表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先生と禁断の恋、始めません。  作者: 五月雨恋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

第13話 修学旅行③

 夜の女子部屋。

 修学旅行は、あと一泊と一日を残すのみだ。


 今日も今日とて女子会である。

 ジュースとお菓子で始まる、乙女たちの小さなお茶会。


「ポテチはそっと開けてよ!? 私のベッドに粉散らさないでよ!?」

 

 友達の叫びを無視して、ミカは――

 

「無礼講じゃーい!!」

 

 盛大に袋を破った。


「あとで絶対きれいにしてよ!!??」

「おーよ!なんなら私のベッドと交換してやるぜ!?」


 ……なら最初から自分のベッドで開ければいいのに。

 私は炭酸水をキュッと飲んだ。夜遅くにジュースはちょっと……。


 私は友人たちの恋バナを聞きながら、こんなふうに心が動く恋をまだ自分は知らないんだな、と思った。

 キュンキュンさせたり、ワクワクしたり、ドキドキしたり。意外と面倒くさく、無いのかも。


「あ、そういえば葉月の元カレ、ヤバかったよ」

「へ?」


 元カレ……誰だろ?


「2年夏の方ね」

 

 すかさずミカが補足する。

 

「ちなみに私は1年冬がタイプです!」

 

 いや知ってるし。ていうか、人の元カレを記号みたいに呼ぶな。


「で、どうヤバかったって?」

「なんかね、葉月が心配だ!! 俺が探しに行く!!! って取り乱して大暴れしてたよ」


 ……うっわ。


「先生たちに羽交い絞めにされててさ。落ち着けって言われてたの、めっちゃ面白かった」


 長く付き合ったわけでもないのに、どうして彼はそこまで熱くなれるんだろう。


「で、ミヤマンが行くってなったらさらに発狂してさ――」


 そこからはモノマネ大会だった。


『なんでお前が行くんだ!? お前はアイツの何なんだよ!?』

『担任だよ』

『そうじゃねぇだろ!!』

『いや、担任だって』

『俺は元カレだ!!!』

『俺は今担任してる』

『なんで担任なんだあああ!?』

『もう行っていい?』


 淡々と「担任です」と繰り返す三山先生の姿が、とんでもなくツボだったらしい。

 ……その場にいたら、私も笑えたのかな。

 でも、心配してくれたのは――素直に嬉しい。ありがとう、2年夏の男。


「モバイルバッテリー買わないだけで大ごとになるとは思わなかったよ。みんな、ごめんね」

 

 私がそう言うと、三人はドッと笑った。


「そういえばさ、先生と葉月が帰ってきたとき思ったんだけど」

 

 ミカの言葉に、胸が一瞬ドクンとした。……いや、やましいことは何もないんだけど。


「めっちゃお似合いじゃない?」

「あー私も思った。身長差かな?」

「葉月も細いし、ミヤマンも細身だし」


「葉月のキリッとした目に、ミヤマンの垂れ目」

「葉月のストレートロングと、ミヤマンの癖毛」


「なんかこう、パズルのピースみたいに噛み合ってる感じ?」

 

 ミカが総括する。


「……私、先生とそんなパズルみたいな関係なの?」

 

 私の言葉に、部屋は笑いに包まれた。


「葉月、心を決めるしかないよ……」

 

 ミカが茶化してくる。よし、乗っかってやるか。


「仕方ない。私が三山(ミヤマン)を嫁に貰ってやるよ」

「「「(ひいらぎ)先生爆誕ー!!!」」」


 ……そっか。三山(みやま)先生が嫁に来たら『(ひいらぎ)先生』か。ていうか嫁って。


 * * *

 

 翌日は淡々と過ぎていった。

 朝はロビーで駆け寄ってくる2夏をスルーし、昼はミカたちと観光地を回り、写真を撮りまくった。

 その合間に見かける三山(みやま)先生は、たいてい誰かとツーショットを撮っている。

 そして何度目かの遭遇だった。


「ねえ葉月、先生と腕組んでさ。教会の前で立ってみて」

「は?」


 ミカの提案に、他の二人もノリノリで賛同する。……いや、昨日の冗談だよね?

 恐る恐る先生を見ると――

 

「どうせなら、ウェディングドレスも借りたいな?」

 

 真顔でアホなことを言いだしたので、ミカは全力ダッシュで衣装屋に飛び込んでいった。


 * * *


 ……事前予約制だったらしい。


三山先生(ミヤマン)のドレス姿見たかった~」

 口を尖らせて言うミカに、

 

「なんで俺が着るんだよ」

 三山(みやま)先生は冷静にツッコミを入れた。

 

 結局みんなで順番に、先生と腕を組んで教会の前で写真を撮ることになった。


 最後は私の番。……え、ほんとに組むの?

 先生が余裕たっぷりに腕を差し出す。その顔が妙にムカついたので――

 

 私は先生の両手を取って、正面で見つめ合うポーズに誘導してみる。


「こっちの方が結婚式っぽいでしょ?」

 先生は私を見つめたまま、何も答えない。

 

「ミカ!撮って!」


「おおおおおおおおおおお!!!」

 ミカが雄叫びを上げながらシャッターを連射する。


「エモい! エモい!!」と他の友人も騒ぎ、スマホを構える。


 ……最後にミカが「キスしろー!」と叫んでお開きになった。

 先生は顔だけ余裕そうだったけど、繋いだ手の汗は半端なかった。

 

 ドキドキしたのか、それとも……私の手が、熱かったんだろうか?

 

 * * *

 

 はしゃぎに騒いだ数日間。

 帰りの飛行機では、もう起きていられなかった。


「つっっっかれたぁぁぁぁぁ……」


 帰宅して荷物を放り出し、そのままベッドに倒れ込む。

 横になったままスマホをいじると――画面に、教会の前で先生と見つめ合う写真。


 ……近いな、顔。

 調子に乗ったのは、ミカじゃなくて私かもしれない。


 そんなとき、ふと思い出した。

 あのとき先生に渡された、小さな箱。


 鞄を探って取り出す。小さくて、どこか高級感のある箱。


 中に入っていたのは――

 路地裏のアクセサリー屋で、私が一番素敵だと思ったステンドグラスのネックレスだった。


 光を反射して、キラキラしている。

 すっごく、綺麗。


「……え。ネックレスって、生徒に渡すものじゃないでしょ……」


 そう言いながらも、胸の奥が熱くなる。

 ……なんかキュンとする。いやいや、高価だし! アウトだし! ていうかキュンって何!?


 慌ててネックレスを箱に戻し、机の端にそっと置く。


 なんとなく、このまま寝たら先生が夢に出てきそうな気がして。

 私はミヤマクワガタの動画を十五分見眺めてから、着替えもせずに眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