつあり、全身は適度な柔らかさをなんとか維持している。
俺たちはパーティを組んだ直後、さっそく王都の外へと出た。一定数城壁沿いの魔物を倒すという、討伐依頼の中で最も簡単らしいものはこれでちょうど終わりだ。
「ふ~っ。よし。ナイスだよバンくん。だいぶ慣れてきたね」
「うん、そうですね。かなり分かってきたかも。でも、それもこれもオーリーさんのおかげですよ。オーリーさんがしっかり壁役してくれるので」
「いやいや。キミも謙遜することはないよ。ワイルドボアを一撃って、やっぱり結構すごいことだからね」
「ありがとうございます。へへ」
ん~彼に声掛けて貰えると落ち着くな。あと余裕が出るからか、褒められればのんきに照れ笑いだってしてしまう。
でもだってオーリーさんはすごい。これまで出た何種類かの魔物の攻撃を、壁役として全て臆することなく受け止めたのだ。女神様から「結構強い」って言われてた魔物の攻撃をだよ?どころか、その状態で俺に指示だって出してくれさえした。強すぎない?本当に初心者ですか?しかも、多分意図して経験を積ませようとしてくれてるっぽい。実際彼が剣を振るう所も見たが、あれなら今まで戦った魔物全て、一人でなんとかできただろう。
「二人ともお疲れ様!怪我無い?」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう」
「バンくんは?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ん!お疲れ様!」
「お疲れ様です」
そして、今回は後方で不測の事態に備え待機していた二人も二人で、これまでの戦闘からめちゃくちゃ強いことが分かっていた。
まずテトラさん。長い杖を持ち見るからに魔法使いっぽいローブを着た彼女はそのまま魔法による攻撃役だが、火力が凄い。あと精度もらしい。さっきの俺と同じような状況で魔物に遠距離から火炎魔法を打ち込み、見事命中。そのままこちらも一撃で葬り去りました。ちなみに地面が焦げてた。それがどれほどのものなのかは分からないけど、戦闘経験が結構あるっぽいオーリーさんから褒められてたところを見るにかなりすごいことなんだろう。
ベアトリクスさんもそうだ。回復魔法の効力が相当に高く、小さな傷は一瞬で塞がる。あとなんか疲れも癒された。なので毎回全力で戦ってもあんまり消耗してかない。元々は何度か休憩しつつ依頼を進める予定だったけど、彼女のおかげでそれも必要無かった。あ、あと回復魔法使ってくれる時ちょっと距離が近いです。ボディタッチもされます。それに良い匂いがします。好きになっちゃいます。正直戦闘を終えて4人で集まった今もちょっとドキドキしてしまっていますね。えぇ。はい。
「それじゃバンくん、『収納』お願い。終わったら帰ろうか」
「はい~……っと」
あ、ちなみにチートなんですが、便利そうな能力も一通り取っておいてみました。やっぱりこちらも驚かれたけど、本当に快適。
「うん。ありがとう。いや~助かるね~。これなら、報酬も結構期待できるんじゃないかな」
「役に立てれて嬉しいです」
「いやいや!そんな謙遜しなくていいよバンくん!収納魔法ってすっごいからもっと誇って誇って!」
「あ、ありがとうございますっ……」
あ、ベアトリクスさんから褒められた。えへへ。
ってそうじゃなくて、もしかしてこのパーティ、やたら強くないですか?普通は初戦だしもうちょっと苦戦するものじゃない?いや、この世界の普通が分からないけどさ、あまりにあっけなさすぎる。正直ちょっと拍子抜けしています。だからといって油断はしないように、と気を引き締めるけど、だとしても強すぎる。
だって、俺チート持ちですよ?まだまだ発展途中とはいえ最初に結構KP貰ったし、初心者らしからぬ強さぐらいは得てるっぽいですよ?なのにみんな俺と同じか、多分それ以上に強いって、おかしくない?う~ん。気になる。あ、そうだ。今度女神様に色々聞いてみようかな。俺は、あまりにもこの世界についていろんなことを知らなすぎるよね。うん。そうしよう。
そう考えていたのも束の間。俺たちのパーティ白銀の鷲獅子(鷲獅子というのはグリフォンのことで、それを名づけの時にオーリーさんがどうしても入れたがった。確かにかっこいいよね、グリフォン)はどんどんと冒険者ランクを上げていった。2週間もする頃には一番下のFから3つも駆け上がり、気づけばCランクとなっていた。結構目まぐるしかったけど、充実してたな。充実しすぎて女神様のとこに行くのは忘れてたけど。でも、割とその間で世界の一般常識は知れた。やっぱり生活すると分かってくもんだね。
というところで、せっかくCランクになったし、それに伴って結構な稼ぎも得られたので、記念として飲み会することになったのでした。そうだったそうだった。




