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泰平の魔物 原  作者: 敗北者
1章
5/12

5話 冒険者


 アンデッド襲撃まであと20日


 稽古初日から、ノルナからは基本の魔法以外に、攻撃魔法や支援魔法等。四大元素以外の基本の魔法を叩き込まれた。

 今日は僕だけ、ノルナ以外の人が魔法以外の技術を教えられるらしい。ビフトからそう言われたが、誰かは聞いていない。今からその人と会うために冒険者ギルドに向かっていた。早朝から。


「……で?誰なの?」

「お前なぁ?前から思っていたが、なんかタメ口が多くないか?」

「え?ん?あぁぁ…」


 今思った。そういえば、ビフトと敬語で話し合ったのって、本当にあって最初の時ぐらいで、今じゃただの友達位の距離感。


「…まぁまぁ。もうすぐギルドに着くし…」

「はぁ。まぁ良いけど。」


 いやぁ〜、ビフトには悪い事をした。

 …でも本当に、誰なんだ?僕の稽古って。



 冒険者ギルドに近づいた時、話し声が聞こえてきた。

 それは近づくにつれ、大きくなり会話内容も分かるようになってきた。


「――だから!今日俺は、剣の使い方を教えるの!」

「だから?誰にだよ…?」

「俺も分かんねぇけど…でも!本当に…」

「嘘だろ?」

「いや嘘じゃ…」

「あっ分かったぜ?お前、嘘ついてるだろ。」

「あ?…いやさっきと変わってねぇじゃねぇか。…あっ」

「「…?」」


 楽しそうに話している男3人が、こちらを向いた。まさかとは思うが…


「よう!」


 村長が手を大きく開き、男3人に向ける。


「おぉ。ほら本当だぞ!お前ら!村長も居るし!」

「あぁあぁ…」

「まじか。」


 あぁ。予想があっていた。この男が、俺の稽古を…まぁ良いか。悪いやつよりかはマシだ。


「ほんじゃ、宜しくな!」

「…?それで、稽古の相手は…」

「え?」

「あ…」


 コイツー。何も言って無かったな。説明をしてからにしろよ!


「あっえっと〜。この子です…」

「えっあっはい。」

「ん?え?あ?あ〜……え?」


 当然の反応だろう。こんな小さい、しかも女の子。まともに戦えないだろうと。


「…おい?もしかして?稽古の相手って…」

「あぁ。コイツだ。」

「え〜。」


 唖然とした顔で村長を見る男。よく見たら、剣を持っている。剣1本と木剣の様なもの2本。しかも、他の2人も剣を持っている。


「おい!おいおいおいおい。あいつ本気で言ってんのか?」

「まぁ、村長も居るし、本気だろうな…」


 他2人が奥で話している。お前ら、聞こえてんぞ。


「しかしなぁ〜?どうして言ってくんなかったんだ?村長。」


 ホントにな!?ビフト!


「あぁ〜悪いな。」

「まぁ〜良いですけど。今日からでしたっけ?」

「あぁ。今日から3日間、稽古を付けてもらう。報酬は弾むぞ〜?」


 ビフトが男に寄った。

 お前、顔がやべぇぞ。


「あのなぁ。俺は報酬に興味はねぇんだ。自分に足らない所を知るために、この依頼を受けたんだ!」

「おぉそうだったな。」


 後ろに居た男2人がこちらに寄って来た。


「…まぁ。頑張れよ。」

「お前の報酬で飯食おうぜ!」

「……ハハッ。」


 2人の男に少し驚いた顔をした男は、直ぐに笑う顔になった。


「バカにしねぇんだな?」

「おいおい。その言い方じぁ、そこの嬢ちゃんに失礼だぜ?」

「あぁ。それに、お前は目的があって依頼を受けたんだろ?」

「あぁ。」

「なら、がんばれよ。」

「おう!」


 意気込んだような、気合いの入った声を、この場に轟かせた男。…悪い。僕はそこまで戦闘に慣れてない。僕から学ぶ事などないだろうけど。


「あぁ。自己紹介がまだだったな。俺はフランメ。フェヒター・フランメ。君は?」


 フランメからそう聞かれた時、ビフトは僕の背中を押した。そして僕を満面の笑みで見つめた。


「…私は、ノルスです。」

「宜しくな。ノルス。」

「はい!」


 フランメの声より、大きく、威勢のいい声が、その場に響いた。


――


 森の奥で、1人の魔法使いと1人の大剣使いが、ゴブリン退治へと向かっていた。


「……やっぱり多い。」

「あぁ。ここに来るまで、もう10体だ。日に日に量が増えていく。これじゃぁ、クエスト達成も何も無いぞ。」


 2人は魔物が増えていくのに、疑問と疲労を感じていた。


「……っ!来た。」

「…!」


ガンッ


 大剣の何かを切る大きな音が、森中に響いた。魔物だ。魔物が現れていた。


「…コイツはやばい!」


 そう言いながら、大剣使いが剣を振り、魔物を遠ざけた。そこに、先程まで詠唱を唱えていた魔法使いが、その魔物に対し、魔法を放った。


「『水切り《ウォーターカッター》』」


ザザッ


 水で出来た刃が2発魔物に当たり、魔物はそのまま倒れてしまった。


「…よし。じゃぁ解体だ。」


 大剣使いが、腰にしまっていたナイフを取り出し、しゃがんだ。


「…これ。タイガーウルフだ。」

「え?」


 タイガーウルフはウルフの上位種族で、大きく硬く鋭い歯と刃を持ち、近接攻撃にたけている魔物。毛皮は高く売れ、肉は食う事も出来る。刃は防具や武器の素材にもなる。残すところがないと言われるほど貴重な魔物。

