「副団長、最近ニヤけてません?」
聖騎士団本部の裏手、訓練を終えた騎士たちが水を飲みながら、話し始めた。
「なあ……最近、団長と副団長、距離近くねぇか?」
「やっぱ思った?お前も?」
「だってこの間の訓練中なんか、団長が副団長に“さすが、シアン”って、愛称で呼んでたぞ!?しかもそのあと、頭ぽん、てしてた!」
「シアン!?」
「頭ぽん!それもう、スキンシップじゃん!触れ合いじゃん!すきじゃん!」
「それに副団長、その時、ちょっとだけ笑ったんだよ……!あの無表情で有名な副団長が!」
「副団長が笑ったら、天変地異が起きるって言われてるのに……!」
「お前それ言いすぎ。でも……分かる。あれは完全に“推しに触れられたオタク”の顔だった」
そこに、別の若い騎士が駆け込んでくる。
「ちょっと聞いてくださいよ!俺、聞いちゃったんです!副団長、団長の鎧の手入れ、夜な夜な自分でやってるって!」
「は!?それもう、愛じゃん!?」
「しかも、団長が“最近鎧の着心地いいのよね”って言ってて……」
「うわ、それ知らずに褒めちゃったやつだ……副団長、絶対それで1週間は幸せだったわ……」
「団長……天然すぎんだろ……」
「でも副団長、めちゃくちゃ嬉しそうだったよな……顔に出てたぞ。団長が気づいてないの、逆に罪だわ」
「まじか……俺もう、祝福してぇ……!」
年長騎士が、ぼそっと呟いた。
「……ついに、くっついたんじゃねぇか?」
「はっ!?」
一瞬、全員が真顔になったが、
「──まさか~!」
と笑いが弾ける。
「でもほんと、最近のあの二人、見てて微笑ましいというか……もはや副団長の片想い応援団になりそうだよ俺ら」
「おい、団長が気づいたら、粛清されるからな」
「えっ……それはそれで興奮──」「やめろ変態!」
こうしてまた、聖騎士団内に新たな“応援団”が作られたのは、後に広まり着々と団員が増えているらしい────
次回、騎士団本部に突然飛び込んできたのは、しつこすぎる宮廷魔術師・ゼフィール。婚約をめぐる三角関係(?)に終止符を打つべく、リネアが取った行動とは…
「婚約者は、俺です」「じゃあ────して」「──は?」突然の団長の思いがけぬ行動。止まる思考。赤くなる副団長。これは任務? それとも事故? いや、恋の始まり??
お楽しみに。