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1.意味がわからん

主人公:桜樹 零 会話文以外のほとんどがこいつの思考

幼馴染:瑠条 水 どちらかといえばフランクな方

親友 :詩卿 輝間 どちらかといえば距離がある方

朝の7時ごろ

無理矢理開けられたカーテンから差し込む光で目が覚める

いつもと何ら変わらない

一つ、下半身が無い事を除いて


「は?」


なんだ!?何が起きてる!?

ただ寝て起きただけだろ?

とりあえず俺は救急車を呼んだ

診断の結果、下半身が消えた以外に異常はないとのこと

逆に言えば下半身が消えるとかいう異常が発生している

当たり前のように前例などなく、医者の人も反応に困っていた

正常に生きられるとはいえ、足がないと歩けないし、内臓系も消えてしまっているらしいので、何か口に入れてもどうなるのかすらわからない

まぁ、痛みや不調はないし、肉や内臓が飛び出ているということもないし

どうにか出来いるようなものでもない

俺にできることはどうにかなるのを待つだけだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一週間がたった

いまだに何も変化はない

ただ、分かったことが幾つかある

やはり普通に喉は乾くし、食欲もあった

"飲食をしたらどうなるのか"だが、食後に検査したら消えていた

そして何故か消えた下半身の感覚がある

これだけは本当に分からない

病院のベットの上にいるはずなのに、足には風のようなものが当たっている

さらに、とてもくすぐったい

外…草の上にでも居るのだろうか

謎すぎる状況に頭を抱えていると、ノック音が鳴る

答える声を遮るように勢いよく扉が開かれる


「おーい桜樹(さくらぎ)さんやー

 生きてるか〜?」

「はぁ…もう少し落ち着いたらどうだ?(すい)

「へいへい、分かってますよ

 まぁ、元気そうでよかったよ」


俺の注意を適当に返すこいつは、瑠条(るじょう) (すい)

気が利くし、面白い

何より顔が良いので、男女共に人気だ

そんな一軍の水も()()()というだけで気にかけてくれる


「てか、ごめんねずっと来れなくて

 もっと早くに来たかったんだけど…」


水は陸上部で、長距離のエース

これは、人一倍努力して得た結果なのだ

今でも人より早く始め、遅くにやめている

逆にわざわざ来てもらって、申し訳ない


「いや、来てくれただけで嬉しい

 てかなんで俺が入院してるの知ってるんだよ」

「え?あまりにも休むから

 おばさんに聞いたんだけど…まずかった?」


首を軽く横に振り否定する

入院を言わなかったのは、誰も来なかったら悲しいからで

来てまずいことは一つも無い

そう伝えると、"よかった"という声と共に太陽のような笑顔を見せる

水の顔は破壊力が強すぎる

これを向けられて惚れない男の方が稀だろ


「じゃ、ちょーっと失礼して」

「ちょちょっ、何してんの」


突然俺の足元に回って布団をめくってきた

俺のあられもない姿に興味津々のご様子

服着てるし、下半身は無いから別に何も問題はないのだが…

ベットの中を足から覗き込まれると言うのは何か来るものがある

なので、"きゃー恥ずかしー////"なんて言ってみたら

ふふふふふ…と、同人のおっさんみたいに返してきやがった

そうやって少し騒いでいると


「普通に元気そうだねぇ

 りんご持ってきたけど、食べ…る…?」


嫌なタイミングで来やがった

俺たちを見るや否や勢いよく扉を閉めるし

なんか外で悶えてるっぽいし

どーしよ、これ

水と目を合わせ、もう一度閉じられた扉を見つめる

焦ったように駆け寄った水によって扉が開けられると、やはり頭を抱えてしゃがんでいた


「nnnn何もみてないよ!うん!何も!本当に!何も!!」

「違うの!これは…そう!現状確認。うん。」

「わわ、分かってるよ!そうだよね!うん。」


勝手に勘違いして、勝手に焦って、勝手に二人の世界作りやがって

病人はこっちだぞ

早く付き合っちまえよな、ったく

とりあえず入れて座らせた

こいつは詩卿(しきょう) 輝間(てるま)

優しくて朗らか、顔立ち悪くなく、本人は気づいていないが一部女子からの人気もある

誰とでもラフに接するが、クラスの中心という訳ではない

いわゆる中段・二軍と呼ばれる立ち位置にいる

そして、こいつは水の事が好きなのだ

まじでこいつだけには見られたくなかった


「まぁなんだ、悪気は…あったかもしれないが

 やましい気持ちはミリも無かったぞ

 それに聞いてるんだろ?俺の症状」

「わかってるよぉ…水はよくふざけるから

 でもあの体勢はさぁ…

 それに知らないよ、(れい)の症状

 水に聞いたのは君が入院してるって事だけ」


水を睨む

"てへっ"ってしてる

"てへっ"じゃねぇ"てへっ"じゃ

ほらまた輝間がオドオドしてるじゃねぇか

今は怒っても仕方ない、とりあえず誤解は解いとかないとな

俺は布団をどかし、体を見せた

驚き、戸惑う輝間とは逆に水は目を輝かせている

一般人の反応としては輝間が大正解


「おばさんには聞いてたけど…何これ〜ww

 やばいwwすっごい面白いwww」

「接合部?は黒いモヤみたい…

 どうなってるのこれ…痛くないの?」


面倒くさかったが、説明しない訳にもいかない

話してる最中、ずっと笑われてた

ムカつくわぁ


「ねぇ、これ触ってみてもいい?」

「あぁ、別にいいぞ

 減るもんでもないしな」

「何だろうこの感覚

 確かにそこにあるし、触れているように見える

 でも触ってる感じはない…」


やばい、輝間が考え込んでしまった

大抵のことじゃ止まらないんだよなぁ

日も落ち始めてるし

よし、帰ってもらおう

久々に騒がしかった

入院生活が始まってら人と話すことはあれど親か看護師くらい

やっぱり友達と会話するのは楽しいな

それから日は沈み、時計の針は10を指していた

もう寝るか

リズムだけ見てればとんだ健康児だな

やり場のない少しの怒りを自らを嘲笑することで和らげている

この生活はいつまで続くのだろうか

ため息混じりに目を閉じたその瞬間

一瞬、一瞬だけ見えた

この病院ではないどこか

この時の俺は、混じり合った数多の感情が見せた幻覚だとしか思わなかった

理解していなかったこの現象の事の大きさを

それを知るのは、まだ少し先の話

ただ一つだけ理解(わか)っていたのは


「意味がわからん」


ただそれだけである

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