第17話 クリスマス会②
クリスマスマジックなのか、体育館のあちこちでカップルが誕生したり、イチャつきだす人が現れだした。
なんとなく居心地の悪さを感じて、私はそっと体育館を抜け出すことにした。
――先生は、まだ残ってるだろうか?
進路指導室の明かりがついているのを確認して、ドアをノックもせずに開けた。
先生は椅子に腰かけ、静かにコーヒーを飲んでいた。
見つめ合うこと数秒。
……いや、何もリアクションないの? 今日の私は『結構セクシーらしい』のに?
「……寒くないのか?」
「廊下は寒いけど、体育館はヒーター付いてましたし」
「そうか」
先生は私の顔をじっと見つめる。
その視線に、少しだけ胸がざわざわする。
「はい、これ。メリークリスマス」
「くれるのか?……ありがとう」
「……ちゃんとしたやつじゃないですよ。ただのボールペンだから」
「いや、柊に貰うものなら何でも嬉しいよ」
先生はそう言って、優しく笑った。
私にもクリスマスマジックが効いてるのか、なんだか今日は……変な感じだ。
「じゃあ私、体育館戻りますね」
「うん。……あ、そうだ柊」
「はい?」
「……二十四日の夜。ベランダ側の鍵、開けておくから」
「いや行かないし。アホなの?」
「煙突が必要だったか……? 今からじゃ間に合わないな」
「そういう問題じゃないし!」
そもそも家も知らないから。
……クリスマスには、変態も誕生するらしい。いや、元からか。
「ていうか、私のサンタコス見てどうです?感想とかないんですか?」
「うーん」
コーヒーをズズっと啜りながら、先生はメガネを曇らせる。
「仮に俺が『似合っている』とか『綺麗だ』って言うとするだろ?」
「うん」
「でも実際はその言葉の裏に下心が含まれているわけだ」
「……うん?」
先生はメガネを外し、レンズを拭きながらこう結論付けた。
「だから、人目に付く場所で感想を言うのは少し……憚られるな」
どれだけの下心を言葉の裏に含む気なんだろう……。
え、ベランダ側の鍵開けておくってつまりそういう???
とりあえず睨んでおこうと先生の顔を見たけれど、三山先生は再びコーヒーでメガネを曇らせていた。
体育館に戻ると、私を探していたミカが飛びついてきた。
「葉月ー! どこ行ってたの??」
「先生いたから、ボールペン渡してきた」
「え! ずるい! 私も行く!!」
ミカが騒ぐと、他のクラスメイトも次々に乗ってきた。
結局みんなで進路指導室へ向かうことに。
その結果――三山先生の机の上には、文房具やお菓子、ぬいぐるみなどのプレゼントが山のように積み上がった。
ミカがニヤニヤしながら言う。
「先生〜! お返し楽しみにしてるから!」
「え? お返し強制なの?」
「もちろん!」
大きく頷くミカに、先生はため息まじりに言った。
「……今年のバレンタインは、禁止にしてやろうか」
「「「えぇぇぇぇぇーー!!?」」」
クラスメイトの大合唱が、やがて笑い声の渦に変わっていった。
去年も女の先生だったけど担任にあげたし……今年も、別にあげてもいいよね。
深い意味なんて、ない……はずだし。
先生、メリークリスマス。
イブは本国を見習って家族と過ごそうと思います。




