7話 亡き魔物
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結界完成まであと4分
魔物の量は、減りながらも増え続け、僅かな数しか減っていない。それでも、戦いやすくはなっている。
「ハァハァ…流石に多いな。」
大剣使いが、そう言った。
魔物の死体は、今動いてる魔物の2倍はある。その上、魔物の死体は、魔法で燃やしているため、今以上の死体があった。これは、多いという以外ないだろう。
「もう少しで結界が張れる!もう少し耐えて!」
魔法使いが柵の入口付近で魔法陣と結界を張りながら、戦っている冒険者に言った。
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人影の先には、また女性。今度は生きているが、死にそうなくらいの火傷がある。魔法で女性を浮遊させながら、水で身体を冷やし、ギルドへ向かう。これがレイズの母親である確証はないが、死にそうな人を助けないほど、人間性は腐ってない。
「……うぅ…………」
女性が苦しそうな声を出した。うなされているのか、あまり時間はかけてられないと思った。とにかく走って、ギルドに届ける。治療はその後。
―
ギルド付近にあった火も、前よりはおさまっていた。
「……あっ来た!」
「あっ。」
ギルドの地下室からレイズが出てきていた。
「危ないから、中に入って。」
「はい。」
この女性の治療は、中に入ってからじゃなきゃ駄目そうだ。
―
中の人たちは、前よりかなり落ち着いている。
僕は女性を下に置き、治療を始めた
治癒魔法をかけていると、女性に付いていた火傷痕が段々薄くなっていった。
「あっお母さん」
「えっ」
やはりこの子の母親だったか。
そう思った時、僕の体に激痛が走った。火傷があと少し残っていたが、その激痛で、治療を中断してしまった。
そのまま僕は倒れ込んでしまい、気絶してしまった。
――
結界が完全に完成した。
魔法使いは、魔力の使いすぎで、倒れてしまった。
「結界は完成した!今のうちに村に戻るぞ!」
大剣使いが大声でそう言うと、冒険者が魔物を離しながら村に走っていった。
この結界は、結界内に一定の魔力量を持ったものを入れないというもの。もし結界内に一定の魔力量を持つものが現れたとしたら、その者の魔力が吸われてしまう。吸われた魔力は、結界を作った者に送られる。
「あれ?すごい魔力が…まさか?!」
魔法使いの体に、大量の魔力が送られた。魔物が結界内に現れたのかもしれない。
「皆!この村の中に、魔物が入り込んだかもしれない!」
「「え?!」」
疲れきった冒険者達にそう言った魔法使いは、徐々に自身の魔力も取り戻して行った。
それでもおかしいのは、自分以外の魔力が、ずっと増え続けていた事だ。これほどの魔力を持った者が、何故結界内に入ってこれたのか…と、その時、魔法使いはある事を思い出した。
「なんで…知っている…」
「そりゃ分かるわよ。あんな量の魔力を持った者がこの村に入った瞬間、柵に張ってた結界魔法が反応したの。」
「…フッ。何でもありかよ。お前は。」
あの女の子の事をすっかり忘れていた。
「ビフト」
「ん?」
後ろに居たビフトに魔法使いが言った。
「あの子だ。」
「あの子?ノルスの事か?」
「そうよ。あの子の魔力量が、前の結界で反応した時以上だった。魔物の魔力量を上回っていた。」
「え?」
「確証は無い。でもそうでなきゃ、こんなに動ける体になってない!」
魔法使いはビフトの腹を殴った。
「なるほど。じゃぁ、ひとまずノルスの方に、冒険者達は、魔物が来ないか見張っていてくれ。」
そう言い、ビフトと魔法使いはギルドへ向かった。
――
痛い。苦しい。体から力が抜けていく。もう1人の行方不明者、探しに行こうと思ったのに。体が言うことを聞かず、立つことすらままならない。
そんな時、声が聞こえた。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
