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水切りとこどもの約束

ホラー初めて。

夏休み。

お父さんの実家に来た。滞在期間は6日間。

伯父さんと、いとこ達も来ていた。


緑が多くて空気は澄んでいて、川が綺麗な田舎町。


最初はゲームをしていたけれど、1番下の従弟が川で遊びたいって言った。

そうしたら、

「川は危ないから1人ではダメ」って言われて、

お父さんと一緒に行く事になった。

何をやりたい?って聞かれたから、

僕は水切りをやってみたい、って言った。


「水切りかーお父さんもやろうかな」

「えー泳ぎたい」

「ダメだ。川は流れが速いし、

くぼみがあって足を取られたりするから」

「じゃあ釣りは?」

「許可されてないからできないよ」

「えー!釣りしたかった」

「今度釣り出来るところに連れていってやる!」


そんな会話を尻目に適当な石を拾って投げる。

上手くいかない。何回しても同じ。

お父さんもイマイチ。

「いやー苦手なんだよな」って笑っていた。

そうして

「お父さんは止める。

お前はどうする?皆ウォーターガンで遊んでるぞ、

遊ぶか?」

と聞かれたけれど、

「水切りやる」って言ったら

「分かった。ただ水の中は危ないからな、

入るなよ。

お父さんは少し休むと」

と言って離れて行った。


その後も投げ続けたけど、

上手くいかなくて止めようとしたら

「水切り好きなの?」

と声がした。

振り向くと、同じくらいの歳の半袖半ズボンの男の子。


「やってみたくてやってるけど上手くいかない」

そう言うと、

「石はこういう石がいいんだよ。

それで、投げ方はこう」

その子が投げた石は、何回も跳ねた。

「この石使ってやってみて」


渡された石で投げてみる。

上手くいかない。


「こうだよ」

投げる所を見せる。


「こう?あ、さっきより跳ねた?」

「手首はこう」

「あ、石は平らでカクってなってて、重さもあって、握りやすいのがいいよ」

「そうなの?」


「腰をこうにして、真っ直ぐ水に投げて入れて」

「腰を落とす?だっけ、そう!そうして」

男の子が教えてくれた事をしていると、

段々上手くなってきた。

「あー惜しい!あともう少しで10回いったのに!」

悔しがっていたら、


「おーい、もう暗くなるから帰るぞ」って

お父さんがやって来た。


「教えてくれてありがとう。僕は石崎透真(とうま)

小学4年生」

「僕は貴彬(たかあき)。僕も小学4年だよ。

楽しかった。

また明日、ここに来てくれる?」

そう聞いてきたから

「うん!来るよ!約束」

ゆびきりげんまんした。


「やくそくだよ?」


次の日、また川に行きたいと言った。

ついたら貴彬がいた。

バタバタと走っていく。

「来てくれてありがとう!」

ニコニコ笑っていた。 


「水切りする?」

「する!」

「じゃあ石探そう!」

水切りに使う石を探した。

そして遊ぶ。

昨日より上手くなった。

「10回いった!」

「やったー!!!」


はしゃいでいたらいとこ達も来た。

「何してるんだ?」

「そっちの子は?」

貴彬(たかあき)くん。水切り上手いんだ。

一緒にやらない?楽しいよ?」

「透真がやってるならやる!僕は石崎翔也、

小学3年生。よろしくお願いします!」

「試しにやってみるかなー?あ、俺は翔馬。

中1」

そして皆んなで水切りをし始めた。


「難しい」

「お!ぴょんぴょん飛んでるぞ!

俺って才能あるー!」

「それ自分で言う?」

わいわいはしゃぐ。

「ねえ、明日も来る?」

「「「うん!」」」


お父さんは日傘をさして読書をしていた。

帰り、ふんふんと鼻歌を歌っていたら

「楽しそうだな、何かあったのか?」

って聞かれたから

「地元の子と仲良くなったんだ。

水切り上手くて、教えてもらった。

翔馬達も仲良くなったんだ!」

「おお、ここの子と。良かった」

笑顔でそう言った。


それから毎日毎日川に行き、水切りをして遊んだ。


「ここの子?」

「うん、そう」

「1人で来るの?」

「そう、ひとり」

「家族は?」

「ここにいるのは知ってるよ。

前は友達と一緒に来てたんだけど、

ある日から来なくなったんだ。

それから1人ぼっちで遊んでる」


そう寂しそうに言った。

「明日もここで遊んでくれる?」

「うん」

ゆびきりげんまんした。


ゆびきりげんまん、

うそついたらはりせんぼんのます

ゆびきった

「うそ、つかないでね」


翌日

「水切り大会しよう!」

僕はそう言った。

「おーいいね!勝負勝負!」

「負けない!」

「やった!」


そうして水切り大会をした。

優勝は貴彬。10回以上跳んだ。

次が翔馬で僕は3位、最下位は翔也だった。


「・・・明日、帰るの?もう来ないの?」

貴彬が聞く。

「次の夏にまた来るよ」

「本当に?本当に来るの?

