第7話 文化祭準備②
翌日。
朝のホームルームで、私は先生をこれでもかってくらいににらみつけてやった。
でも三山先生はというと――効いてないのか、それとも気づいてないのか。飄々と、いつもの調子で出席簿をめくっている。
昼休み。
パンの袋を開けていたら、向かいに座ったミカがにやにやしながら言ってきた。
「ねえ今日、葉月めっちゃ先生見つめてたよね。なにあれ、愛? 愛なの??」
「メイドにした恨みを送ってただけ」
即答したけど、ミカの目はキラキラしてる。
「へぇ~、でもその恨み、ちょっと愛入ってない?」
「入ってないッ!!」
……いや言い切れないような気もするけど。モヤる。
「でもいいじゃん? 私は、葉月のメイド姿見るの、とっても楽しみだよ~」
「む~……」
思わず口をとがらせる私に、ミカは笑いながらパンをかじった。
正直なところ、私もちょっぴり楽しみにはなってきてる。それに……まぁ、お祭りだしね。こういうノリもたまにはいいのかなって。
「あ、せっかくだしさっ。一緒にネコミミ付けない?」
「それは嫌」
三山先生に付けさせとけばいい。
放課後。
ジュースを買いに行くついでに、進路指導室の前で足が止まった。
ドアを開けると、椅子に座っていた先生と、バチっと目が合う。
「……怒ってる?」
開口一番、それか。
「気づいてたんですか」
「そりゃ気づくよ。柊、すっごい睨んできてたもん」
「そんなにずっと睨んではないですよ。……たぶん」
「そうかな? まぁ、俺もあまり柊だけ見ないようにしてたから、断定はできないけど」
――ん?
なにその『見ないようにしてた』って、なんか引っかかる。
「もしかして……自制してるんですか?」
「一応ルールを決めている」
ルールって何……? 先生は話を続ける。
「教壇に立ってるときは、全員の目を同じ回数見るようにしてる」
「……はい? 数えてるんですか?」
「うん、数えてる」
めっちゃ真顔で答えてくるから逆に怖い。
「ちなみに柊は、5回だけ多く見てる。これ以上増やすとバレる気がしてる。……どう思う?」
「知りませんよ、そんなの」
ていうか、人前以外では既にアウトゾーンを爆走してる人が、何を今さら。
「でもま、普段はちゃんと理性保って教師……できてるんじゃないですか?」
そう言って水を飲もうとしたら、先生がぽつりと呟いた。
「いや、たまにやらかしてる」
「……え?」
なにかあったっけ、と首をかしげたら。
「出席のとき、柊だけ……フルネームで呼んじゃってる」
……あった気がする。それ。
思わず先生の顔を見たら、けっこう深刻そうな表情だったので、それ以上つっこむのはやめておいた。
……あっ。
メイドの文句言うの、忘れてた。




