9話 王国と襲撃①
男の行動で、互いを理解し始めたフランメとノルス。そんな2人は今………喧嘩をしていた。
「だーかーらー。無詠唱魔法の使い手なんて、王国に行けばいくらでもいるんたよ!」
「少なくともあの村では重宝されるべき人材だろうが!」
ノルナと男は、どうしてこうなった……。と言わんばかりの顔で2人を見ていた。
ノルナの回想
「……いや、なんだ…済まなかった…」
「いや…このことに関しては、私に非がある。」
やっぱり仲良い。初めて会ってそこまで経ってないのに。
「まぁ。剣は扱いやすくて強力で、魔法は1つの術を強化出来たり…どっちも、いい所はある。」
「そうだな。魔法は欠点なんて詠唱ぐらいだが、剣術は当たんなきゃ隙だらけで、剣が無かったら戦えない。」
「まぁ、私は無詠唱だけど…」
「んなもん、王国に行けば腐るほどいる。魔剣術使える方が凄いだろ。」
「私は無詠唱凄いなんて言ってないけど…自分が馬鹿にされたと勘違いして、自分の能力を自慢しちゃったの?」
2人は同時に笑った。
「「……フッ」」
2人は口だけ笑顔から、物凄い形相に変化した。
「そもそもお前の無詠唱なんてただの時間短縮じゃねぇーか!」
「時間短縮は魔法使いにとってかなりの戦力になるんだよ!そもそもなんだよ魔剣術なんて。」
「知らねぇのかよ!魔剣術は制作過程ではなく戦闘中に魔力を流し攻撃力を底上げする術の事だよ。」
「それのどこが凄いんだよ。剣に魔力を流し込むだけじゃねーか!」
「ほとんどの剣は魔力に耐性がないんだよ!だから魔力を流しすぎてぶっ壊れる事もあるんだよ!」
「だったらなんだよ。そんなの言い訳だろうが!魔力の流し方を調整するんだよ!」
「そんな高度なこと出来るやつ居ねぇーよ!」
「剣しか触ってこなかったツケが回ったんだろ!」
「無詠唱なんて才能なしで出来る事じゃねぇーか。魔剣術は才能無しに出来るもんじゃねぇーんだよ!」
「自分が出来ないからって相手に当たるなよ!」
…………
そして今に至る。
「お客さん。もう着きますよ!口喧嘩は宿でしてください!」
空が暗く、星が輝き出した頃。馬車はグリモア王国の貿易都市、シャルムに近づいていた。
2人は男に口出し出来ないため、また黙ってしまった。
2人は仲がいいと、内心思うノルナなのでした。
―
『グリモア王国に唯一存在する貿易都市、シャルムは魔法学園や大図書館があり、ゲール帝国との貿易で、魔剣などの魔道具も造られている。シャルムにある大図書館はリストと呼ばれ、魔法学園内に存在するシャルム内で2番目に大きい建物として知られている。本の多さや扱い易さから評判も良く、様々な研究者がその図書館だけに本を出版する話を学園に持ちかけている。
リスト大図書館は学園が運営しているにも関わらず、一般人の使用許可が出されている。また、本の貸し借りだけでなく、本の販売も行っているため、リストだけにある魔術書を買うために王国内から人が集まることもある。
僕達もその1人。』
貿易都市シャルム 検問
「今日は何をしに?」
男性の兵隊が馬車を動かす男に問いかける。
「リスト大図書室に…後ろの人が…」
「……なるほど…1度出ていただいてよろしいですか?」
「「「はい。」」」
僕とノルナとフランメは馬車を出て、兵隊の前に並んだ。
「冒険者の方は登録証をお見せ下さい。」
「「はい。」」
僕とフランメは登録証を見せた。
「……はい。確認しました。」
僕とフランメの登録証を見た兵隊は、ゆっくりと頷いた。
「では子供1人。大人1人で、通行料銀貨4枚になります…」
「はい。」
後ろのポケットから銀貨20枚と、金貨10枚の入った袋を取り出し、銀貨4枚を手渡した。
この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨の3つに分かれている。
銅貨は日本で言う100円玉、銀貨は1000円札、金貨は10000万円札の価値がある。
国ごとに通貨の柄が違うことはあるが、価値に差は無い。また、同盟国や連合国などは通貨の柄が同じになる事がある。
