2章⑩
今度こそいける!絶対いける!前回の布陣に引き続き、チート能力一覧を見ながら色々考えていたところ思いつきました。状態異常耐性です。彼女サキュバスだしアレ、絶対状態異常の類だろ。なので出来る限りそちらへ振ってまたベアさんとの特訓に臨んでおります。ちなみに今回は回復魔法について。……たぶんボディタッチ多いけど頑張ろう。
「っていうかバンくんって、人に回復魔法使った事はある?」
「え?……いや、無いかも、です」
「そっか。じゃあやり方から教えるね」
「はい。よろしくお願いします」
というわけで俺たちは家の中で椅子に座り向き合っていた。膝が当たるぐらいの距離だ。もうだいぶこれぐらいの近さには慣れてきたけど、まだ少しだけ緊張する。日頃から粘膜が擦れるぐらい近づいてるのにね。
「基本は自分に回復魔法使うのと同じね。自分の中のマナを操作して、癒しの力に変えるだけ。ここまではもうできるよね」
「はい。大丈夫です」
「だよね。でも難しいのはこっからだよ~?」
あと、やっぱりこうして落ち着いた状態で改めて見ると彼女は美人だ。鼻は小さくて高いし彫りは深いし目も大きい。あと顔ちっちゃい。本性はえっち大魔神だけど、薄い唇と穏やかそうな垂れ目からどことなく清廉な雰囲気もある。
……いや、なんで俺この人とそういう事できてるんだ?なし崩し的にもう何度も繰り返してるけど結局聞いてないな。意味分かんなくてもっと緊張してきた。
「ま、とりあえず実際にやってみよっか。目閉じて?」
「はい」
「それで、今から私が手を通じてバンくんにマナを流すから、がんばってそれを感じてみること。おっけ~?」
「了解です。っ……。ベアさん、つ、繋ぎ方が……」
言われた通り目を閉じると手を持たれ、そして恋人繋ぎされる。ゆ、指と指の間に柔らかな女の子の手の感触がッ……!なんか普通にドキドキする!え!?これ意味あるんですか!?もしかしてからかってます!?見えないのをいいことに実は笑ってたりする!?
「これが一番分かりやすいの。言っとくけどマジだからね?ほら、集中集中」
「は、はいっ」
しかし続く声は至って真面目だった。いやまぁ彼女の事だから多少は笑ってるのかもしれないけど。とはいえ特訓中なのだから冷静さを取り戻すように努める。そうだ。深呼吸しよう。おっ。これ結構効果あるかも。今後性欲に流されそうな時も使ってみようかな。良いこと知れた。
「……お?」
「お。分かった?あたしのマナ」
「はい。なんとなく、ですけど」
落ち着きを取り戻してくると、何やら繋ぐ手からうっすら感じ取れるものがある。どうやらこれがベアさんのマナらしいな。……ってなんかちょっといやらしくないですか?
というのは置いといて、同時に分かってくるものもある。自分と彼女を隔てる壁のようなものだ。たぶんだけどお互いのそれらが溶け合うことによって、ようやくマナがこちらへやってきているらしい。え、てことはベアさんのボディタッチって意味があったんですか?……そっか。別に俺に触りたいとかじゃなかったのね。ま、まぁいいよ?いいけどね?
「あとあたしたちにはそれぞれ壁があるのも分かるかな?」
「はい」
「これはそのままマナの壁って言ってね?自分と世界、自分と他人を区切るモノなの。これがあるから、基本的に人は人の内側に魔法をかけられない。魔法が使える人は精神操作の魔法とかを弾きやすいのってこれが理由だね。……って、これぐらい魔法使えるなら知ってるか」
「……えぇ」
この話、初耳です。回復魔法のスキルを取った時貰えたのは使い方の知識だけで、そういうのは貰えてなかった。ってかへぇ~。そんな原理なんすね。え、面白いな。それに、どことなくあの女神様の世界っぽい法則な気もする。壁があるとことか、俺を尊重してくれた彼女っぽい。というか知らないだけでこういう面白い事もっとありそうだ。ふ~ん今度調べてみよ~っと。
「そして、これがあるから人に魔法をかける時は互いの壁を中和しなくちゃいけないの。こうやって触れ合うのはそのためだね」
「なるほど」
「まぁでも、あたしくらいになれば人に触らなくても大丈夫だけど」
「えっ!?」
えっ!?あ、え、あ、ふ、ふ~ん!?じゃ、じゃあ?俺にやたら触ってきてたのは?やっぱり?そもそもボディタッチするのが目的だったってわけ?へ、へぇ~っ。そ、そうなんすねぇ~っ。ほぉ~っ。へへっ。あ、意識乱してすいませんねハハ。ちゃんと集中しますよ~っと。へへっ。ふ、ふぅ~ん。そ、そっかぁっ。
「あと他にも、練習しないと世界のマナを変化させる、つまり世界のマナで魔法を使うこともできない。……って、んふ。ど~したの~バンく~ん?」
「い、いやっ。な、なんでもないですっ」
身体が固くなっていると気づかれてしまう。イジりスイッチが入ったっぽい。まずい。なんか今攻められたら耐えられない気がする!
