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第六話「パリスの審判」


「財布は持ったか?」「えぇ」「ハンカチは持ったか?」「…えぇ」

「悪い男には靡くなよ?」「………心配性すぎです」「あはは…すまんすまん」

たははと冗談交じりに笑うゼウス。決意を固めた日から一か月程経過した。

以外にも推薦状はすんなりと通り、学園側も受け入れる体制が出来ているようだ。

ひひんと馬の鳴き声がする。「きたな…」ゼウスの視線に沿って視界を移動させると

二頭の馬がぜぇぜぇと息を荒げながら馬車を運んでいた。「頑張れよ」

肩をぽんと押される。後ろを向くと、ゼウスは泣きながらも嬉しそうな顔をしていた。

「えぇ…お互い頑張りましょう」短く言葉を交わすと、二人は反対方向に歩き出す。

「あ…そうだそうだ」思い出したかのように口を開く。

「エイビスにはヘーラーが住んでいてな…魔法学園に赴けば

嫌というほど会うことになるだろうから気が向いたら話しかけてやってくれ」


馬車に足を運ぶ。以外にも乗り心地が良く、思わず寝てしまいそうだ。

「行きますよ」御者はそう言うと鞭で馬を叩き、ゆったりと進行する。

一時間ほど経過しただろうか。がたこと揺れる馬車に身を委ねながら辺りを見回す。

「だだっ広い…」前世と比べるとここは何もない。

青々と茂る草木。微かに聞こえる歌声。家の一軒も見つからないのだ。

「…エイビスはここよりも賑やかでしょうか」ふと、足のない御者に尋ねる。

「そうだね…少なからずここよりは娯楽があると思うよ」「そうですか」

「ゼウス様ってば昔はこんな人じゃなかったのに…」懐かしそうに語る御者。

「いつから孤独を好むようになったんだろうね」さみし気な後ろ姿。

そんな後ろ姿を眺めながら申し訳なさに駆られつつも眠りにつく。



「ん…」良い匂いが鼻を刺激する。目を開けると大きな街が目に入る。

いや、目に入りきらない。まるで未来の人工物じゃないか。

「ここが…エイビス」思わず息を呑む。

馬車は何事もないようにのそのそと城門へと進む。「待て!」


羽の生えた門番に止められるも御者は巧みな話術で事なきを得たようだ。


内部は外で見るよりも圧巻だ。空を飛ぶ羽の生えた……鉄…?

「あれはね…飛行機と言うんだ」身を乗り出す私に御者は喋りかける。

「へぇ…すごい」「飛行機はね…ゼウス様が発明したんだ…例えばあれだって」

御者の指さす方向には赤い字でらーめんと書かれた看板があった。

匂いが食欲を掻き立てる。「あれってなんですか?!」

目を光らせ辺りを見回す私がツボに入ったのかくすりと笑う。「食事をするところさ」

「汁の中に麺があってね…とっても美味いんだ」

食欲がそそられる説明ではないが、良い匂いが思わず腹を空かせる。



数分経過しただろうか。建物が選り取り見取りで見てるだけでも楽しめる。

「到着したよ」はっとその一言で正面を向く。

そこには赤色の倉庫を彷彿とさせる建物が目の前にあった。

「ここが…ホープ魔法学園…」思わず体が硬直する。「頑張ってくださいね」

今だ後ろ姿のみで顔は見えぬが応援してくれていることだけは確かだ。

「頑張ります」そう一言発して内部へと入る。


「ようこそぉ!」大門を開けると星型の眼鏡を掛けた少女が現れた。

蝶が飛び出し虹がかかる。どこからか水があふれ出し髪がべちょべちょだ。

周囲の生徒もぽかんと大きな口を開けて両者を交互に見る。

「……?」何が何だかという顔。それはこっちのセリフだろう。

「あ…え…えっとごめんなさい…」涙目になる少女。こちらが悪者みたいじゃないか。

「歓迎してくれたのは嬉しかったですよ…」魔法でタオルを作り出す。

「それで…推薦状を出したペルセポネなのですが」髪をごしごしと拭く。

「あぁ知っていますよ!詳しくはこちらで話しましょう!」腕を掴まれる。

何処かに連れていかれ大きな扉の前まで到着した。

そのまま中へと導かれ椅子に座らされる。「ここで待っていれば良いんですか?」

「いえ!現在進行形で始まっていますよ!」「え?」

「あぁ!そうでしたそうでした!自己紹介がまだでしたね!」眼鏡を外し美貌を晒す彼女。

スカートをたくし上げる。見事なカーテシーの動作は思わず惚れ惚れしてしまう。

「このホープ魔法学園の理事長を務めさして頂いております」


「パリスと言います…以後お見知りおきを…」


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