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4/12

「胃に優しくない昼休み」― 恋は不意打ち、返答は即答。

ある日、王城から届いた一通の手紙。

豪奢な封蝋を開けた団長室で、リネアは眉間に皺を寄せていた。


「……は?」


文面はあまりにも簡潔、そして全力で無遠慮だった。

《そろそろ身を固めろ》


ため息とともに、リネアは机に手紙を投げ出す。


「いや、国家命令で婚活ってなに?武装で?素手で?」


結局、上からの命令には逆らえず、彼女は“婚活”という名の地獄の面談に身を投じることになる。


───────────


登場するのは、“守ってあげたくなる”系の男性陣。

ふわふわした物腰、控えめな笑顔、誠実そうな目……。


でも。


(うん、よわすぎる)


「腕立て伏せ、できる?」

「……一回だけなら」

「帰っていいわ」


リネアの評価はいつも斜め上から。

何人目かの候補が「押し入れの影からそっと見守るのが好きです」と言った瞬間、リネアは本気で帰ろうとした。


そんなある日の昼休み。

食堂の一角で、団長たちはくつろいでいた。…まあ、リネアの鋭い視線のせいで、周囲はちょっとだけ緊張していたが。


冗談半分で、若手騎士のカイルが口を開く。


「団長、婚活ってやっぱ大変なんですね。……いっそ、副団長とかどうです? 見た目いいし、仕事も完璧だし、長年の付き合いですし」


リネアは水を一口飲んだあと、あっさりと返した。


「絶対ないわ」


その言葉が放たれた瞬間、食堂の空気が静止した。

誰もが、あっ……という顔でカイルを見る。


その視線の中、肝心のリュシアン――副団長はというと、隣の席で微妙に箸を止めていた。


……あ、言っちゃったな。

あれは、なかなか刺さるな。うん。なかなか。いや、かなり。


口元に無理矢理笑みを貼りつけたまま、リュシアンは心の中で冷静に(過剰に)ダメージ報告をしていた。


(絶対ない……?絶対って……え?その“絶”って必要だった?)


恋愛対象外ということは薄々感じていた。

いや、だいぶ前から察していた。

しかし改めて“絶対”と明言されると、こう、胸のあたりがズーンと。


(これが噂の胃痛ってやつか……)


そんなことを思いながらも、彼は微笑んだ。いつも通りの、業務用の笑顔で。


「それより、次の訓練計画。見直したいところがあるので、あとで時間をもらえますか」


「うん、後で団長室に来て」


「了解です、団長」


冷静、完璧、副団長。

……その中に“傷心”の二文字が加わっているとは、リネアは夢にも思わなかった。


次回、『団長、婚活に敗北する。』

「“剣を振る女性は怖い”って、初対面で言われたのよ。どう思う?」愚痴りながら、疲れ切った団長が帰還。

副団長の想いは、今日も見事にスルーされる。

「俺は、どこにも行きませんから」

「ん? 今なんか言った?」

聞こえないその一言に、書類の山が泣いている──。

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