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【完結】『箱庭の贄姫』は呪い以上の愛を知ることに  作者: 櫛田こころ


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第41話 向き合う時間

 身体つきが整っただけでなく、髪や声まで変わってしまったそう。アーシャが、わざわざ皇妃様のお古着を着せてくれるまで、ずっと……ずーっと、鏡を見ていたけれど、『自分』とは思えない姿に口を開けたままだった。


 艶やかで少し波打つように長い銀の髪。紺の瞳はそのままだが、ほかはふにふにぷにぷにしていて、健康そうに見える肌艶。鼻の位置や唇の形もとても可愛らしいものだ。



(……本当に、『私』??)



 顔をぺたぺたと触っている仕草で、鏡の中の人物が『自分』なのはわかっている。わかっていても、鏡の中の人物が『美少女』過ぎて自分だと思えないのだ。散々なくらい、ジェイク様が私を褒めてくださることはあったが、こんな風に見えていただなんて……。



「いや~……、レティはもともと可愛いタイプと思っていたけど」



 ナーディア様が横から覗き込んで来てくれましたが、笑顔でも困った笑顔。表でさっきお帰りをお願いしたジェイク様の対応をしてくださったのでしょう。ジェイク様には申し訳ないですが、こんな美少女を今会わせたら……ハグだけで終わらない気がしてならない。


 最初の頃とは違い、今、私たちは正式な婚約者同士。口づけを人前でしそうになるくらいの暴走は想像がつく。だからこそ、時間を置いて身なりを整える必要があったのだが。



「……きつい、です」

「皇妃様の十五歳の服で……か? もう少し上の時のお借りする?」

「……お願い、します」



 貧弱だったはずの胸元以外もふんわりと大きくなってしまった。服を破かないように注意して着ても、全然きつくて入らないときた。こればっかりは、個人差があるにしたって『いきなり』過ぎる。『魔王』はもう呼びかけに答えてくれないのか、何度念話を試してもうんともすんとも言わないでいる。



「……この調子だと、コルセット装着も必要かもですね。アーシャ、ミンナ……あなたたち基準からまずお願いします」

「「はい」」

「……こるせっと?」

「ドレスを美しく着せる……補助の下着のようなものです。胸もとりあえず整えられるはずですが」

「はあ……?」



 ただ、そのコルセットを装着させるのも大変だとは思ってもみなかったもので。メイド基準よりも数段上のでようやく装着出来たものの……ご飯もこちらに運んでいただくまで、身支度に時間がかかった。



「コルセットを着用したままの、食事にも慣れましょう。今は私たちしかいませんので……召し上がっていてください。普段着の方はお針子たちにお願いしてきますので」

「……ありがとう、ござい……ます」



 皆さんも食べていませんのに、私の身支度優先で動いてくださったので……有難く、先にいただくことになるのだけれど。お腹もかなり圧迫されていたため、お腹が空くよりも『詰め込む』のが以前よりも大変だった。



「姫様。お待たせしました」

「せっかくですから、殿下とお会いするまでさらに着飾りません?」

「……きれい、に?」

「「はい」」



 食事が終わってからメイドたちにそう提案され、どうしたものかと少し考えたが。あのままのジェイク様を二、三日放っておくと……非公式で、無理に会いに来るようにお仕事をめちゃくちゃにしてしまいそうだ。ひと晩耐えてくださったのに、私の気恥ずかしさが前に出てしまったせいで、今は別にしてもらっている。



「……そう、だね。シスファ様たちも、多分……いいって言ってくれる、だろうし」

「副団長には私から申し出てみますわ!」

「姉さんがいない間は、私が御髪を」

「うん。お願い」

「「はい」」



 これだけ長いと自分だけなら適当に巻き髪にするしか出来ないもの。そこは、私より出来る人たちにお願いする方が断然いいはず。


 出来るだけ動かないようにしたりとか、動くときは彼女たちの言うように動いたりとかして時間を過ごすうちに……時間はあっという間に夕方になり、出来上がったのは物語に出てくる『可憐なお姫様』のような私が出来上がってしまっていた。



「……え、と。ありがとう」

「「どういたしまして!! 姫様、お綺麗ですわ!!」」



 予想以上の出来栄えに、玄人の仕事はすごいとしか思えない。ふたりが手を叩いている途中、ドアの方からノックの音が。シスファ様だろうか? ジェイク様をお連れしてくださったのだろうか? それだと、物凄く緊張してきた!!?



「エルディーヌ姫。殿下をお連れしました」

「……どうぞ」



 やっぱりそうだったけれど、ここまでお預けにしたのは私自身なのだからと……返答をした。


 ゆっくりゆっくりと、扉が開いたと思ったらいつもの自信満々なジェイク様はいない代わりに……私の姿を見て、ぽっかーんと口を開けている惚けた姿のあの方がいらした。



「……レティ? え? 本気で、俺のレティ!!?」

「……エルディーヌ、です」



 なんだろうか、この間の取り方は。見合いなどしたことがないのに、まるでそんな状況になっているかのような錯覚をしてしまう。



「へぇ!? レティ!! 稀代の美姫くらいになってんじゃん!!?」

「……ここまで整うとは。やはり、ラジールの建国王は帝国出身者だったとは本当でしたね?」

「殿下ぁ~? もっと褒めてやったらぁ? あ、もしかしてハグしたいの我慢してるとか??」

「……んな。皆、俺を除け者扱いして!!」

「「「「は??」」」」



 よくわからない言動と行動を起こしたジェイク様。私のところに詰め寄ったかと思えば、すぐにすくい上げるように抱き上げてしまった。そしてそのまま、部屋の外へ走っていく!?



「じぇ、ジェイク様!!?」

「今だけ! ちょっと今だけ!! 俺たちをふたりきりにして!!」

「……一刻だけです」

「ありがと、シスファ!!」



 大声でのやり取りはあったものの、私たちは向き合う時間を与えられたのだった。ジェイク様は私を抱えたまま廊下を駆け抜けるが、すれ違う人たちは皆驚いている以上に……呆れていた??

次回は木曜日〜

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