表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先生と禁断の恋、始めません。  作者: 五月雨恋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/13

第11話 修学旅行①

 11月。

 冬の足音がジワジワと近づく中で――気づいたら、私は遠く離れた土地でひとりだった。


 ずばり、迷子なのである。


 修学旅行先。

 バスがあまりにもギュウギュウだったから「私、次のに乗るわ」と降りたのがまずかった。

 その後に来たバスに乗ったら、行きたかった場所ではなく、行く気のなかった見知らぬ場所へと運ばれてしまったのだ。

 いやまあ、行きたい場所も見知らぬ土地だけど。


 視界には、班の誰の背中も見えない。それどころか、同じ高校の人すらいない。

 坂道と観光客でごった返す通りを見回して――ため息。


 スマホの残量は3%。

 さっきまでミカとやり取りしてたせいで、どんどん減っていった。


「……ま、最悪コンビニでモバイルバッテリー買えば何とかなるでしょ。やだけど」


 モバイルバッテリーって高いし、普段ほとんどスマホを触らない私には要らないんだよなぁ。

 1回きりのためにお金を出すなんて、できれば避けたい。

 適当な手すりに腰かけて空を仰いだ、その矢先――。


 ポケットの中でブルッと震えた。

 画面に浮かんだのは『修学旅行緊急連絡先』。

 そういえば、緊急時用に全員登録させられていたっけ。

 迷子だもんな私。……仕方ないよね。


「もしもし」


『柊か? 三山だけど』


「あ、先生。スマホの電池、もうヤバイです」


 先に伝えておく。切れたら迷惑だから。


『分かった。今いる場所から何が見える? 手短にな』


 飲み込みが早い。やるじゃん先生。


「えっと……『世界で5番目に美味しいカステラ』ってのぼりと……なんか甘くて美味しそうな匂いがする」


『その隣に角煮まんの店はないか?店主に特徴は?』


「え、店主!? えーっと……ハゲと、化粧の濃いおばちゃん……?」


『分かった。今から向かう。そこ動くな』


「は、はい」


 私の返事と同時に、ぷつりと電話が切れた。

 ……咄嗟にとんでもない悪口を言ってしまった気がする。

 角煮まんのご主人? 奥さん? ごめんなさい、と心の中で深く謝罪しながら、先生を待つことにした。


 * * *

 

 数十分後。

 私がいる場所から車道を挟んだ向かい側、例の角煮まんのお店の前にタクシーが止まった。

 降りてきたのは三山先生だった。


 お店の中を覗き込み、周囲を見渡して――私を見つけたようだ。

 軽く手招きをされる。信号が変わるのを待って、私は先生と合流した。


「すみません。ご迷惑をおかけしました」


 先生はふっと口元を緩め、


「気にするな。柊が無事でよかった」


 と言いながら、角煮まんを差し出してきた。……え? なんで? 今買ったの?


「ここのが一番美味いぞ」

「ここも“世界で5番目”ですか?」


 隣のカステラ屋の看板を見つつ、なんとなく口にする。しまった。

 先生は角煮まんの奥さんと顔を見合わせ、声を潜めて言った。


「となりのカステラ屋は不味いが、この角煮まんは世界で一番美味い」


 奥さんもサムズアップして、大きく頷いていた。

 そういえば食べたことなかったな……。一口頬張ると、とんでもなくジューシーな角煮と、ふわっふわの生地のダブルパンチ。


 ……ヤバい。なにこれ。


 先生と奥さんは得意げに頷いていた。


 私が夢中で角煮まんを頬張っていると、先生はどこかに電話をかけていた。

 たぶん学年主任とかその辺だろう。


「――はい。はい。分かりました。……ああ、待たなくて結構です。バスは先に向かっていただいて」


 あ、そうなんだ。バスは先に行っちゃうらしい。


「タクシーがこの辺は少なくて……。公共交通機関で向かうので遅れるかもしれません」


 ……いや、目の前の道路にはタクシーがばんばん走ってるんですけど。


「――はい、はい。それでは後ほどホテルで」


 電話を切った先生は、私と同じく角煮まんを頬張り、ひと息ついた。


「柊、行きたいところある?」

「えっと? 今日泊まるホテルに行くんじゃないんですか?」

「んー……そうなんだけど」


 手についたソースをぺろっと舐めて、先生は続けた。


「せっかくだし、ちょっと寄り道しよう」


 私が食べ終わるのを待って、二人並んで歩き出した。

 ……んん?? いや待って、これ。デート???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