「ほんとぉ~?」
「は、はひっ!?」
ウワッ!思わず変な声を出したせいでもっとイジりスイッチが入っちゃった!手の甲をすりすりされております。しかもなんかどんどんねっとりした感じになっていく。つーっと上ってきて、指までなぞられる。
しかも脚まで絡めてきた!?さらに爪先で脛をなぞっても!?くぅっ。しかも目を瞑ってるから衣擦れの音までやけに聞こえてくる。彼女が服を脱いでいく想像が脳裏に浮かんじゃう。いや、手も足も使ってるからそんなことあるわけないんだけど、頭の中であのチュニックが少しずつずり上がっていく。ほっそりしたくびれと縦長のおへそが段々見えてくる、ってマズい!マズいマズい!
「な~んて。それじゃ、続けよっか」
「へ、あ、え、あ、は、はい」
「ん~?もしかしてこのままえっちしたかった?」
「なっ!?は、はい、あ、はいじゃないです!続けましょう!」
「あは。じゃ、ちゃんと聞いてね?えっちなこと考えたりせずに」
「はいっ!」
あ、あぶね~……。なんとか凌いだ。というかベアさんが飽きてくれた。正直ギリギリでした。本当に危なかった。もう少しで押し切られるところだったわ。
……ん?っていうか、あれ?なんか今日の俺弱くない?前回は一時間ぐらい耐えれたよな?なのに今日はまだ10分と経ってない気がする。しかも、状態異常耐性が増えてるはずなのにだよ?
「バンくん?集中してる?」
「あ、大丈夫ですっ!もう一回お願いします!」
いや、とりあえず考えるのは後だ。せっかく難を逃れたわけだし、今は特訓に集中しよう。ラッキーを逃すな!俺!
「じゃ、今度はマナの壁の中和からやろっか。先に私がやるから、その感覚を意識しながら真似してみて?ちなみに、原理としては互いのマナを同調させるって感じね」
「分かりました」
よし。よし。集中戻ってきた。お。よしよし。マナの壁が溶け合っていくのも分かるぞ。うん。確かに同調させるって感じみたいだな。ベアさんと俺の波長?みたいなものが次第に合って、やがてほぼ完全に同じになってるっぽい。
「……」
あ、一回また壁ができた。じゃあやってみよう。相手のマナを感じて、そこに向かって自分を合わせていく……。相手を理解して、自分を理解して……。
「いいよ……。そのまま……」
なんだか呼吸が合っていく。彼女の身体の動きが手に取るように伝わってくる。あとなんかやけにベアさんの存在を近く感じる。ちょっと落ち着くな。温かいかも。
「じゃ、もう一回私からマナを送るから、その時の感覚を意識しながら送り返してみて?あ~あと、最初からたくさん送らないようにね。マナ酔いしちゃったりするから」
「はい……」
そんな存在の一端が俺へと優しく流れ込む。やっぱりやたらに温かい。回復魔法をかけてもらった時疲れも癒されるのってこのおかげなのかな。なんて考えつつ同じ要領で送られてきたものを送り返していく。壁があった場所をマナが越えていく。
「ん……。ふあ……」
すると、ちょっと艶めかしい声が聞こえてくる。
「へ?」
ちゅ、中断!一旦止めます!ゆっくり壁戻して、互いのマナが流れ込まないようにして、目を開ける!
「あ、ご、ごめん。ちょっとなんかえっちする時みたいで興奮しちゃった……。えへへ。普段あんまり人に回復魔法かけられないからさ。それになんだかバンくんの、熱くて……」
「へぁぇ?」
そこに居たのは、照れ笑いを浮かべるベアさんだった。照れてる。あのえっち大魔神のベアさんが照れてる。ちょっと顔を背けつつ上目遣いして、頬を赤らめてる。どことなく瞳を潤ませながら。
あの、終わりました。ダメです。耐えられませんでした。ちょっと可愛すぎます。あとエロすぎます。本当にすいません。でもアカンでした。
「ん?ふふ。ダメだよバンくん。今は特訓中なんだから」
「う……」
「まぁでも、ちゃんと基礎はできたもんね。ご褒美としてシよっか?っていうかあたしもその気になっちゃった」
「ッ……」
幸い、彼女もどうやらスイッチが入ったようだった。良かった~俺だけがそうなったわけじゃなくて。でも本当にすいません。せっかく教えてくれてるのに。あんな優しく基礎から学ばせてくれたのに。生徒失格だ俺。最悪。ただもう無理でございます。
っていうか性欲ってどうやって制御すればいいんだ。ムズすぎる。相手がサキュバスとはいえこんなに抗えないもんか?う~ん……。分かんない。分かんないよぉ。だれかたすけて……。こんなことなら、去勢しちゃったり……ってこっわ。い、いや流石にナシだよね。うん。そ、そうだよね……。それは最後の手段として、他にも色々考えてみよう。でも、どうすれば?




