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第17話 夜の森を歩いてたら不審者扱いされた

西大森林 エルフの里


大樹の根元。

石で作られた古い祭壇の前に、エルフの長老たちが集まっていた。

中央には一つの古代魔道具。

銀色の鏡。

その中央に浮かぶのは、今起きている光景だった。

守護獣の目。

精霊通信を通じて、守護獣 白鹿が見たものを映し出す古代の遺物。

鏡の中の映像が揺れる。

西の大森林、南端。

魔砂施設。

爆発。崩壊する塔。


長老の一人が低く言う。

「やはり……」

別の長老が続ける。

「森の魔力が乱れた原因はこれか」

白髪の長老が静かに言った。

「この少年」

アリソンの姿を指す。

「魔法陣を操作している」

沈黙。

やがて長老は視線をターニャへ移した。

少女の血が、魔道具を通して淡く光る。

「鍵だ」

長老が呟く。

「この二人が必要だ」

大樹の葉が静かに揺れた。


王国軍 西方駐屯地


地図の前に将校が立っていた。

そこに慌てて副官が駆けつける。

「南の森林で閃光と振動を確認」

将校は地図を見た。リーデン村のさらに南。

「爆発か?」

「不明です」

短い沈黙。


やがて彼は命令を下した。

「中隊を編成」

副官が目を見開く。

「中隊ですか?」

「森の奥で何が起きたかわからん」

「放置するわけにはいかん」

彼は静かに続けた。

「魔法工兵隊も同行させろ」

副官が頷く。

駐屯地の奥では、数名の兵士たちが荷車の周囲で作業を始めていた。

荷台には奇妙な装置が積まれている。

水晶盤。

測定陣。

折りたたまれた術式布。

王国軍の魔法工兵隊だった。

隊長格の兵が呟く。

「森の奥でこんな規模の爆発か……」


その頃。

夜の森を、アリソンたちはゆっくりと進んでいた。

もう追撃はない。

魔砂施設は崩壊し、精霊通信の乱れも落ち着いている。

グラムベルクが背伸びをした。

「しかしよ」

肩に担いだ斧を揺らす。

「とんでもねえもん見ちまったな」

アリソンが頷く。

「魔砂」

「そして魔力吸収装置」

アリソンは考える。

(魔力を吸収する装置)

(しかも森規模)

(あれを動かしていたのは……)


視線が横へ向く。

トロイだった。少年は少し離れて歩いている。

アリソンが声をかけた。

「トロイ、だっけ?」

「何」

グラムベルクが腕を組む。

「聞きたいことが山ほどある」

アリソンが続ける。

「魔砂」

「そしてゴーレム」

トロイの表情がわずかに変わる。

「……知りたいのか」

「うん」

アリソンは即答した。

「すごく」

グラムベルクが笑う。

「落ち着いたらゆっくり聞かせろ」

トロイは少し考えたあと、小さく頷いた。


前を歩いていたルナシールドが立ち止まる。

「急ぎましょう」

「長老が心配しています」

ターニャが言う。

「そうだよね」

少し不安そうな顔になる。

「学院も」

ミレイアが苦笑した。

「かなり不在にしてるわよね」

グラムベルクが言う。

「親達も大騒ぎだろうな」

アリソンは苦笑する。

「帰ったら怒られるかも」


森が開けた。遠くに村の灯りが見える。

「リーデン村よ」

ターニャが言った。その瞬間だった。

「止まれ!」

鋭い声が飛ぶ。

森の影から兵士たちが現れた。

王国軍の紋章。

一瞬でアリソンたちは包囲された。

グラムベルクが呟く。

「……軍?」


兵士が叫ぶ。

「武器を捨てろ!」

「不審者として拘束する!」

ターニャが驚く。

「ちょっと待って」

だが兵士たちは容赦なく距離を詰めてくる。

その時だった。

「待て」

低い声。

兵士たちが振り向く。

道の向こうから、一人の男が歩いてきた。

軍服。

肩章。

鋭い目。

ターニャが目を見開く。

「……父さん!?」


男はアリソンたちを見た。

そして兵士に言った。

「その者たちは私が知っている」

兵士が敬礼する。

「はっ、隊長」

男は頷いた。

王国軍の将校、ターニャの父だった。

彼はゆっくりアリソンたちを見回す。

そして静かに言った。

「事情を聞かせてもらおう」

その言葉で。


西大森林の事件は――

ついに王国軍の知るところとなった。

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