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泰平の魔物 原  作者: 敗北者
1章
7/12

7話 亡き魔物


――


 結界完成まであと4分


 魔物の量は、減りながらも増え続け、僅かな数しか減っていない。それでも、戦いやすくはなっている。


「ハァハァ…流石に多いな。」


 大剣使いが、そう言った。

 魔物の死体は、今動いてる魔物の2倍はある。その上、魔物の死体は、魔法で燃やしているため、今以上の死体があった。これは、多いという以外ないだろう。


「もう少しで結界が張れる!もう少し耐えて!」


 魔法使いが柵の入口付近で魔法陣と結界を張りながら、戦っている冒険者に言った。


――


 人影の先には、また女性。今度は生きているが、死にそうなくらいの火傷がある。魔法で女性を浮遊させながら、水で身体を冷やし、ギルドへ向かう。これがレイズの母親である確証はないが、死にそうな人を助けないほど、人間性は腐ってない。


「……うぅ…………」


 女性が苦しそうな声を出した。うなされているのか、あまり時間はかけてられないと思った。とにかく走って、ギルドに届ける。治療はその後。



 ギルド付近にあった火も、前よりはおさまっていた。


「……あっ来た!」

「あっ。」


 ギルドの地下室からレイズが出てきていた。


「危ないから、中に入って。」

「はい。」


 この女性の治療は、中に入ってからじゃなきゃ駄目そうだ。



 中の人たちは、前よりかなり落ち着いている。

 僕は女性を下に置き、治療を始めた

 治癒魔法をかけていると、女性に付いていた火傷痕が段々薄くなっていった。


「あっお母さん」

「えっ」


 やはりこの子の母親だったか。

 そう思った時、僕の体に激痛が走った。火傷があと少し残っていたが、その激痛で、治療を中断してしまった。

 そのまま僕は倒れ込んでしまい、気絶してしまった。


――


 結界が完全に完成した。


 魔法使いは、魔力の使いすぎで、倒れてしまった。


「結界は完成した!今のうちに村に戻るぞ!」


 大剣使いが大声でそう言うと、冒険者が魔物を離しながら村に走っていった。


 この結界は、結界内に一定の魔力量を持ったものを入れないというもの。もし結界内に一定の魔力量を持つものが現れたとしたら、その者の魔力が吸われてしまう。吸われた魔力は、結界を作った者に送られる。


「あれ?すごい魔力が…まさか?!」


 魔法使いの体に、大量の魔力が送られた。魔物が結界内に現れたのかもしれない。


「皆!この村の中に、魔物が入り込んだかもしれない!」

「「え?!」」


 疲れきった冒険者達にそう言った魔法使いは、徐々に自身の魔力も取り戻して行った。

 それでもおかしいのは、自分以外の魔力が、ずっと増え続けていた事だ。これほどの魔力を持った者が、何故結界内に入ってこれたのか…と、その時、魔法使いはある事を思い出した。



「なんで…知っている…」

「そりゃ分かるわよ。あんな量の魔力を持った者がこの村に入った瞬間、柵に張ってた結界魔法が反応したの。」

「…フッ。何でもありかよ。お前は。」



 あの女の子の事をすっかり忘れていた。


「ビフト」

「ん?」


 後ろに居たビフトに魔法使いが言った。


「あの子だ。」

「あの子?ノルスの事か?」

「そうよ。あの子の魔力量が、前の結界で反応した時以上だった。魔物の魔力量を上回っていた。」

「え?」

「確証は無い。でもそうでなきゃ、こんなに動ける体になってない!」


 魔法使いはビフトの腹を殴った。


「なるほど。じゃぁ、ひとまずノルスの方に、冒険者達は、魔物が来ないか見張っていてくれ。」


 そう言い、ビフトと魔法使いはギルドへ向かった。


――


 痛い。苦しい。体から力が抜けていく。もう1人の行方不明者、探しに行こうと思ったのに。体が言うことを聞かず、立つことすらままならない。

 そんな時、声が聞こえた。


「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」


 その声は、レイズの声だった。そんなに呼ばれても、目が覚めて無いわけじゃないんだよ。でもそろそろ本当に意識が…そんな時、またもや聞き覚えのある声が聞こえた。ビフトだった。


