2章②
というわけで今回は、ここ王都エクエスで最も信仰されている宗教二つのうちの片方、女神教の総本山であるエクエス大聖堂へとやってまいりました。まずは見てくださいこの外観!いくつも並ぶ尖塔が威厳を、丸みを帯び桜色に塗られた屋根が女神の愛を感じさせます!それでは、さっそく中へと入っていきましょう!……女神様に色々と聞くためにね!
あの後、しばらく放心し続けていた俺はふと思い出してKPがどうなっているか見てみました。あんなことがあったからね。ちなみに、「ステータスオープン」と念じると手元にゲームっぽいウィンドウが出るようになっていますってあっ、念じたから出ちゃった。閉じて閉じて。
で、確認してみたんですが、なんとあんまりKPが増えていません。具体的には、最初に転生記念として貰ったのが100。昨日までの2週間で、人間関係についてほんのり慣れたからか貰えていたのが20。そして今は140です。そう。なんと20しか増えていません。えっちしたのに!いわゆるセフレができたのに!ってまぁ考えてみると女神様ウケはあんまりよくなさそうだけどさ。でも怒涛だったのでもうちょっと増えていいじゃん?なので色々この世界の事を聞くついでとして早速異議申し立てに来ました。
ちなみに、ポイントはスキルや身体能力を強くすればするほど必要な量が多くなっていくタイプです。なので20だとまぁ、新しい軽めのモノは取れるけど、剣術やら身体能力やらは強化できないね。あ、ここも異議申し立てしようかな。バランスちょっと渋くね?って!いつでも振り直しできるのはありがたいけどさ。
「女神様のご加護を」
「あ、ありがとうございます」
考えているうちに気付けば大聖堂の中へと入っていました。外から見た通り中はだいぶ広い。それに、外観に負けず劣らず荘厳だ。太い柱が結構な高さまで力強く伸び、滑らかな曲面の天井を支えている。これ建てるのめちゃくちゃ大変だっただろうなぁ。女神様の威厳を感じます。あ、ここで信仰されている女神様っていうのはちゃんとあの女神様のことらしいです。一番奥に肖像画があります。……俺が見た時より結構大人っぽい姿だけど。
それにしても、平日の昼間なのにかなりの人だ。もしかするとお昼休憩の間を縫って祈りに来たりしてるのかな。だとしたらやっぱりあの女神様、めちゃくちゃ信仰されてるんだなぁ。とはいえそれも結構頷ける。だって亜人がこの世界にたくさんいるのは、他でもない彼女のおかげらしいから。
「安産の加護」と呼ばれているらしい。「親友の加護」といい「普通の顔の加護」といい、やっぱり直接的なネーミングだ……。んでその加護の効果は、違う人種間でも望めば子供を作れるし、その出産が必ず成功するというものなのだそうだ。しかも、母子共に健康で。あとは同性でも何かしらの力で子供ができるとかなんとか。
実際、周囲を見回すと2人に1人、ことによると3人に2人ぐらいの割合で、何かしらの特徴を持った人が目に入る。というかベアトリクスさんみたいな例もあるし、純人間はもっと少ないだろう。あと種類も多い。どうやら生まれてくる子供は両親の種族を掛け合わせた姿、あるいはどちらかの姿になるようで、肌の色だけでも違いは相当数に及ぶ。なんか、愛の女神が作った世界らしい光景だ。
「よし」
それじゃ色々考えるのはここらへんにして、そしたらそろそろ件の女神様へと会いに行くか。って、どうすればいいんだろう?理性さんは念じればいいって言ってたけど……。とりあえず座るか。で、女神様女神様女神様女神様――。
「そんなに名前呼ばれると照れちゃうなぁ~」
「へっ?うわっ!?」
声が聞こえて目を開けたら、そこには転生した時と同じ光景が広がっていた。目の前に金髪美少女が居て、その後方に女神恋愛評議会の円卓があるのもそのままだ。なんだか懐かしいな、2週間ぶりぐらいなのに。あ、なんか聖堂のと同じ椅子に座ってる。
「あ、びっくりさせちゃった?ごめんね、良い感じのやり方が分かんなくて」
「あ、いえ、大丈夫です。……というか、お久しぶり、です?」
「うん。久しぶり~。ま、私にとっては一瞬だったんだけどね」
う~んなんか落ち着くな。ここ。これも女神様パワーかな?あと少しの間普通の世界で生活したからか、今度は女神様の上位存在な感じがより印象に残る。やっぱこの神、俺らと違う次元で生きてるんだなぁ。
「ところで、見てたよぉバンくん。あ、もちろんそういうことしてる時は見てないけどね?」
「へっ」
「あ、ホントだよ?」
とはいえやっぱり俗っぽいな。う。転生する時、かなり見られるだろうチートを選んだ手前アレだけど、今更になって恥ずかしくなってきたぞ。俺の人生、この俗っぽい女神にこれからずっと見られるのか。なんかプライベート機能とか付けてもらおうかな。じゃなきゃ今見られてるかもっていう心配でそわそわしちゃうよ。
「……というか、それにしてもすごいじゃん。転生してから2週間でたくさん人と関わったね。どうだった?」
でも、第一声の称賛を聞くとまぁ別にいいかという気もしてくる。え?あ?そ、そっすか?へへ。照れますねなんか。そうですよ。結構がんばりましたよ、俺、女神様。
「楽しかったです。思ってたよりもずっと」
「ホント!?良かったぁ~っ。いや~正直心配だったんだよね。まぁ私の愛する世界を楽しんでもらえないとは思ってなかったけどさ、まぁバンくんて異世界の人じゃん?だから流石にキツくなっちゃうんじゃとか思っちゃったりしてたよ。いや~良かった良かった」
「あと、オーリーと出会わせてくれてありがとうございます」
「おっ。彼、いい子でしょ?いっぱい頼ると良いよ。あと、彼から頼られる人になったらもっと褒めてあげちゃおうね」
「頑張ります」
これは本心だ。この後言う事が言う事だからお世辞を言っているわけではない。実際、転生してからは結構充実していた気がする。パーティメンバーたちから信頼され、前衛としての仕事を任され、それに応える。上手くいけば褒めてもらえる。上手くいかなくても否定されたりしない。それどころか心配してもらえたりする。それが嬉しかった。だから、もっと頑張りたくなった。
実を言うと、KPがもっと欲しいのは彼ら彼女らのためにより強くなりたいからでもある。そもそもちょっと不服なのももちろんあるけどね。というわけで言うぞ言うぞ言うぞ。
「それで、何かあったかな、バンくん?あ、まぁ何かないとここに来ちゃダメってわけじゃないけどね」
「はい。……えっと、色々聞きに来ました」
「うん。なんでも聞いてくれたまえ」
「それじゃあ、な、なんで昨夜から今朝のアレの後で、KPがあんまり増えてないんですか?」
う。なんかちょっと責めるみたいでビビっちゃうな。これで逆上されたら怖い。大人しくしてるのが最善だと前世では思ってたから、そういえばこうやって自己主張することってあんま無かったな。結構勇気いるねこれ。緊張してきた。
「お、来たね~その質問。来ると思ってたよ」
「あ、そ、そうですか」
お?でも女神様の反応は柔らかい。にやっとした笑顔でこっちを見てくる。なんか楽しそうだ。気分を損ねてないみたいで良かった。……って、転生する時あれだけのことをしてくれたのに怖がりすぎか?
「じゃあさ、バンくんってベアトリクスちゃんの事、好き?」




