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第三話「家庭教師のミカエルちゃん」


昨日はとても慌ただしい夜だった。

ゼウスは酔ってメイドに尻を触るなどセクハラをしてしまい

それを見たヘーラーはかんかんに激怒。

ゼウスが土下座をする事態にまで発展して思わず笑ってしまった。

「…きのうはたのしかったなぁ」


「起きてるか?!」突如どんと自室の扉を開けるゼウス。

「お!おとうさま?!なんですかいきなり?!」

流石に無神経にもほどがある。着替え中だったらどうするつもりだったんだ。

「家庭教師が下で待っている!すぐ準備してくれ!」「は…はい…?」


少し洒落たドレスを着て玄関で待つ。

「え…えっと…私はどうしたら…」「魔法を教えてくれるだけで良いんだ」

「ゼ…ゼウス様の頼みなら…」「あぁ!助かるよ!」

扉の先でこしょこしょと話が聞こえる。「………!」「……」

よく聞こえないな…。扉に耳を当てていると、ばんと扉が開く。

「いた!」扉にぶつかった衝撃で、おでこに掌を擦っていると

目の前には可愛らしい恰好をした一人の少女がいた。

「ホープ魔法学園から研修生として来ました!ミカエルと申します!」



そよ風が吹く、心地よい庭に到着した。

「さっきはごめんね…」「いえ!だいじょうぶです!」

本当はゼウスが直接指導したかったみたいだが

中々に忙しく休みが取れない為、たまたま見つけたミカエルを仕方なく雇ったらしい。


「改めまして!私はミカエルです!好きな食べ物は果物全般!よろしくね!」

勢いの良いお辞儀。どこか抜けているが、しっかり者そうだ。

「ぺるせぽねともうします」舌足らずに一音一音意識しながら声を出す。

「ゼウス様から聞いたよ!とっても魔法が上手なんだって!」

掌を地に構えるミカエル。「早速だけどお手本を見せるね!」

「お花が生まれる魔法」「ー・ー・・ー」

地面からぽこぽこと音を出しながら土を突き抜け

可愛らしい花が姿を現した。「これできるかな?」

ちょっと簡単すぎるんじゃないか?これくらいなら出来そうだ。

「花が地面から出てくる魔法」「・-・・||・ー・」

土を突き抜け根を生やすが、どうにも成長が止まらない。

「ちょっと?!これどうやってとめるんですか?!」

「えぇ…!わ…分からないよぉ!」

あわあわと二人で慌てふためいてると植物の成長は止まっていた。

だが、これは花と言えるのか?まるで大樹じゃないか。


「大したこと教えられなくてごめんね…」

「いえ!ごしどうありがとうございます!」

花にもたれかかり、少し早めの小休憩をしている。

あの大樹みたいな花…どうしようかな。ゼウスとヘーラーに怒られなければ良いが。

「本当に…ペルセポネ様はすごいや…」

自信なさげに、ぽつりぽつりとつぶやくミカエル。

「…どうしてみかえるさんはかていきょうしをしぼうしたんですか?」

突然の質問にミカエルは戸惑っているようだ。少し間を置いた後、口を開く。

「この世界には百年に一度…大天使を決める大きな大会があるんだよね

毎回何千万の天使が応募するんだけど…民衆の信頼に個の実力が求められる…

そして…たった三人しか大天使にはなれないんだ」


「私は大天使になって世界を平等にしたい

力をつける為に志望したっていうそれだけの理由だよ」


「すごいです!」「え?」きょとんと目を丸くするミカエル。

「だってそんなせまきもんにみかえるさんはいどもうとしているんですよね!

それだけでじゅうぶんすごいですよ!」

ミカエルは黙り、体育すわりをしながら足に顔をうずめる。

まずい、年下の分際で上からものを言うのは良くなかったか?

「すみません…なにかきにさわることでも…」

そっと顔を近付けると、ミカエルは鼻水を垂らしながら泣いていた。

「そんなこと…初めて言われたよ…」顔をぐしゃぐしゃに濡らしている。

「よし!」ふんと鼻を鳴らすと、鼻水を袖で拭き勢いよく立ち上がる。


「実は私ね!魔法より剣の方が得意なんだ!」「よいしょ!」

腰の鞘から剣を引き抜く。

そんな軽い掛け声とは裏腹に大樹のような花が瞬く間に細切れになっていた。

「す…すごい…」…うん…?どこかで風切り音が聞こえる。

ふと、上を見上げると大きな茎が空から落ちてきていた。

これに当たったら軽傷じゃ済まないぞ?!咄嗟にしゃがみ込む。

「大丈夫?!」慌てた様子のミカエル。

上を見上げると茎は微塵切りにされ、パラパラと宙を舞いまるで花びらのようだ。

「あ…ありがとう…」「いや!本当にごめんね~!」

少し会話が解れ、砕けた言葉遣いになっていた。「あら!」

後ろを向くとヘーラーが口をぽかんと開けている。

「ミカエルちゃん?!うちの子をそんな危ない目に遭わせないでくださる?!」

「お…奥様~申し訳ありません…」しゅんとした顔。

そんな顔を見て、少し罪悪感を感じたのかヘーラーは少し口籠もる。

「えぇぇとぉ…あ…!ミカエルちゃん!朝ご飯の支度が出来たらしいですわね!」

ですわね…?ヘーラーも慌てているようだ。

「そ…そうなんですね…?」何が何だかという表情。

「たぶん…おかあさまはごはんにさそっているんじゃないですかね…?」

すかさずフォローをかます。ヘーラーが口下手なのは子が良く知っている。

「えぇ…?!いいんですか?!」

「えぇ!もちろん!この屋敷にいる限りあなたは家族同然よ!」

「やったやった~!貴族様の食事なんて初めて食べます~!」

ぴょんぴょんと喜びを隠しきれないようだ。

「ではいきましょうか」ミカエルの手を取る。

「そ…そうだね!行こうか!」照れくさそうに頬を搔いていた。

嫌ではないようだ。手を繋いだまま食堂へと向かう。

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