神なんていない、だって
水神様=龍神様。
昔、この地区は祀っている水神様の為に
奉納花火をやっていた。
お囃子や灯籠流しも。
毎年毎年。
屋台が出て、人が沢山きて、皆花火を楽しんだ。
でも引っ越してきた人達の所に花火の煙がいくからって苦情が来て、
花火大会は開催しなくなった。
お囃子や灯籠流しは続けていたけれど、それも
うるさいとか、川にゴミを流すな、って理由で無くなってしまった。
引っ越してきた人達は、水神様を信じない。
水神様の祠に落書きする者が現れた。
消しても落書きして、また消してまた落書きして、のいたちごっこ。
昔から住んでいた人達は、水神様の祟りを恐れ始めた。
花火やお囃子、灯籠流しを辞めて数年。
雨季の雨の量が増えてきた。
年々増加して、住宅被害も出始めた。
「祟りが来たんだ」
そう言って、ホコリを被っていた笛や太鼓を引っ張り出して、演奏し始める人もいた。
「うるさいんですよ!
神なんていないのに演奏するなんて、
頭おかしいんじゃないんですか?」
そう主張する住民と揉めた。
「罰当たりな事をしておる連中が!
いつか祟られるぞ!?」
古くからいた人達と言い争う事も増えた。
そしてある日、酔っ払った男が
「神なんていないのにこんな祠を祀るなんて。
バカな奴ら。
俺が神なんていないって教えてやらないと」
そう言って、祠を壊した。
「誰だ!祠を壊したのは!」
「天罰がくだる。水神様の天罰が」
「どうすんだ?祠を作り直すにしても、
協力なんてしてくれないだろう?
あの連中は」
「我々だけでは祠を建てる金は用意できないぞ」
古くからいた住人達は怒り狂い、慄き、
そして悩んだ。
「お前、あの祠壊しちゃったの!?」
「おうよ!でもなーんにも起こらないだろ?」
「確かに。3日は経ったか?」
「壊した所アップしたけど、
再生回数スゲェ!!コメも沢山きてる。
批判が多いんだけど?こいつら神様なんて信じてるんかよ?ハラ痛ぇ笑」
「アップしたのかよ!?
炎上してんな!アハハハッ」
「何にも起きてないのにバカじゃね?」
「なー?」
と悪びれもしない祠を壊した男と友人達。
だがその後、
この地区に凄まじい雷雨が襲った。
引っ越してきて人達の家は浸水し、
祠を壊した男の家には雷が落ち家は全焼。
男は妻と共に死亡し、
増水した川に呑み込まれた友人達も1人を残して死亡した。
奇跡的に助かった1人は、
「己の罪を償え。祠を壊した報いを受けよ。
お前は生かして返す。
速やかに祠を建て直すよう伝えろ。
花火やお囃子も復活させるようにな」
との謎の声を聞いたそうな。
因みに
元からいた住人達に被害は一切なかった。
それからすぐに祠を建て直し、
花火大会を復活させ、
お囃子や灯籠流しも復活させた。
「よくやった。
今度は絶やすなよ?祠も壊すな。
この出来事を後世に伝えよ。
同じ事をしたらまた罰を与えるからな」
復活させた日の夜、地区の住民全員が
夢の中でそんな声を聞いたと言う。
こぽこぽこぽこぽこぽ・・・・・・・・・・・・・
おしまい
水神様の奉納花火が無くなったのは地元の実話です。
お囃子は続けているけれど。
祠ネタ出しちゃった。