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第39話 守護獣が命を賭けて戦った


「いつまで続くの……」


ターニャが振り返る。

夜の森を、魔車が全速で駆けていた。

雷鳴。

竜の咆哮。

炎が夜空を染める。


アリソンは空を見上げていた。


「白鹿の力が落ちてきてる」


ターニャが空を見た。

確かに白鹿の角の光は先ほどより弱い。

ルナシールドが静かに言った。


「守護獣の力も……無限ではありません」


ミレイアが舵を切る。


「なら助けに行くよ」


グラムベルクが言う。


「俺たちにできることあるのか?」


アリソンは決断する。


「わからない。だけど何もせずにはいられない」


魔車がさらに加速した。

白鹿の戦場へ向かって突き進む。


その頃。

別の場所でも森へ向かう隊列があった。

帝国軍のゴーレム部隊。

巨大な石の兵士たちが重い足音を響かせながら森を進んでいる。

その先頭に立つのはカリウスだった。

副官が言う。


「殿下はまだ赤竜にしがみついています」


カリウスは望遠鏡を覗いた。


「間に合うかどうかだ」


副官が尋ねる。


「守護獣は敵ですか?」


カリウスは少し考えた。

そして答える。


「今は違う」


ゴーレム隊は森の奥へ進み続けていた。


さらにその奥。

森の木々の間を静かに進む一団があった。

エルフたちだった。

先頭を歩くのは長身の男。

ルナシールドの父、エルダリオン。

その背後には数名のエルフの戦士。

隣のエルフが言った。


「間に合うでしょうか」


エルダリオンは静かに答える。


「分からぬ」


そして低く続けた。


「だが我らは行く」


エルフの一団もまた、戦場へ向かっていた。


夜の空で竜と白鹿の戦いは今なお続いていた。

白鹿が跳ぶ。

角が竜の腹を裂く。


しかし――

着地した瞬間、その動きが一瞬遅れた。

ターニャが息を呑む。


「……弱ってる」


アリソンは目を細めた。

白鹿の角。

その光がさらに弱くなっている。


「角の力が落ちてる」


ミレイアが叫ぶ。


「まだ一頭いる!」


最後の赤竜だった。


その背に――

まだイリスは竜の首にしがみついている。

竜が空中で身体をひねり尾を振り回す。

その尾がついにイリスの身体を打ち据える。

衝撃。

彼女の身体が宙に投げ出された。

その瞬間。

表情が歪む。


「くっ……!」


まだ戦える。

それなのに。

身体が空中へ投げ出される。


「まだ……!」


落ちながらも槍を握ろうとする。

だが指が届かない。


ターニャが叫ぶ。


「落ちたわ!」


イリスは空中を回転しながら落ちていく。

その下には白鹿。


だが同時に――

赤竜が口を開いた。

巨大な火炎が集まる。

アリソンの顔色が変わった。


「避けてくれ…」


赤竜が炎を吐く。


 ーーゴアァー!


森を焼き尽くすほどの巨大な火炎だった。

その炎の軌道に――

落ちていくイリス。


白鹿が動いた。

地面を蹴る。

白い身体が空へ跳び上がる。


その瞳が、一瞬だけ落ちていくイリスを捉えた。

敵意ではない。

ただ燃え尽きようとしている命として。

――選んだ。


次の瞬間。

イリスの身体が白鹿の胸の中へ吸い込まれた。

ターニャが叫ぶ。


「えっ!?」


白鹿はイリスを体内に取り込んだ。

そしてそのまま火炎の中へ突っ込む。

炎が白鹿の身体を包む。

毛皮が焼ける。

白い身体が炎に飲み込まれる。


だが白鹿は止まらない。

一直線に赤竜へ向かう。

アリソンが叫んだ。


「やめろ!」

「それ以上、壊すな!!」


白鹿の角が鮮烈に輝く。

風と雷。

最後の力。


白鹿は炎を突き抜ける。

そして――

白鹿の角が――

まっすぐに赤竜の口へ突き刺さった。


一瞬、すべての音が消えた。


次の瞬間、雷が内部で爆発する。

赤竜の身体が大きく震えた。

そして白鹿と竜はともに地面へ落ちていった。


 ーードゴーーン!


森が揺れる。

ほど遠い場所のゴーレム部隊も足を止める。

カリウスが空を見上げる。


「……間に合わなかったか」

(守護獣はまた…… 均衡を取り戻したのか)


アリソン一行の魔車の上でも誰も声を出せなかった。

やがて煙が晴れる。


そこには――

横たわる赤竜の巨体。

その前に美しく焼けただれた白鹿が立っていた。


白鹿はゆっくりと頭を上げる。

その角。

枝のように広がっていた二本の角が――

音を立てて折れた。

白い破片が地面に落ちる。


次の瞬間。

折れた角が光り始めた。

まるで意志を持って生まれ変わるように。

――役目を変えるように。


風。

雷。


二つの力が交わる。

そしてその形が変わる。

枝のような角ではない。

二股の槍。

白鹿の前に静かに突き立っていた。


森の夜は深く静まり返っていた。

その静けさは戦いの終わりではない。


それは、何かの始まりだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


活動報告にキャラクター紹介をまとめていますので、

登場人物の整理などに使っていただければ嬉しいです。


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