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第13話 エルフの里で“血の秘密”が判明した

森の空気は落ち着きを取り戻していた。

魔車は森の最深部にむかってゆっくりと進んでいる。

「あれがエルフの里です」

ルナシールドが前方を指さす。

森の景色が変わる。

巨大な樹木。

木の間をつなぐ吊り橋。

幹に組み込まれた家。

そして、透明な水路が木々の間を流れていた。


「……綺麗ね」

ターニャが思わず口にする。

「森そのものって感じ」

ルナシールドが微笑んだ。

「私たちは森を傷つけません」

「共に暮らしているんです」

魔車が広場に入ると、数人のエルフが近づいてきた。


「ルナ様」

「お帰りなさいませ」

ルナシールドが軽く頷く。

「長老は?」

「すでにお待ちです」


里の中心にそびえ立つ大樹。

「幹の中がこんなに広い空間になってる!」

ミレイアが見上げて言う。

「里で最も古くからある大樹だ」

「これも自然にできたものでな」

奥に座る年老いたエルフが話しかける。

長老たちだった。


「ルナシールド」

「報告を聞こう」

ルナシールドが前に出た。

「森の魔石付近で守護獣が暴走しました」

長老たちの表情が変わる。

「……白鹿が?」

「はい」

「ですが鎮まりました」


視線をアリソンたちへ向ける。

「王立学院の学生たちです」

「彼らの助けがありました」

長老はアリソンを見た。

「人間が守護獣を鎮めたと?」

アリソンが前へ出る。

「少し説明させてください」

 滝で作った測定器。

 魔力の周期的な揺らぎ。

 守護獣の突進。

 そしてターニャの魔法。


長老は、しばらく黙って聞いていた。

やがて一人が言う。

「……精霊」

アリソンが頷く。

「魔力は精霊が運んでいる」

「それが今、乱れている」


長老は静かに目を閉じる。

「精霊の乱れは森の南部で際立っておる」

アリソンの視線が上がる。

「南ですか?」

ルナシールドの表情が険しくなる。

「魔族……」

グラムベルクが腕を組んだ。

「つまり森の魔力を盗んでるってことか」

長老は答えなかった。

代わりにターニャを見た。

「そこの娘よ」

「少し血を見せてもらえるか」

ターニャが驚く。

「私の血?」


ルナシールドが説明した。

「古代の魔道具で血紋器というのがあります」

「これで血の中にある魔力構造を見ることができます」

長老が木箱を開いた。

中には石の器が収められていた。

ターニャは少し迷いつつも、指先を小さく切る。

一滴の血が器に落ちた。


その瞬間。

石の表面に模様が浮かび上がる。

ミレイアが覗き込む。

「これ、魔法陣?」

長老は首を振る。

「血紋という」


長老は続ける。

「エルフの血は」

「元来、魔法陣と同じ構造を持っている」

ルナシールドが言う。

「だからエルフは魔法陣なしで魔法を発動できるのです」

「詠唱魔法です」

グラムベルクが腕を組む。

「つまり体が魔法陣ってわけか」

「便利なもんだ」


長老が頷いた。

そして器を見て、その表情が変わる。

「…これは」

「見たことがない紋様だ」

器の中の血紋が変化する。

線が分岐している。


アリソンが思わず声に出す。

「その形は…」

長老が見る。

「知っているのか?」

アリソンは頷く。

「白鹿を鎮めた陣に似ています」


長老はしばらく考える。

そして口を開いた。

「精霊の会話を守る鍵」

「どういうことですか?」

ルナシールドが前に出る。

「外からの干渉を遮るものだ」

ターニャが呟く。

「鍵…?」


長老の声が強まる。

「ただし、危険をともなうものだ」

「使い方を誤ってはならん」

アリソンは地面に現れた魔法陣を思い出していた。

(あれは偶然じゃなかった)

 トロール戦。

 血。

 反転術式。

それらが重なって、そしてターニャ。


長老はゆっくり言った。

「森の南端を調べる必要がある」

ルナシールドが頷く。

「わかりました」

アリソンは静かに呟いた。

「森の南端、精霊、魔族」


森の奥深く。

精霊通信は今も乱れている。

そしてその向こうで。

誰かが―― 森に触れている。

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