政明みたいになるのはやだよ。

ねぇ、帰らないで。一緒にいて」

嫌々言い出した。


政明って友達かな?

「来年来るよ。ゆびきりする?」

そう言うも

「そう言って政明も来なかった。

信用できない」


暗い顔になる。

「帰らないで一緒にいて」

手を掴む。


川の水音がやけにうるさい。

「帰らないで」

「翔馬も翔也も」

「ずっとここにいて」

「ずっと一緒」


ぐわんぐわんと頭に響く。

何かを思いついたのか、ぱっと顔が明るくなる。


「そうだ、僕と同じになればいいんだ。

そうすれば、ずっと一緒に遊べる」

そうだ、そうしようと言い、

川まで引っ張っていく。


力が強くて離せない。


翔馬と翔也はぽかんとした後追いかけてきて貴彬を剥がそうとするが剥がさない。


そうこうしている内に川の中まで入る。

足が水で濡れる。


「冷たいよね、気持ちいいよね」

そう言って顔に手を伸ばす貴彬。

無表情だが暗い目をしている。

口元か三日月のような形を作っている。


「川に体を預けて?

怖くないよ」

体が勝手に動き、体を傾ける。

ザバンと音がして水に沈む。

上から覗いた貴彬が沈めようと手を伸ばす。


その時

「貴彬!?お前貴彬なのか!?」


伯父の声がした。


「俺だよ!政明だよ!

あれから35年も経った。

翔馬と翔也の父親になったんだ。

ずっとここにいたのか?」


「透真は、あのお兄さんの子?

そっか。

ならお友達になってもらわないと。

さあ、ずっと一緒にいよう?」


顔をガシッと掴む貴彬。

痛い。


「待て!ダメだ貴彬!

あの日は済まなかった!!

約束破ってしまって、来ることが出来なくて。

親に見つかって、こっぴどく怒られて。

部屋に鍵かけられて出られなくて。


その後お前が溺死したって聞いて。

お墓には行った。

でもここには来る事が出来なかった。

俺がいたら、お前を助けられたんじゃないかって、

後悔があったから。


済まなかった。もっと早くここに来るべきだったのに。

貴彬、お前の両親は逮捕された」


ピタリと動きが止まる。

「もう昔の話だ。

この町にもいない。刑務所で服役した後、

どこかへ消えたらしい。

遺体を見た警官が不審に思って調べたそうだ。

ごめんな、助けられなくて」


「もう1度遊ぼう?

水切りで」


無言になり、手を離す貴彬。


僕は身を起こして抱きしめる。

「来年も遊ぼう。ね?

君とまた遊びたい」

「そうだよ!遊びたい」

「俺も!楽しかったし」

翔馬達も抱きつく。


「もう、いいよ。

政明が来てくれたから。

お父さんもお母さんもいなくなったから。

さようなら。

遊んでくれてありがとう、透馬、翔馬、翔也。

そして政明も」


体が透けていく。

「貴彬!」


にっこりと笑って消えていった。


その後伯父さんが教えてくれた。

あの子は清水貴彬。

自分に厳しく弟(父)に甘い両親から逃げたくて川に来た時に出会ったそう。

貴彬は酒癖が悪い父から殴られ、母からは育児放棄をされていた。

学校には殆ど行かず、ここで遊んでいた。

そして仲良くなり、こっそりと家を抜け出して会いにいって遊んでいた。


だがある日出かけているのがバレて部屋に閉じ込められた。

なかなか来ない伯父をまたつつ遊んでいた貴彬は、川に流されて命を落とした。

風で水の中に入った政明から貰ったお守りを取りにいって深みに嵌ったのだろうと推測された。

遺体は見えない所に打撲痕が沢山あり、痩せすぎていた為に警察が捜査に乗り出し虐待が発覚し、

両親は逮捕された。

伯父はずっとここに来られなかったらしい。


「虐待の事、両親や警官に伝えたかったんだが、

そうするとあそこで会っている事がバレて叱られるだろ?だから言えなかった。


貴彬の両親は、外から来た人達。 

付き合いはいなかった。

だから虐待も知られていなかったんだ」

苦々しく言っていた。


「もう、いないのかな?」

消えていった姿を見てぽつりと言う。

「かもしれない。

あいつのお墓はあるんだ。行くか?」

「行く!それに、来年もあの川で遊ぶ!

水切り楽しいし、また会えるかもしれないから」

そういってにっこり笑った。

水切りはした事ないから調べまくったです。

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