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第二話「エンジェルナンバー」


この世界に来てから五年ほど経過しただろうか。二足歩行が出来るようになり

今では舌足らずだが何とか喋れるまで成長した。

「おとうさま!きょうもまほうのくんれんおねがいします!」

仕事部屋で書類の整理をしているゼウスに話しかける。

最近気付いたのだが、天界には現世に無い特別な現象があるらしい。

名を「魔法」という。なんだかカッコいい響きだ。

魔法を深く理解している者は地位が高く

魔法を浅くしか学べていない者は平民か奴隷になるらしい。

本気で生きていくと決めた私には乗り越えなければならぬ大きな壁なのだ。

「いつもの訓練だな!いいぞ!この偉大なる父が直々に教えてやろう!」

にやにやと小動物を見る目でこちらを凝視する。ちょっと気持ち悪い。

ゼウスは山積みの書類を宙に浮かせ、ぽんと棚へ置く。

崩れることもなく見事な魔法技術だ。「ついてきなさい!」


庭へ到着した。庭というより平原か?どんだけ金持ちなんだ。

「魔法はイメージの世界だ」

「光の速度で槍を空から降らせる魔法」「・」

そう一言発すると音速で一つの槍が空から落ちる。

地面が抉れ強風が吹き、思わず飛ばされてしまいそうだ。

手をばってんに組み、風を必死に防いでいるとゼウスは何事もない様に平然と語る。

「「音速」「槍」「宙」をイメージした

呪文も慣れると短縮することが可能だろう」


魔法の使い方は「イメージ」らしい。思い描く物を意識、集中することで

体内の魔法陣が完成されて魔法が完成する。

あとは自然と頭の中に出てきた単語を唱えれば良いみたいだ。

「お前もやってみなさい」強風が止み自然と目を開ける。「わ!わかりました!」

「はぁぁ!」情けない声を荒げる。手元が発光して、何だかいけそうな雰囲気。

「光線魔法」「・・・ーー・・・・・ーーー・・・・ー・・ー・」

可愛らしい、ぴょろっと尿のような光線が出てきた。

ゼウスはがははと豪快に笑っている。「おとうさま!わらわないでくださいよ~!」

少し頬を赤める。「はっはっは!だが!中々良い滑り出しだぞ!

もしかしたら私をも超える才能の持ち主かもしれんな!」髪をぼさぼさと撫でられた。



メイドからの座学を学び、夜ご飯を頂き自室に戻ってきたところだ。

あの後も何度か練習してみたが一向に良くならない。

「イメージ」か。この世界のことは良く分からないな。

こればっかりは人生経験を積まないと難しいのだろうか。

「あしたもがんばろっと」そんなことを考えながら眠りにつく。



今日もいい天気だ。小鳥がさえずり太陽が燦々と煌めきながら地を照らす。

ボケっと寝ぼけながら部屋の扉を開ける。朝ご飯を食べに行こう。

何故かこの体は腹が空かないが料理が美味しいため

どうしても舌鼓を打ちたくなってしまう。「おはようございます」

偶然部屋の目の前を通ったメイドに話しかける。

「え…えぇおはようございます…ペルセポネ様」

なんだかよそよそしい。「では…これで…」

配膳ワゴンの上にクローシュを大量に載せてそそくさと退散。

「あ…え…えとお気を付けて…」小走りのメイドに軽く手を振る。もやもやするな…。


煌びやかで大きなテーブル。いつものように朝食を頂く。だが様子がおかしい。

メイドはよそよそしいし、ヘーラーとゼウスも空返事だ。

何か悪いことでもしてしまっただろうか。


「はぁ…わたしなにかわるいことしたかなぁ…」風そよぐベランダで一人黄昏る。

もしかして転生者なのがばれたのか?私ってもう不必要なのかな。

涙目になりながら意識がうとうとし始める。


「ん…」気付けば寝てしまっていたようだ。

「…まずい!」すっかり夜ご飯に遅れてしまった!


階段をすたすたと小走りに降りる。

「すみません!おくれました!」扉をがたんと開く。

「お誕生日おめでとう!!!」紙吹雪が宙を舞い、ぱちぱちと祝いの音がやまない。

「ふぇ?」メイドやゼウスが祝福してくれている。

普段無表情のヘーラーもにこりと笑みを浮かべているではないか。

「はっはっは!睡眠薬の効果がちと強かったみたいだな!」

がははと笑うゼウス。もしかして薬を盛っていたのか?

少し怒りが沸き上がるが、こういう人なので我慢する。

「ペルセポネ…五歳の誕生日おめでとう…」ヘーラーにぎゅっと抱きしめられる。

か細い腕だが力強く、思わず切なくなってしまう。

これが前世の母だったらどれほど良かったか。…って何を考えているんだ私は。

不愉快な思い出を必死に頭の隅に追いやる。


「五の数字は変化が訪れるという意味!

ということで私たちからのささやかなお祝いを授けよう!」

「は!はい!おとうさま!」


「お前に家庭教師を付ける!」「あ!ありがとうございます?!」

いきなりの言葉で少し頭がこんがらがるが、善意で用意してくれたことだ。

ありがたく頂戴しよう。「今日は楽しむぞ!!」

ゼウスの一言で周囲の人々が歓声を上げる。


あぁ!今日はとことん楽しむぞ!

そう意気込み、目の前にあるたくさんの料理へと足を運ぶのだった。



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