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3.下半身転生

「すべて元に戻せ!」


まさか怒鳴られると思っていなかったのか

口を開いたまま固まってしまった

この世界の神ってこんななのか…?

もっと何事にも動じない強靭な精神と寛容な心を持つ…みたいな

無いのか?そういうの

もしくはこいつは女神じゃないかだな


「ご、ご明察!私は女神ではないわ

 私は位階正一位・大天使のシノンよ」

「そうか、俺はこの世界に呼んだ()()に用があるんだが」


あ、明らかに不満そうな顔しやがった

不満があるのはこっちなんだが

天使のこいつに何言っても変わらん気がする


「少々失礼が過ぎるんじゃないかしら

 あと、大天使よ!そこの所間違えないでくれる?」

「じゃあ何ができるっていうんだよ大天使サマ

 あと、勝手に心の中を読まないでくれるか」


………

いや、黙るなよ

なんだその図星です…みたいな態度は

にしてもなんだかパッとしない天使だな

本当に何もできないのか?

いや、今さっき第一位階って自分から名乗ったよな

まさか嘘ついたのか!?天使が!

まっさかぁ〜そんな訳ないよなぁ

偉大なる神様が勝手に呼んでおきながら何もできない奴遣すか?

いや、遣さない(反語)

嫌味気味にそう考えていると、鼻を啜る音がした

音の主は


「そんなに言わなくたっていいじゃない…

 私だって精一杯頑張ってるのよぉ

 一応高位的存在だから下位の子には期待されるし

 新人だからって先輩には(しご)かれるし

 初めて人間に会うから舐められないように振る舞ったら馬鹿にされるし…」

「なんかごめん…

 て、天使も色々大変なんだな」

「大天使よっ!」


泣いてる天使は止みづらい、と知った

一度崩れたら止まらないこと雪崩の如し

なんかこう…距離が近くなってびっくり

でもその分色々教えてくれたから結果的に助かった


「あなたをこの世界に呼んだのは女神セラス様よ

 前例は一度だけ

 あなたのご先祖様にあたる人ね

 でもそれは当時の世が荒れていて、それを治める為の召喚だったから

 今回は理由が分からないの」


一度だけってことはご先祖が統治できたってことだろう

そいつが勇者なら俺が勇者の子孫ってことで間違い無いのか

"一応"こいつも最上位の天使な訳で

大体の情報は伝わってるはずだろうに

女神が直接来なかったり、下半身しかこの世界に来なかったあたり

焦ってたのか?


「あ、言伝!忘れてた

 『言語は伝わるようにしてある

  あと一つ祝福をやろう』だって」


全てを無視するなら日本の体を元に戻して貰うのが一番手っ取り早いが

呼ばれてしまった以上はやる事やらないと同じ事を繰り返すだけになってしまう

異世界で生き抜くにはやはり金だろうか

うむ、悩みどころだな

シノンはどう思う?


「心読めるからって楽しないでよ

 あと、決めるのは私じゃないし

 あなたのしたいようにしたらいいじゃない」


んだよ、最適解くれると思ったのに

というかなんで俺が現れもしない女神のことを信じなきゃいけないんだ

変な宗教に半ば強制的に入信させられかけてるじゃないか

ここ異世界だしな、幻覚でも見せられてるんだろきっと


『黙って聞いていればお主

 あまりにも失礼すぎるのではないか?』


背後から聞こえるもう一つの声

突然跪くシノン

背筋が本能的に張ってしまうほどの圧

ご本人登場だな

はぁ…めんどくせぇ


『カッカッカ

 これだけ圧を受けておりながら"めんどくさい"とな

 お主、気に入ったぞ

 少々おまけしてやろう』


女神も心を読めるんだな

まぁこれで問題も無くなった

1ヶ月楽に暮らせる程度の金

それと、シノンを貸してくれ


『そうか…やはり面白いなお主

 良いだろう、その条件で呑もう

 ただし、此奴を貸せるのは1ヶ月だけだ

 其方(そち)もそれで良いな』

「はっ、あなた様がそう仰るのであらば」


やけに素直だな

別にそれでもいいんだが

そんなに簡単に渡せるものなのか


『お主らの旅に幸あらんことを』


そのまま俺は背中を蹴飛ばされる

滞空中、背を下に向けて女神とやらを拝もうとしたが見えなかった

厳密に言えば見えはしたのだ

しかしそいつの周りに霧が掛かっていてはっきりと視認できなかった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あのまま俺は意識が飛び、気がつくとそこはさっきまでいた教会

なんなら構図まで同じだ

でも、記憶はあるのに実感が無い

まるで本当に幻覚を見せられていたかの様な…

しかし、それはすぐに分かった

窓も無いのに上から光が差し、何処からともなくシノンが現れる

シノンは持っていた小袋をこちらに投げてきた

中には数枚の金色に煌めく硬貨

宙に浮いてたから気づかなかったが

こいつ身長高いな…190センチくらいか


「これから1ヶ月よろしくな」

「えぇ、よろしく

 あと服着たら?」


そう言って指を鳴らすと着ていたズボンごと変わる

肌触りの良い上質な布でできた服

村人のような見た目だが、着ているからか一発で分かった

これは後々使えそうだ

ただ当面の目標はこっちの世界での安定かな

金の使い道はほとんど決まっているし

あと情報収集なんかもしなきゃだな

状態はあれだが異世界ものは嫌いじゃない

元の世界で進展が無い内は楽しませて貰おうじゃないか


これは俺の半身が飛んだ事から始まった

俺の下半身を転生させるだけの物語





…のはずだった

天界…神・天使・精霊王などの人型から、フェンリル・フェニックスなどの聖獣が暮らす楽園。中央には世界樹があり、大量の精気に満ちている。


神…世界の最高権力者。全生物が信仰する宗派の数だけ存在し、世界を軽く滅ぼせる力を持つ。神の中での序列は信仰力で決まっており、現在の最高神は創造神セラス。


天使…神の従者。信仰力によって変動し、その都度消滅・生成を繰り返す。基本は微々たる変動であり、名も無き下位天使が選ばれるが、時には上位天使が選ばれることもある。


位階…階級を10段階に表したもの。正一位・従一位から始まり、正五位・従五位まで。第一位が大、第二・三位が中、第四・五位が名無しとなっている。

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