 普段、タイガーウルフは木の生えていない、石で出来た山で川の魚を食いながら暮らしている。こんな森に出るはずがないと、2人は疑問に思った。


「……あっ。そういえば、一昨日、フランメがタイガーウルフを見たって…」

「あぁ。言ってたな。」

「でもあの日行った所は、まだあの山に近かった。」

「……。」

「…とりあえず、今日は帰りましょう。」

「あぁ。」


 冒険者ギルドに話す他ないと2人は思い、解体作業ご後、直ぐにギルドへ向かった。


――


 明るくなって来た頃。向かっていたのはギルドの酒場のすぐ下。地下室。かなりの広さがある。

 そこには、カカシみたいな的が、何本も立っていた。


「…よし。ここでするか。」

「はい。」


 フランメは、持っていた木剣2本の内、1本を僕に渡した。


「1度、手合わせをしよう。」

「手合わせ?」

「君の強さを知らない状態で、稽古する訳にも行かないだろ?」

「…はい!」


 フランメって、思っていたより冒険者だな。ゲームとかでよく居る冒険者って感じ。


「じゃぁ。始めるぞ。」

「はい。」


バンッ


 フランメが足を地面に勢いよく踏みつけ、前へ体を倒しながら、木剣を振りながら向かってきた。


「フンっ」

「うおっ」


 木刀がの先が腹に当たりそうになる時、反射的に体が動き少し後ろへ下がった。

 僕から見て右から振られた木剣は、すぐさま方向を変え、左上から右下まで振り落とされた。


「うわぁあぁあぁあ」


 僕はそのまま尻もちを着いて地面に倒れた。


「いてててて。」

「……。」


 フランメは、真剣な顔でこちらを見る。


「あっあの…」

「…おい。」

「はい!」

「君、今まで何かしていたか?」

「えっ。いえいえ。」

「そうか…」


 なんだ?全然戦えてない僕に何を感じたんだ?


「君、凄いね。」

「ん?」

「僕の攻撃が全て避けられるとは…」

「あぁ。」


 木剣を1度も振れなかったのに対して、叱りも怒りもせず、ただ褒める。凄いな、この人。

 でも、今木剣が避けられたのは偶然なのか?本当に体が動かなかった。と言うより動かなかった。それなのに、何故か反射的に動いた。


「所で…」

「はい!」

「ん?どうした…」

「あっいえ。」


 やばい、考え事をし過ぎた。


「それで?」

「あぁ。そうだった。君さ、20日後のアンデッド襲撃に対抗する冒険者だろ?」

「え?」

「あのアンデッドを倒すためには、魔法が有効。なのに何故、君はここにいる。」

「あっ。…そうですね…」


 確かに、アンデッドには魔法が有効。魔法を学んでいる今、剣術を学ぶ意味は、何処にあるのか。ビフトの考えが分からない。


「分かりません。ビフトにそう言われたので。」

「そうか。」

「……。」


 2人はそのまま立ち止まっていた。

 そんな所に誰かが来たのか、足音が聞こえた。階段を降りる音が近ずいてきた。


「おーい!」


 その声は聞き覚えのある声だった。


「…ビフト?」

「おぉ!村長!」


 ビフトはなんで来たのか…


「…はぁはぁ。お前たち、大丈夫か?!」

「え?」

「…何か…あったんですか?」


 疲れきったビフトにフランメが問いかけた。


「…村に…魔物が…」

「え?!」

「な?!」


 魔物?!なんでだ。アンデッド襲撃は20日後だぞ?!


「とりあえず、上に向かいましょう。」


 フランメは、僕とビフトを急かすように階段へ向かった。


「だが…」


 ビフトは何か言いたそうに、そう言った。


「ノルスはここにいろ。」

「えっ」


 まぁ、当然の事だろう。まだ魔法がまともに使えない。その上、それなりに動ける訳でもない。


「……分かりました。」

「……。」


 ビフトは僕を見ながらゆっくり頷いた。


「ノルスはここで、住民を誘導してくれ。」

「はい。」

「…よし。行くぞ!」

「あぁ。」


 フランメとビフトはそう言って、階段を登って行った。


「そう言えば、ビフトはこの村の村長だったな。」


 僕はそう小声で呟いた。


「これで良かったんだ。だって、僕は、魔物は殺したくない。」


 僕は下を向いて立っているしかなかった。

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