8話 自身の正体
「君。何者?」
グレイが僕に近づいて、僕の目を見て言ってきた。
「何者?どう言う…」
「君の魔力量が桁違いだ。1度奪われた魔力が、こんな短時間で回復するのも異常だ。」
確か、2週間って。
「元々の量が今の私の2倍。今の君の魔力は私の1.5倍。2週間で、君の魔力は3分の2回復した。説明できないほど、魔力に適している体。一体何者なんだ?」
この体がノルスである事が分かったのが最近。この体は人間の体ではない。魔物。探していた人が、こんな近くに居るなんて。
「私は、魔物らしいんです。」
「え?」
「そんな事はない!」
黙っていたビフトが、形相を変え話し始めた。
「お前はエルフだろ!その耳が証拠だ!魔力量が多いのだって、お前がエルフだからだ!」
「急にどうした。ビフト。」
「お前はノルナと同じ、エルフだろ!魔物なんて馬鹿なことは言うな!」
「事実だ!」
「「……!」」
久しく声を出していないからか、大声を出した途端、喉の奥がむず痒くなった。
「そんなに疑うなら、これを読め!」
僕は浮遊と透明の魔法で隠していた日記を出した。
「今…どこから…」
「そんな事はどうでもいい!ここに僕が魔物である事が書いてある!これを読めば疑いも晴れるだろ…」
「………日記………?」
日記には、ノルスの名前や正体など。ビフトが疑っている事の全てが書かれている。
ビフトとグレイが日記を開き読み始めた。
「ルヴト・ノルス。赤い目と髪。人間とは比にならないほどの魔力。なんなんだこれは。」
「でもノルス。君の目は青いし、髪も白いよね?」
「それは…分からない…」
ビフトは真剣に、日記を読んでいた。
「ノルス。この本。俺が保管してもいいか?」
「良いけど、丁重に扱え?」
「あぁ。分かっている。ところで、お前とノルナは双子なんて事、無いよな?」
「えっ?」
確かにノルナとは気も合うし、名前も、身長も、年齢は分からないけど。
「分からない。これ以上の事は…」
「分かった。ありがとう。お前が持っていてくれてたんだな。」
「え?」
「じぁな。」
ビフトは病室を出ていった。
「じゃぁ私も。ごめんね、お邪魔しちゃって。」
「全然大丈夫ですよ。」
「じゃぁ。」
「はい。」
グレイも病室を出ていった。
僕はその後、直ぐに寝た。
―
気がつけばまたもや暗闇。
今度は違う人が立っていた。
「今度は誰?」
今度は女性。白いローブを身にまとっている。
「今度?おかしいわねぇ。ここに来たのは初めてなのに…」
「ウォルドが来たんだ。」
「ウォルド?!」
女神か?ここには神しか来ないだろうし、ウォルドは6神とか言ってたから、神は複数人存在するのだろう。
「なんであいつが…」
「あのー。誰ですか?」
女性は慌ててこちらを見た。正座をしている僕を真似して、同じ正座をした。
「私は魔を司る女神。フレイよ!私の最高傑作、ノルスちゃん!まぁ、中身は違うけど。」
「最高傑作?貴方が作ったんですか?それに魔を司る女神って…もしかして6神?そのローブも…」
「うるさぁーい!」
1度質問しすぎた。
「私はノルスを作ったし、6神ではないし、このローブは私が作ったし、ししししししし…」
「分かった、分かりましたから…ハハハハハッ。」
「……何よ!」
久しぶりに笑った。心の底から。声が響くぐらい。
半分泣いた目でこっちを見てくるフレイには申し訳ない。
「すみません…久しぶりに笑ったもので…ハハハッ。」
落ち着いたとき、また質問を始めた。
「………そう言えば、ノルスを作ったんですよね。」
「そうよ。」
「ノルナも作ったんですか。」
「まぁ。正確に言えば私以外にも居るのだけど。」
「他の人?」
「ええ。大元はその人達が。私は、魔力や知力を足したの。でも、あなた、ノルナじゃないでしょ。」
ウォルド同様、この人も僕の正体を…
「番号A-2の世界。地球。」
「えっ?」
「んーあっ、流転。あの子ね。」
なんか独り言多くない?この人。
「あっ、そろそろ時間ね。」
「はいはい。これは本当になれない。ジェットコースターくらい怖い」
「そんなに怖い?無に行くの。」
「意識ありではね。」
「そうなのね。じゃぁまた。」
「はい、色々ありがとう。」
暗闇が吸い込まれ、フレイが言っていた無に来た。すぐ眠る事は分かっているが、恐怖心だけが残り続ける。
―
「…………ハァッ?!」
勢いよく起き上がる。
小屋で過ごしていた時とは違って、鳥が鳴いている。
そんな事を考えていると、ドアを走りながら登ってくる音が聞こえた。
「おはよー!」
ドアを勢い良く開ける音と、大きな声が、同時に耳に入ってきた。
「もう少し落ち着いて着てくれ。ノルナ。」
「ハハハッ。やっぱりノルスは面白い。」
毎回思うけどこの子、稽古中とオフのテンションに差ありすぎじゃない?