グリモア王国とゲール帝国は同盟国にあり、通貨の柄が同じになっている。
「…確かに。では、このままお進み下さい。」
「ありがとうございます。」
3人は馬車に乗り、男は馬車を進ませた。
―
辺りは暗くなりかけていた。
シャルムは広く、中心から北東に離れた所にリスト大図書室はある。ちなみに、魔法学園はリストと真反対の方向にある。地下1階から2階まであるリストはピラミッドのような形をしている。
「ここ?」
「そう。」
魔術書はリストの2階にあり、入場に料金がかかる。
「なんでこんな所にお金が…」
「2人しか居ないんだし…」
「だって2人で銀貨6枚!」
「声が大きい。」
「あぁ、ごめん。」
フランメは宿、僕とノルナはリストに居る。
「どの本?こっちはもう決まったよ…」
「もうちょっと…あっ、こっちもいいな…」
僕の本は金貨1枚で購入可能。本購入に制限は無く、誰でも金を出せば購入可能。僕は3冊購入するつもり。
「……よし!決まった。」
「いくら?」
「えーっと……こっちが金貨1枚。こっちが銀貨3枚。」
「合計金貨4枚と銀貨3枚。全然買える。」
僕とノルナは本を持って会計口に向かった。
―
「これ、よろしくお願いします。」
「ご購入ですね。合計で…金貨4枚と銀貨3枚です。」
「はい…」
僕は袋から金貨4枚と銀貨3枚を出した。
「ちょうどお預かりします。」
「ありがとうございます。」
「またのご利用お待ちしております。」
僕とノルナはリストを出た。
「………なんか書店みたいだったな…」
「ショテン?」
「いや、こっちの話。」
―
「おう。」
「よう、フランメ。」
宿に着いた時にはもう夜。
「ノルナは2階の1番奥。」
「はーい。」
ノルナは2階へ向かった。
「代金はもう払ってる。銅貨10枚。つまり銀貨1枚だ。」
「うん。それで私の部屋は?」
「その前にちょっといいか?」
「うん。」
フランメは僕に話しかけた。
「お前?冒険者ランク上げたか?」
「え?上げてないけど…」
「魔物襲撃時、2人の命を救った事から、ランクを上げれるようになったんだ。」
「でも今夜だぞ?」
「冒険者ギルドなんて何時でもやってるよ。」
「分かった。でもその前にノルナに言わないと。」
「じゃ外で待ってる。」
「はい。」
僕はノルナに本を渡して行こうと2階に行った。
「確か…1番奥。」
ノルナの部屋に入ると、ノルナはもう寝ていた。
「この本に書いとけば良いか。」
僕が買ったのは通信用の本。本に書いた事が、もう1冊の本に自動的に書かれる。メールみたいなもの。だから最初の何ページ以降は何も書かれていない。この本を2冊買い、繋がるようにもなった。1冊置いていき、もう1冊は、浮遊と透明化で隠す。その本に冒険者ギルドに行くと書く。これで完璧。
―
僕とフランメは冒険者ギルドでランク上げの手続きをしていた。
「これでランク上げ手続き完了です。」
「ランクCってなんかあるんですか?」
「良くぞ聞いてくれました!」
「…えっ?」
僕だけ窓口で行っていた手続きは完了し帰っても良かったのだが、変な質問で相手のスイッチが入ってしまった。それにしてもこの女性…怖い。
「ランクはE.C.D.B.S.Aの6段階に分かれていて、クエスト達成と同時に、ランクを上げることが出来ます。ランクを上げる事に、高難易度のクエストも受けれるようになり、大きな依頼も受けれるようになります。また、クエストを定期的に受けないと、ランクが落ちたり、冒険者メンバーから外されたりします。その他にも…」
「分かりました!すみません。分かりましたから。」
「そうですか…」
少し落ち着きを取り戻した女性を見ていると、後ろの方から声が聞こえた。
「おーい!」
その声は次第に大きく感じる。
「おーい!村に!アンデッドが!」
アンデッド?襲撃はもっと先じゃ……
「アンデッドが!村に攻めてきた!冒険者の誰でもいいので!村に来てください!」
走ってきた少年は、僕たちに助けを求てきた。




