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第五話「いろいろ」

決して触れぬ神への恋。

取り除く花束。 心の傷。 これら神になった証。 手を握る暖かな感触。 

無神経無反応不愛想。 水仙の咲く山。 妖精たちの花冠 これら神になった証。


「これら神になった証」

友情謙虚無邪気。


この記憶を返してください「う…うぎゃぁ」


目覚めると見慣れた天井が目に入る。私の自室だ。

頭がぼやけ意識が遠のく。何か重要なことを忘れている気がしてならない。

ひとまずゼウスに会いに行こう。もそっとベットから立ち上がる。


仕事部屋へと顔を出すと、うつ伏せになりうめき声を荒げる弱弱しい父の背中があった。

「お…おとぅさま…」うまく発音できなく擦れた声を出すと

ゼウスがゆっくりと顔を上げる。「あぁ…ペルセポネか…愚かな父で申し訳ない」

涙目の下にはクマが出来ていた。

山積みの書類を退かし、私の目をじっと見つめる。

何度も自分の行いを悔やんだのだろう。責められたのだろう。

思わず私まで泣きそうだ。だが、その目に少し違和感を覚える。

涙は既に引っ込んでおり、まるで予想していたと言わんばかりの動作だ。

……思い違いだろうか。「あのあと…なにがおこったんですか…?」

「ミカエルがお前を抱きかかえて帰ってきてな…一言いったきり

何処かへ消えてしまって私も何が何だが分からないのだ…」


「あとは…手紙を渡されていた」ゼウスの手から古臭い手紙を渡される。

少し黄ばんでおり、独特な臭いが鼻を突く。「ずいぶんとふるいですね」

「当たり前だろう…四年も経ったのだから…」しかめっ面なゼウス。

「…え」部屋の隅にある全身鏡に目を配る。

母親譲りの黒い髪。少し膨らんだ可愛らしい胸。

自分で言うのもなんだが、かなり美少女な外見へと変貌していた。

滑舌もなんだかよくなった気がする。

「そうだったんですね…」「随分と飲み込みが早いな」

前世で既に精神が完成していて良かった。記憶を残してくれた神に感謝だ。

「まぁ良い…お前はこれからどうするつもりだ」

「ひとまずお母様にもご報告してこようと思います」「やめておけ!」

ばんと机を叩く。少しの悲鳴を溢すとゼウスは溜息をつく。

「悪かった…私のせいでヘーラーとは少々仲違いしてな…今この家にはいないのだ…」

だからあんなに落ち込んでいたのか。父の体が少し小さく見える。

何があったのかは分からないが、きっと苦労したのだろう。

「分かりました…ひとまず一人で考えてみようと思います」「あぁ…」


短く言葉を交わし部屋を出る。「何度私は間違えるのだろうな」

ぼそっと一言聞こえるが、あえて触れないようにしといた。



自室に戻ってきた。戻る途中、染みの付いたカーペットがあった。

メイドの数が明らかに減っており、経済状況が良くないようだ。

所々掃除も行き届いていない。「どうしたものか…」

あんなにおしどり夫婦だ。小競り合いで別居とは考えにくい。

うんと悩んでいると、ふと手紙が目に入った為中身を覗く。


「旅に出ます。

私が弱いから死の淵に立たせてしまいました。

もっともっと強くなって、大天使になってから再度会いに来ます。

きっとその頃にはペルセポネちゃんはたくましくなっているでしょう。

魔法の成長に行き詰っていると感じたら

人と天使が賑わう「創造都市エイビス」にあるホープ魔法学園に訪れてみてください。

ゼウス様が推薦状を書けば待遇は良くなります。

これから苦難もあるでしょうが頑張ってくださいね。

あなたの親友のミカエルより」


文字を一つ一つ噛みしめる様に熟読する。何故私に何も言わず出て行ったのだ。

分かっている。そんなことは無理だと分かっている。悲しみがあふれ出しそう。

だが、それ以上に嬉しかった。必要とされず十歳程で肉親に捨てられた。

何十年も体を売り、時には自ら奴隷として志願した私が

今この瞬間ある一人の大切な人となったのだ。「う…うぅ」

生まれてきたときも決して泣かなかった女が初めて泣いた。

嬉しかった。親友なんて作り方すら分からなかったんだよ。本当にありがとう。

「よし!決めた!」鼻水をぐじゅぐじゅと拭きながら決意を固める。


「お父様!」どんと扉を開くと相変わらず具合の悪そうなゼウスがいた。

「あぁ…?なんだ…」予想だにしなかったかの様にかっと目を見開く。

「私をホープ魔法学園へと行かせてください!」「おぉ?」

虚ろな目の奥がだんだんと輝きを取り戻し、私の知っているゼウスへと戻る。

「…ぁあ!あぁ良かろう!ペルセポネ!お前に試練を課す!」

どんと大きい声がこだまする。自ら提案したことなのに思わず息を呑む。

「ホープ魔法学園へと赴き首席で卒業しなさい!」



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