第42話 見送るにも苦笑いしかない
「まーったく、殿下の暴走があれくらいで済んでよかったというか」
「まったくです……」
建国王の生き写しまでとは言わずとも。ラジールのことをここ最近調べ直したときにあった、ミランダ女王の肖像画は……エルディーヌ姫の今よりもう少し齢を重ねた感じでした。側妃の姫でも直系の血と魔力を受け継いだ関係かもしれませんが、今は『胤』だけになった魔王が望んだ母君の器ですからね……。
余程、ミランダ女王の子どもになりたかった魔族の子孫……いいえ、前世とやらでしょうか?
もう魔族の力は破邪である私にも感知できないくらいに、エルディーヌ姫から抜け落ちています。今なら、あのお美しさも相まって皇太子殿下の正妃となって何ら問題もないでしょう。『贄姫』の称号も無くして問題ないくらいに。
「あれで……十五だっけ?」
「ほぼ、十六ですね。とはいえ、節度は守っていただかねば」
「初心者にその気配りくらいするんじゃない? あの殿下でも」
「……そうであると願うしかないですね」
本来であれば、異能力の『炎帝』もしくは『破邪』のどちらかを正妃にするのが帝国のしきたりではありましたが。それはあくまで、先代のしきたり。
先代の頃から、近親婚に近い血縁だったのが『魔力の混在』で酷いことが判明したため……私たちと殿下も『幼馴染み』ではありますが、あくまでスペアの側妃候補扱いでした。万が一に、正妃を失うことがあれば女としての役割を果たすまでと、近衛騎士団に入団して鍛えていたのも強き女を育てるための画策。
しかし、殿下のあのお姿を見ていると、逆に安心しました。皇帝陛下も他国の姫であった皇妃殿下を娶るまでに……まあ、色々ありましたし。そのご子息である殿下にも、自分なりの幸せを見つけてほしいという願いは私たち以上にあったはずです。
でなければ、皇妃殿下自身がお古着を貸与してくださるはずがありませんからね。
「あたしらの役目は近衛騎士団の副団長から……今後は団長争いするかい?」
「いいですね。殿下の即位はまだ先のことですが、姫との婚儀は早くてもおかしくありません。私たちなりに副団長『ふたり』の制度をやめるいいきっかけにしましょう」
「あんた。ほんと、殿下の正妃候補だったと思えない潔さだね?」
「構いません。あのようなヘタレを夫に持つのは、役目以外ごめんこうむりたいですよ」
「あ、それ。あたしもいっしょ。……異能持ちも、役目とか関係なく好きに結婚したいもんだったしね」
「ええ、それはそうです」
殿下には多くの異能持ちの血筋が混じっていますからね。エルディーヌ姫にもラジールでの贄姫たちの魔力が抜けたとて、血筋は残っている。殿下の正妃になることで、新たな『ラジールの次世代』があの『魔王』かどうか……皇子か皇女かはわかりませんが、望んだ御子をお守りするのは我々近衛騎士団の役割。
ナーディアと私を娶るなどと、殿下には不要な役割はもういりませんからね? 私たちを逆に娶ってくださる殿方など……簡単に見つかりはしないでしょうが、気長に頑張っていきますか。
「……しっかし。ちょっとって、どんくらい? 仕事も三日は開けれるくらいに終わらせたそーだよ?」
「……半日。ここに姫を返していただかなければ、探しにいきましょうか」
「一刻はわざと?」
「あえての、短めの宣言です。そこまでやぶさかではありませんよ」
「……男の兄弟多い中で育つと、色々わかるもんだねぇ? お互いに」
「……です、ね」
とにかく、エルディーヌ姫。
殿下を落ち着かせることが出来るのは貴女様だけですので、お気をつけて……。
次回は土曜日〜
最終回です!!




