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先生と禁断の恋、始めません。  作者: 五月雨恋
高校2年2学期

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第2話 転任してきた先生②

 <<付き合ってください!>>


 進路指導室。

 とんでもない問題発言を叫んだのは先生。沈黙してるのは私。

 

 ちょっと見た目がタイプの先生を訪ねて進路指導室に来ただけなのに、密室の中告白されています。


 ……いやこれヤバくない? かと言ってどうしようもない。

 とりあえず、目の前の封筒から確認するしかなかった。


「……えーっと、退職届?」


 下を向いたまま何も言わない先生。私が先に口を開くしかなかった。

 先生はふと頭を上げる。緊張感溢れる私とは逆に、すっごい普通の顔をしている。

 ……爆弾発言をしたくせに。


「生徒に告白などしようものなら、退職相当だからな」


 メガネをクイッと持ち上げながら、次は得意げに微笑む。

 ……何そのドヤ顔? え、どういう事? この人どういうタイプの人?

 

 ここ数日、授業とHRで見た感じでは意外とノリの軽い良い先生って感じだったけど……。

 大混乱の中、言葉を探しているとそれを察した先生は一歩後ろへと下がり、静かに両手を上げる。

 ……投降した犯人みたい。

 

「……冗談、ですよね? それでもアウトですけど」


 だんだん呆れてきた。そう返すと、先生は小さく首を振る。


「アウトなのは認める。君は間違っていない。だが、すまない。冗談ではないんだ」

「えっと、つまり……」


 先生は私を真っすぐに見る。その顔は真剣で、一点の曇りもない綺麗な目をしていた。

 

「すまん、(ひいらぎ)。いや、(ひいらぎ)葉月(はづき)。俺は何がどうなったのか自分でも意味が分からないんだが、君に惚れてしまった」


 ……あ。名前、フルネームで覚えてくれてる。って、違う違う。今それどころじゃない!!


「意味が分かりません。先生と私って、出会って間もないし……そもそも生徒相手に告白するなんて、正気の沙汰とも思えません」

「その通りだ。しかし残念な事に俺は正気だ。正気のまま、君に恋をして、そして真剣に……困っているんだ」


 先生は苦しそうに笑って、身近な椅子へ腰かけた。


 * * *

 

「何でですか? 夏休みどっかで会ってたとか? 前世の恋人だったとか? 夢に出てきた?」

「いや、そういう運命めいた感じではないな」


 机を挟んで向かい合わせに座る。通常なら進路相談に使われるであろうその場所は……取り調べ室みたいだ。

 

「じゃあ、そのタイミングでその……恋が始まったんですか?」

「……初日の出席。柊の返事を聞いた瞬間だ」

「……返事?」

「出席で名前を呼んだときの……『はい』だ」


 自分の胸に手を当て余韻に浸る先生に、思わず天を仰ぎたくなった。どのタイミングで惚れてんだよ。

 私の「はい」に恋心を抱くとか、意味が分からない。いや、分かりたくもない。

 

 ……と言いつつ、「はい」という言葉とともに私もちょっとだけ――あれ? 私も同類??

 自分にも呆れる中、三山先生は真顔のまま静かに続けた。


「……髪色は、茶色だけど明るすぎなくて、たぶん地毛か自然なトーンで。前髪は流してて、背中までのロングヘアーを時々かき上げるクセがある。制服はシャツをちょっと出してて、ネクタイは緩め。でもだらしないってより、なんか……馴染んでる感じがして」

「睫毛が長くて、目の奥がいつもちょっと笑ってるようで、でも目つきは真っ直ぐ。返事の声も……なんというか、強くて、柔らかくて」


 先生は、頭を抱える。


「……全部が愛おしいんだけど、なんでだと思う?」

「知りませんよ」

 

 こっちは何もしてない。勝手に分析されて、勝手に惚れられて、勝手に愛おしがられているだけだ。

 腕を組んだまま、首を左右へ傾げる先生に言う。

 

「……とりあえず先生。それ本気で言ってるなら、わりと詰んでますよ?」


 ため息まじりに言えば、先生は神妙な顔で頷いた。


「間違いない。自覚もしている。あまりにも一目惚れが過ぎていると。反省だってしている」

「でも……惚れてると」

「そう。抑える努力はしている。だが、結果がこれだ」


 ドヤ顔で爆弾発言を繰り返してる時点で、努力は完全に無駄である。


「じゃあ、一応確認しますけど。さっきのは……本気の告白ってことでいいんですよね?」

「ああ。一生に一度、人生で一番の本気の告白だ」

「なるほど。……じゃあ、流します」

「……えっ?」

「スルーします。全部、聞かなかったことにすれば一旦はセーフじゃないですか」

「いや、生徒に告白したらアウトだろ」

「聞こえなければセーフじゃないですか?」

「アリなのか? それ。でも……なかった事にされても寂しいな」

「知りませんよ、そんなの」


 どっと疲れた。

 なんなのこの人。教師のくせに、ダメダメじゃん。


「……一応聞きますけど、これって、誰にも言っちゃダメなやつですよね?」

「ああ、それは柊に任せる。俺の首がかかってるけど全ては……柊の掌の上だ。自由にしてくれ」


 いや、重いわ。

 

「じゃあ聞かなことにして忘れます。あと、特別扱いとかも求めてませんし。私たちは、ただの担任と生徒って事で」

「……分かった」

「あと、生徒に惚れるとか、普通にダメなので、今後は言わないように頑張ってください」

「もちろん理解している。今後は気をつけるよう、善処する」


 先生は真顔。その目はまたしても真っすぐ私を見つめる。……もう、見つめないでくれるかな。


「……柊って、綺麗だな」

「口説くのも駄目ですよ?」

「そう言われても……溢れてしまう」


 私たちは、呆れて笑うしか出来なかった。

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