その声は、レイズの声だった。そんなに呼ばれても、目が覚めて無いわけじゃないんだよ。でもそろそろ本当に意識が…そんな時、またもや聞き覚えのある声が聞こえた。ビフトだった。
「おい!ノルス!無事か?!」
その声が聞こえた後、僕は直ぐに眠ってしまった。
――
「クソッ。アイツら、結界なんて張りやがって。俺様の計画が台無しだ!」
「そんな事言っても仕方ありません。あの程度の魔物で、あの者がやられるなど…そんな事ありませんよ。」
「…ん?やけに関心しているなぁ?」
「えぇ。何だか面白い事になりそうなので…」
トロールとリッチが焚き火を囲い、話していた。
「そもそも、我々の狙いは、このアンデッドをあの村へ送ること…魔物は元々用意していなかったのですよ。」
「それでも、あそこにいるやつの13人死んだぞ…」
「えぇ。貴方にしては、良くやりましたね。感心しました。」
トロールとリッチは、そのまま話を続けた。
―――
目が覚めた。正確に言えばそうでも無いのだろう。
感覚がなく、辺りは真っ暗。
そして目の前には、人が立っていた。
「気がついたか」
「えっえっ?」
「ああ。自己紹介がまだだったのぉ。ワシは6神の内、魔を司る神。ウォルドじゃ。」
全く訳が分からない。気がつけば何も無い暗闇で。6神とか魔を司る神とか、意味のわからない言葉ばかり話す、老人が居るし。
「お主、何者じゃ?」
ウォルドが僕に話しかける。
「何者?ぼ…私はノルス。」
「違う。お主の前世の事じゃ。」
「えっ?」
前世?なぜ知っている?
「お主はノルスの体で何をしておる。」
「えっ?待ってください。」
「なんじゃ……。」
「この体は、ノルスと言う名前なんですか?」
「何を言っておる。お主も使っておったじゃろ……。」
「あなた。どこまで……」
「あっそろそろ時間じゃ。お主にこれだけは言っておかねば。ノルスの体で好き勝手暴れてくれるなよ。」
「えっ?」
「では……」
ウォルドがそう言うと、暗闇は何かに吸い込まれるように消えた。僕は恐怖心が残りながら、眠ってしまった。
―
「…………ハァッ?!」
勢いよく起き上がった。
「…おっ、起きましたか。」
「え?」
隣に座っている人がそう言った。何処だ?ここは。ベットに横たわっていた。いや、寝ていた。
「2週間っと」
えっ?何が?何が2週間なの?!
「今、村長を呼んできますね。」
あっそっか。あの時倒れて…え?2週間?
「よぉ。」
そんな事を考えていると、ビフトが来た。
「大丈夫か?」
「いやぁーごめんねー。」
ビフトと魔法使いが来た。
「ん?」
「あぁ。」
僕が魔法使いの方を見ると、ビフトが説明を始めた。
「こいつは冒険者のグレイ。」
「どうもー。へース・グレイです。」
「どうも……。」
この魔法使い。さっき謝ってたけど…
「いやー。まさか結界に引っかかるとは…」
「え?」
「あぁ。説明しなきゃだな…2週間前、この村に魔物が襲撃した。魔物をこの村に入れないために、グレイが結界を張ったんだ。でも、その結界条件にお前が引っかかってな…」
「どうゆう事だ?」
「結界は条件を付けれる。魔法使いや剣士。魔物を入れない結界とかな。その中の、一定の魔力を持ったものを入れないという条件で、魔物襲撃時、結界を張ったんだ。お前はその、一定の魔力量をオーバーした。つまり、お前に結界内でのペナルティが課され、お前の中の魔力量が低下したって訳だ。」
「魔力が体内から無くなったから、突然倒れたと?」
「そういう事。」
じゃぁ、魔物は居なくなったのか。
「あぁ。魔物は全滅したよ。」
「……そうですか…」
魔物は知力はないけど、人間を超える力がある。そこに魅力を感じる。でも、知力が無いから、話すことすらままならない。それでも、魔物と話してみたいという気持ちが変わることはない。
「あと。これだけ聞いておきたかったんだけど。」
「え?」
「君。何者?」
グレイが僕に近づいて、僕の目を見てそう言った。




