煌
ミナトが釣り竿を投げ入れたその瞬間、突然、海の表面が異様にざわつき、風が不穏に唸りを上げた。
最初は小さな波のようだったが、次第に波が高くなり、舟が揺れる度合いが増していった。
「なんか変だな…」
一人の少年が声を震わせて言った。
その言葉を最後に、海が急に暗くなり、何もかもが闇に包まれた。
空は黒く、海面はまるで塗り潰されたかのように濁り、まるで時間が止まったかのようだった。
その暗闇の中から、何か巨大なものがゆっくりと現れ始める。
ミナトの心臓が激しく鼓動を打つ。
その姿は、まるで海そのものから生まれたかのようだった。最初は小さく見えたが、次第にその存在は恐ろしいほどに巨大化していき、全身が黒い鱗で覆われた龍のような姿が姿を現した。
巨大な頭部が空を覆い、まるで空気そのものが震えるような禍々しい気配が漂った。
その目は炎のように赤く光り、見る者すべてを焼き尽くすような威圧感を放っていた。
その身体はまるで蛇のように長く、うねるようにして海を這い、船の周りを囲み始める。
少年たちは言葉を失い、ただその存在に恐れおののいていた。
その恐怖は瞬く間に広がり、言葉にならない程の恐ろしさを与えていた。
「逃げろ!早く!」
ミナトはその瞬間、何か本能的に判断して叫び声を上げた。
だが、舟は揺れ動き、あまりにも速すぎる波の前には、どうすることもできなかった。
その瞬間、巨大な蛇のような体が海を揺さぶり、舟を一撃で吹き飛ばすように押し潰した。
波が高く、激しく、全てが音もなく転がり、渦の中に飲み込まれていく。
「うわあああ!」
少年たちは必死に掴まろうとするが、海の中で舟はもはや無力だった。
波が渦を巻き、激しく舞い上がり、ミナトはその渦の中で目の前の光景が遠くなっていくのを感じた。
その異形の存在は、ただ海を支配し、周囲のすべてを破壊し尽くすかのように、その存在を誇示しているかのようだった。
ミナトは必死で息を吸い込むも、海水が喉をついて、目の前が白く霞んでいった。
その瞬間、彼の意識は次第に薄れていき、手にした釣り竿も海に引き込まれていく。
ただ、荒れる海の中で、彼は確かにその存在が、自分を越えるほどの力を持った何かであることを感じていた。
その時、巨大な龍のようなものの目がミナトに一瞬だけ視線を向けた。
まるでミナトの瞳の奥に揺れる、恐怖の感情を飲み込むかのように。
そして、意識は闇の中に溶け込んでいった。
※本作はすでに完結済みの長編ファンタジーです。現在、連載形式で投稿中です。物語は最後まで投稿される予定ですので、安心してお楽しみください。