「今日はなんで来た?ビフト。」
「なんでバレたんだか…」
ベットの上から見て、ドアの死角にいたビフト。残念。魔力検知でバレバレ。
「いやー。ノルナが王国にもう一度行きたいと言ってきてな。」
「確か、2週間前の魔物襲撃時、ノルナは王国に居たんだっけ?」
「そうだよ!」
グリモア王国。魔法技術が盛んで、魔術書などが多く造られている。農業や学問が盛んで、世界初の魔法学園などもある。
グリモア王国の南にある国。ゲール帝国は、王国同様魔法技術が盛んで、ドワーフの技術により魔剣等の魔道具も造られている。ヘル村はゲール帝国の北端にあり、帝国で3番目に近い村として知られている。
ちなみにノルナは、魔物襲撃時、グリモア王国の最南端にある貿易都市。シャルムの大図書館で、魔法の勉強をしていたという。
「でも、アンデッド襲撃は5日後だよ?」
「今日馬車でシャムルの大図書館に行って、魔術書を買って、次の日帰ってくればいい。お前も冒険者になったんだ。ノルナに付けて明日帰ってくれば良い。」
「昨日に比べ、随分とテンションが上がりましたね。」
「ようやくこの村も落ち着いてきたからな。」
「……じゃぁ行こっか、ノルナ!」
「うん!」
ノルスは身支度を始め、交通費と魔術書費をビフトに貰ったあと、村を出た。
―
「……………なんでいんだよ!」
「良いだろうが…村長も、お前が子供だから心配したんだよ。」
馬車にはノルナと僕と、フランメが居た。
「はぁ。交通費…」
「仲良いね!」
ノルナが笑顔で僕とフランメに言った。
「仲良いか?」
「仲良いよ。2人は仲良い。」
「いーや仲良くないねこんなの。」
「なんだとぉ?君なんて魔法しか使えないじゃないかぁ?」
「フランメだって剣しか振れないだろぉ?」
2人はお互いの悪い所で口喧嘩をしていた。
「そもそもなんだよフランメって。変な名前だな?」
「それは俺のお袋をバカにしてんのか?」
「んなわけねぇだろ。」
「こちらと魔物襲撃の時、最前線で戦ってんじゃ。」
「こっちだって人助…けて…んだ…よ………。」
そういえば、僕が凍らした人ってどうなったんだ?
「ハッハッハッハッ」
前で馬を操作している男が、大きな声で笑った。
「お2人は仲がいいんですね。」
「「えっ?」」
2人は顔を赤らめながら、驚いたような声を出した。
「魔物襲撃の時は、お2人に助けられましたし…」
「えっ?」
「それは、どう言う…」
「フランメさんは確か剣使い。ノルスさんは魔法使い。フランメさんは最前線で戦い、ノルスさんは私の妻を助けてくれた。」
妻?レイズのお父さんか?
「特にノルスさんには助けられました。私は妻と2人で暮らしていたので。急に1人になると、やはり寂しいものです。」
子供は居ないのか。あれ?じゃあ僕が凍らした人って…
「私の妻を凍らしてくれたおかげで、医者の治癒魔法が間に合い、私の妻は一命を取り留めました。本当にありがとうございます。」
日が夕日になりかけた時。男はゆっくりと頭を下げ、お礼を言った。
僕とフランメは、少し恥ずかしくなり、口喧嘩をしなくなった。