「おい!ノルス!無事か?!」


 その声が聞こえた後、僕は直ぐに眠ってしまった。


――


「クソッ。アイツら、結界なんて張りやがって。俺様の計画が台無しだ!」

「そんな事言っても仕方ありません。あの程度の魔物で、あの者がやられるなど…そんな事ありませんよ。」

「…ん?やけに関心しているなぁ?」

「えぇ。何だか面白い事になりそうなので…」


 トロールとリッチが焚き火を囲い、話していた。


「そもそも、我々の狙いは、このアンデッドをあの村へ送ること…魔物は元々用意していなかったのですよ。」

「それでも、あそこにいるやつの13人死んだぞ…」

「えぇ。貴方にしては、良くやりましたね。感心しました。」


 トロールとリッチは、そのまま話を続けた。


―――


 目が覚めた。正確に言えばそうでも無いのだろう。

 感覚がなく、辺りは真っ暗。

 そして目の前には、人が立っていた。


「気がついたか」

「えっえっ?」

「ああ。自己紹介がまだだったのぉ。ワシは6神の内、魔を司る神。ウォルドじゃ。」


 全く訳が分からない。気がつけば何も無い暗闇で。6神とか魔を司る神とか、意味のわからない言葉ばかり話す、老人が居るし。


「お主、何者じゃ?」


 ウォルドが僕に話しかける。


「何者?ぼ…私はノルス。」

「違う。お主の前世の事じゃ。」

「えっ?」


 前世?なぜ知っている?


「お主はノルスの体で何をしておる。」

「えっ?待ってください。」

「なんじゃ……。」

「この体は、ノルスと言う名前なんですか?」

「何を言っておる。お主も使っておったじゃろ……。」

「あなた。どこまで……」

「あっそろそろ時間じゃ。お主にこれだけは言っておかねば。ノルスの体で好き勝手暴れてくれるなよ。」

「えっ?」

「では……」


 ウォルドがそう言うと、暗闇は何かに吸い込まれるように消えた。僕は恐怖心が残りながら、眠ってしまった。



「…………ハァッ?!」


 勢いよく起き上がった。


「…おっ、起きましたか。」

「え?」


 隣に座っている人がそう言った。何処だ?ここは。ベットに横たわっていた。いや、寝ていた。


「2週間っと」


 えっ?何が?何が2週間なの?!


「今、村長を呼んできますね。」


 あっそっか。あの時倒れて…え?2週間?


「よぉ。」


 そんな事を考えていると、ビフトが来た。


「大丈夫か?」

「いやぁーごめんねー。」


 ビフトと魔法使いが来た。


「ん?」

「あぁ。」


 僕が魔法使いの方を見ると、ビフトが説明を始めた。


「こいつは冒険者のグレイ。」

「どうもー。へース・グレイです。」

「どうも……。」


 この魔法使い。さっき謝ってたけど…


「いやー。まさか結界に引っかかるとは…」

「え?」

「あぁ。説明しなきゃだな…2週間前、この村に魔物が襲撃した。魔物をこの村に入れないために、グレイが結界を張ったんだ。でも、その結界条件にお前が引っかかってな…」

「どうゆう事だ?」

「結界は条件を付けれる。魔法使いや剣士。魔物を入れない結界とかな。その中の、一定の魔力を持ったものを入れないという条件で、魔物襲撃時、結界を張ったんだ。お前はその、一定の魔力量をオーバーした。つまり、お前に結界内でのペナルティが課され、お前の中の魔力量が低下したって訳だ。」

「魔力が体内から無くなったから、突然倒れたと?」

「そういう事。」


 じゃぁ、魔物は居なくなったのか。


「あぁ。魔物は全滅したよ。」

「……そうですか…」


 魔物は知力はないけど、人間を超える力がある。そこに魅力を感じる。でも、知力が無いから、話すことすらままならない。それでも、魔物と話してみたいという気持ちが変わることはない。


「あと。これだけ聞いておきたかったんだけど。」

「え?」

「君。何者?」


 グレイが僕に近づいて、僕の目を見てそう言った。

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