第18話 魔法で通話してみたら世界初だった
リーデン村の臨時指揮所。
村長の家を借りた建物の中央に地図が広げられていた。
王国軍の将校 ゲオルク・シュトラール。
ターニャの父でもある男が腕を組んで立っている。
「もう一度整理する」
低い声が部屋に響いた。
「西の大森林南端に魔族の施設」
「魔砂を用いた魔力吸収装置」
「そしてそれを破壊したのが君たちだ」
アリソンは頷いた。
「はい」
グラムベルクが腕を組む。
「森中の魔力を吸い上げてやがった」
ミレイアが続ける。
「放置していたら森そのものが崩壊していた可能性があります」
「王都にはすぐ報告する」
ゲオルクは地図の上に指を置いた。
「だがそれだけでは足りない」
ルナシールドを見る。
「エルフの森にも知らせる必要がある」
ルナシールドが頷いた。
「長老たちも状況を知るべきです」
グラムベルクが言う。
「ドワーフにもな」
将校は少し考えてから言った。
「つまり」
「それぞれの勢力に報告だ」
ターニャが言う。
「じゃあここで分かれるの?」
「そうなる」
将校は地図の二点を指した。
王都。そして西の大森林。
「王都への報告は我々が行う」
「エルフの里にはルナシールドが戻る」
ルナシールドは静かに答えた。
「承知しました」
その時だった。
アリソンが口を開いた。
「問題があります」
全員が見る。
「連絡手段です」
彼は地図の距離を指した。
「王都」
「エルフの森」
「往復するだけで何日もかかる」
グラムベルクが頷く。
「確かにな」
ミレイアが言う。
「精霊通信は?」
ルナシールドが首を振る。
「エルフ固有の感覚の共有です」
「ただ……」
ルナシールドが思い出すように言った。
「エルフの里には古代魔道具があります」
「守護獣の目」
「守護獣が見た景色を鏡に映す道具です」
アリソンの目が光った。
「映像投影……」
彼はとっさに机の紙に絵を描き始める。
グラムベルクが覗き込む。
「おい」
「何を書いてる」
アリソンは答えた。
「離れた場所で意思疎通するには」
ターニャが言う。
「どうやって?」
アリソンは続ける。
「魔法陣で映像と音を魔力信号に変える」
「風と光の属性を利用するんだ」
「それをグラムの精霊通信具でその鏡に送れないかな」
グラムベルクが頷く。
「精霊を媒介にするのか」
アリソンの声が高まる。
「音と映像」
「両方送れば」
グラムベルクが目を細める。
「会話ができるってわけか」
アリソンが頷く。
「遠くの相手と」
「顔を見て話せる」
沈黙。
ミレイアが言った。
「でも守護獣って一体しかいないんでしょ?」
アリソンは答えた。
「たぶん守護獣じゃなくていい」
「え?」
「例えば鳥」
ターニャが首をかしげる。
「鳥?」
ルナシールドが静かに頷いた。
「精霊と契約したフクロウなら」
「視界を共有できると思います」
グラムベルクが目を見開いた。
「なるほど……!」
「それを繋げるってわけか!」
アリソンは紙に書かれた絵を見つめた。
「名前は」
小さく呟く。
「仮称だけど…」
「精霊映像通話魔力鏡、なんてどうかな?」
グラムベルク 「長い!」
ターニャ 「鏡でいいじゃない」
ミレイア 「精霊通話…」
アリソン 「それだ!」
ターニャが言う。
「ところでそれ、本当にできるの?」
アリソンは肩をすくめた。
「わからない」
少し笑う。
「でも」
「やってみる価値はある」
グラムベルクが腕を組んだ。
「作りたい、作りたいぞ!」
「エルフの里に行って、守護獣の目を見せてもらう」
ルナシールドは頷いた。
「長老も興味を持つでしょう」
アリソンは紙の魔法陣を見つめたまま言った。
「もしこれができれば」
窓の外を見る。
村の向こうには川が流れていた。
西の大森林を水源とする大河。セレネ河。
森の精霊を乗せて大陸を横断する川だ。
アリソンは小さく呟いた。
「世界は、もっと近くなる」




