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第七話「運命様と家族」

「では始めましょうか」目の前にある豪華な椅子に腰掛け腕を組む。

その先程とは違う面に思わず尻込みしてしまう。「まずは面接から」


「この世界には現在天使と人間がいます」ペラペラと口八丁手八丁に語るパリス。

「ですが…近年人間のみの国を作り天使と対立しているらしいですよ」

「ちなみに私たち天使は人間と共存したいと思っています」

こほんと咳をしてふぅと息を整える。「あなたはこの話を聞いてどう思いました?」

突如賽が投げられた為口ごもる。「人間が良くないと思います…」

「本当に?」顔を近付けられ至近距離で目と目が合う。

「…えぇ」「なるほど…まぁ…意見は人それぞれですよね…」

しゅんと顔を下げ、まるで私の回答が不正解とでも言わんばかりだ。


「では次の質問です」キリっと背筋を伸ばし褒めて貰いたいが為頑張る子のようだ。

「このホープ魔法学園に来た理由は?」「……」そういえば何故だろう。

学校なんて言葉でしか聞いたことが無かった。前世の私には行く資格がなかったから。

「もしかして今まで親の言いなりで過ごしてきました?」その言葉にぎくりとする。

確かに…家庭教師も悪魔討伐も全部ゼウスの言いなりで動いていただけじゃないか。

思えばミカエルの骨折した時だってそうだった。

追えと言われなければ治療を優先していたかもしれない。…いいや違うな。

「…もしかして図星でした?」「違う!」突然の大音声でびくりと肩を震わしている。


「確かに私は親の言いなりになっていた部分もあるんでしょう」「ほら…やっぱり」

「ですが!」パリスの言葉を遮る。

「唯一友と呼んでくれた者の為に立ち上がったことがあります」

「ほぅ」興味を引けたのかじっくりと耳を澄ましているのが分かった。

「弱く知識も疎いもので結局は友に助けられ五年程

眠っていたらしいのですが…後悔はありません」話をさせる間もなく語り続ける。

「あのときの行動は決して間違っていないと現在も考えています

私の弱さが招いた悲劇です」


「なので!この学園で私を強くしてください!

もう負けたくない!悲しませたくない!これがホープ魔法学園に来た理由です!」

「…なるほど…色々とありがとうございました」紙にそそくさと何かを書き込む。

「面接はこれで終了です

お疲れ様でした」ぺこりと礼をされたためこちらも返す。大丈夫なんだろうか。

この反応…もしかすると不合格になるかもしれない。「大丈夫ですよ」

「どーせ明日の実技で皆ひれ伏すでしょうから」頬を膨らませやさぐれな態度。

「悔しいですけど…あなたの内なる実力は本物です」

だが、その目には確かな輝きがあった。「昼頃迎えが来ます」

パリスの手から投げられる物を慌てて鷲掴みするととげとげとした感触が襲う。

「それは向かいにある女用の寮のカギです

既に許可は取ってありますのでご心配なく」

一言独話のように喋ると素通り部屋から立ち退く。「気張ってください」

ぽつりと、そう聞こえた気がした。「はい」


「あ~!疲れた!」あの部屋の重圧は凄かった。学校というのは怖い場所だ。

ひとまず、中々の好印象だったのと思う。

寮なんて初めてだな。心が躍る。



……実は先程から誰かにつけられている。

気晴らしにと話題を考えてみてたのだが落ち着くわけがない。「…あの」

偏執狂のような人はそそくさと退散。もうついてこないといいのだが…。



あぁもう!眼鏡まで装着しだして何なんだこいつは。バレバレなんだよ!

バレていないと思っているのか、またもやつけられている。

「さっきから何なんですか!いい加減顔を見せてください!」

「眼鏡を浮かせる魔法」「・・・ーー・|」


遮る眼鏡を退かす。「あぁ…!まって!」非常にまぬけな姿だ。

だがそこにはヘーラーの素顔があった。

少し老けただろうか。だが、この程度で分からぬ程子は甘くない。

「久しぶりですね…」不器用な笑みを浮かべる。

相変わらずの口下手なのかそれっきり黙ってしまった。「なんで…ここに…」

「あの方が怖かったのですよ…」「怖い?」

「場所を変えましょうか」


花の咲く小奇麗なお店に到着した。

こういう建物は初めて来るもんだから自然と心が躍る。「お待たせしました」

クリームがふんだんに使われたショートケーキ。上にある酸味たっぷりのイチゴ。

共に出された紅茶も良い香りだ。「あの方はまるで全てを見透かしているようなんです」

不器用ながら口を開くヘーラーを見て紅茶を取っている手が留まる。

「たまに何処かに赴けば帰ってくるなり電車だの車だの

訳の分からないこと仰るのですよ」呆れた顔。目の奥底は畏怖しているようにも見える。

「以前から予測をするような発言も踏まえて私は考えました」

「平行世界が存在していて彼は唯一次元を行き来できる者であると」

「もし事実なのだとしたら何かいけないことを目の当たりにしているようで

怖くて怖くて…それで遥々ここまで来て教員をしているという訳です」



「失格」




「……そういえば明日の実技頑張ってくださいね」「えぇ…知っていたんですね」

「当たり前です…あなたは教師を何だと思っているのですか…」

割と真剣に諭されるもんだから戸惑いを隠せない。

でも懐かしいな。思えばヘーラーは変に真面目だった。

「そういえば…明日の実技の内容って何でしょうか?」「えっしらないんですか」

あっと口を開き驚く。「あの方は変人ですからね…忘れるのも仕方ないか…」


こほんと咳払いをしキリっと教師としてのヘーラーが目に映る。

「明日…この天界を救うとされる四騎士のうちの一人と戦いをしてもらいます」

四騎士…。いかにも強そうだ。私なんかが相手になるのか?というか普通に怖い。


「これは教師としてではありません」「家族として…です」


「死んでも勝ちなさい」そうは言うがな…。

私は戦闘経験のない生まれが良かっただけの一般人だ。


どうなることやら…。

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