2章⑨
前回の失敗を鑑みて、僕はさらなる対策を施しましたよえぇ。次は負けません。ちなみに性欲耐性薬はスイッチ入っちゃった後も結構効いてて、あの日は回数少な目になりました。というわけで効果アリと判断し、次のレベルである性欲耐性薬・上を用意しています!これなら大丈夫でしょう!
「よ~し。それじゃ、どこからでも打ってきていいよ~」
「はいっ!行きますっ!」
ちなみに今回は自宅裏手の庭にて剣術を教えてもらうことになりました。……あれ?ていうか剣術?そういえば俺、なんで回復役のベアさんに剣術を教えてもらってるんだっけ?
でも何故か彼女は剣もめちゃくちゃ上手い。俺だってチートによって基礎が身体的にも理論としても多少身についているのに、毎回めちゃくちゃ軽くいなされてしまうほどだ。今も全身に無駄な力が入っていないのが分かる。余裕そうにくるくると木剣を回してさえいる。
理由を聞いてみてもやっぱり回復役が暇だから何かできないかと思って、の一点張りだったけどにしては上手すぎる。相当しっかりやってるでしょこれ。なので一度しっかりめに問い詰めたんだけど、「あたしに勝てたら教えてあげる」って言われました。やっぱりなんか理由あるんじゃん!でも、それを聞けるまでは相当かかりそうです。
「はぁっ!」
ていうか集中集中!既に薬は飲んでいるので、例に漏れず胸元が空いたチュニック姿の彼女を見ても一応落ち着いていられる。呼吸を整え、まずは上段から振り下ろす。滑るように受け流されるが織り込み済みだ。すぐ体勢を立て直して今度は受ける。力のかけ方がいいからか、細腕から繰り出される攻撃は想像よりずっと重たい。なのに力んでいないからか連続して襲い来る。なんとか隙を作ろうと防御に集中すあっ胸ぷるんって――
「ほらっ」
「あでっ」
「も~。また雑になってるよ?」
「すいません……」
一瞬目を逸らしたところ腕へ一撃入れられてしまった。く~。やっぱり強い。ちょっとでも隙を見せるとこれだよ。まぁ、隙を作っちゃう俺も俺なんだけどね。っていうか、性欲を抑えていても胸揺れに抗えないの情けなすぎないか、俺。いやでも生物の本能として揺れるものって気になっちゃうから……。
なんて自分を慰めつつも、とはいえ薬の効能は確かに前回よりかなり良かった。まだ耐えられてる。一応前回の敗北から決意を新たにしてたりもするので、そのおかげかもしれないんだけど。でもでもより特訓に集中できるのは確かだ。
「むふっ。集中できないなら一回スッキリしとく?」
「いや大丈夫です。もう一回お願いします」
その証拠に、彼女の胸元が引き下げられ谷間を見せつけられても淀みなく答えられる。髪をポニーテールにしたことで露わとなっているほっそりした首筋からはっきり出っ張った鎖骨、からの互いに押し合って潰れる見るからに柔らかそうな胸。それらを一応は単なる女体だと捉えられる。えっちだなぁと思うけどそれだけだ。
うん。なんかいいぞ、今の俺。薬に頼ってるというのがやっぱり情けなくも感じるけど、とはいえ結果は結果だ。なるべく早く強くならなきゃだし、そのためならどれだけ情けなくても良いだろ!お!なんか良いこと言った!よ~しやるぞ!その意気だ恋ヶ崎伴!
「お。いいよ~。打って来なさい少年」
「少年って……同い年で、しょっ!」
「おっと」
「いてっ」
「今度は力みすぎだよ?余計な力が入ってるとこうなるからね」
「はい……」
ちなみに、その勢いのまま打ち込んだら即いなされて今度は頭に打ち込まれました。一筋縄じゃ行かないね全く。でも諦めないから!
「ふーっ。はっ、はっ、はぁっ」
「お。もう終わりかな~バンくん?」
「い、いやっ……。ちょ、ちょっと休憩っ……」
それからしばらく練習して、気づけば1時間ぐらい経ってるっぽかった。ずっと打ち合ってたからかめちゃくちゃ疲れてる。チートで身体が強化されてるし依頼も繰り返してるしで戦う事には慣れてるはずなのに、びっくりするぐらい重たい。手も剣を握りすぎて痛いです。あと全身汗でべとべとだ。春の日差しがちょっと暑い。そよ風は涼しいけど。あと、背中で感じる庭の地面がひんやりしてて気持ちいいね。
……え、なんか「充実した青春」感すごいな。楽しいかも。確かにしんどいけど、もうちょっとだけ続けようかな。で、でも流石にちょっと休むか?
「ダメ。まだやるなら立って。ほら」
「へ?そ、そんなぁっ……」
「魔物と戦う時もそんな風にバテてるつもり?ほら、早くしないともう特訓見てあげないよ~?」
「わ、わかった!やります!やるからっ!」
しかしベアさんはそんなこと許してくれませんでした。えぇっ?お、鬼……。伸ばしてきた手を強制的にとらされる。まぁでも確かにそうだ。あと、今なら何か掴めそうな気もする。よし!あとちょっとでもいいからやるぞやるぞやる――
「ッ……」
「ん?ん~。ね。どうしたのかな~バンくん?」
そうして助けを借りて立ち上がり、こぶし一つ分くらいのところまで彼女が迫った時、香ってくるのはやけに甘ったるい匂いだった。これ、まずい。なんか普段より濃くてすごいです。
さらに、今までかなり集中してたせいか気づかなかったけどベアさんは汗をかいていた。つまりどことなく髪が乱れ、肌も上気したように赤らんでいた。無理矢理記憶から引きずり出されてくるのは、そういうことをしている時の姿だ。
「い、いや、な、なんでも……」
「むふ~っ。なんかね、あたしたちの汗ってそういう感じのやつなんだってさ」
「そういうかんじ……?」
「そ。よーするにぃ……」
首に腕が回される。互いの身体が密着する。柔らかいものが当たる。どうやら彼女もその気になったらしい。跳ね除けられない。もういいかと思っちゃってる自分が居る。うぅぅ……。最悪だ。せっかくやるって決めたとこなのに。情けない。情けねぇよ俺ぇ……。
「フェロモンとか、媚薬ってこと」
「あっちょっまっ――」
その後成す術無く家の中へ連れ込まれたのは言うまでも無いですね。はい。あとベアさん、運動して昂っていたからかすごかったです。はい。でも!次こそは負けないから!!!……今後剣術を教えてもらう頻度増やそうかな。




