3話 過去と今
村長は、部屋の中で僕とノルナを座らせた。
「今からお前たちに、この世界の歴史について話す。」
「え?どうして?」
「この後の話に必要なんだ。」
「……。」
2人は黙って、尊重を見た。村長は頷き、話を始めた。
『1000年前。この世界に2つの大陸が存在した。神はそれぞれの大陸に、生物を生み出した。
1つの大陸には人間、ドワーフ、エルフ。いわゆる人種をバラバラの位置に生み出した。神はこの大陸をミズルと名付けた。もう1つの大陸には魔物。言わゆる魔種を生み出した。神はこの大陸にヘルと名付けた。
人種と魔種には大きな違いがあった。人間等は1つ1つのエネルギーから成り、魔物は魔力から成る。
500年経ち、人種と魔種は友好な関係を築いた。この友好な関係は長く続いた。そこから多くの者も生まれた。その1つがアンデッドやドラゴン。このような生物もまた魔種に含まれる存在であった。
だが、しばらくすると凶暴な魔物がヘルに生まれた。その魔物はその見た目からか、1部人種や魔種から嫌われ、裏切られた。彼は成長する度凶暴になっていき、ついには人種を殺すようになった。彼が大人になる頃には「狂暴な魔物」と言われる様になった。そして彼は世界が認める最初の魔王となった。』
「…という歴史がこの世界にはある。」
「えー…」
「ちなみに冒険者ギルドはアンデッドとかを倒すために、勇者と呼ばれる人間が作ったんだよ。他にも勇者は、王国や武器を作り、魔人を2人倒した。」
魔物に魔人、魔王、アンデッド。冒険者ギルドや勇者と呼ばれる人物。間違いない。僕はこの異世界に転生したんだ。
「なるほどな〜。」
元々、前世の生活は生きづらかったんだ。
僕が10歳の時に母が死んで、それで父は酒を飲むようになった。裕福ではなかった生活は、父の酒癖やタバコの出費で、更に貧困生活へと追い込まれた。
学校ではその貧困生活からあまり筆記具等があまり買えず、いじめられた。
そんな生活が終わったのが、中学卒業後。高校に入るのと同時に家を出た。アパートに住み、バイトをし、学校とバイトが休みの日は、1日中ゲームとアニメで過ごす日々。長期休暇にはバイトを休み、家でニートのような生活。
冬休みのある日、日本列島ほぼ全体で大雪に見舞われ、それと同時に大地震が起こった。あちこちで津波や火災、土砂崩れ。大きな被害が出た。
山からは雪で凍った草が、人を滑らせ落ちて亡くなった人も居た。
その中に僕が居た。
僕は山から落ちる時、空を見上げていた。空には大きな飛行物体のようなものがあった。その飛行物体はあぐらをかき、膝に腕を乗せ、僕たちを見ていた。
僕は死に際、その飛行物体と目が合った気がした。
ファンタジーの物語なら、十分有り得る話。
あの飛行物体が、魔王である可能性。そんな憶測が頭に浮かんだ。もしそれが本当なのならば、目的はなんなんだ?この世界の人々を支配する前に、別世界で殺人をする意味が無い。
いや、待て。目的が必要な事なのか?
魔王は昔、ほとんどの生物から嫌われていた。ならどうだろうか。別世界の生物を、自分の感情に任せ殺す事など容易いだろう。僕がこの世界に転生したのにも意味があるのだとしたら…僕はこの世界で、その理由を探す必要がある。
「そしてアンデッドが、1ヶ月この村に攻め込む。」
「え?!」
「そこでだ。お前にそのアンデッドと戦ってもらいたい。」
村長はそう言い、僕のことを指さした。
「どうして?」
「アンデッドには、魔法がよく効く。魔法は使えるか?」
「いえ。」
「だろうな。」
少し腹が立った。
「ノルナは魔法について学んでいる。だから、魔法についての知識が豊富だ。」
「フフーン!」
ノルナが自慢げな顔で僕を見た。
「そこで、お前にノルナの稽古をつけて、魔法を使えるようにして欲しい。」
「どうして私?」
「お前に魔力検知で魔力を測ったんだが、この村1番の魔法使いにも余裕で勝てるほどの魔力があった。お前が魔法を習得すれば、かなりの戦力を持てると思ってな
〜。」
「魔力検知?」
「その名の通り、自分や相手の魔力や性質を調べる事が出来るんだ。ある人から教えて貰って。」
「それで、私の魔力が?」
「あぁ。村1番の魔法使い以上だったんだ。まだ、魔法を身につけていないなら、ノルナに稽古付けてもらって、ギルドに入り、戦ってもらいたい。」
ギルドはきっと、冒険者ギルドの事だろう。自分が戦えるようになったら、この村を守れるのかな?
「分かった。」
「…よし!じゃぁギルドで冒険者登録だ!」
「はい!」
――
「―――なぁ?こんな数のアンデッド必要か?」
「必要だとも。何事にも予期せぬ事故にも備え、準備しておく事は大切だ。」
「そうか?ならいいが…」
焚き火の周りに2体の魔物。この2体の魔物は、その種族の中でも上位魔物。魔人に近い。
ガタイが良く、眠そうにしているトロール。
足がなく、知能の高いアンデッドのリッチ。
その2体の魔物の周りには小さな木があり、その周りには大量のスケルトンが居た。剣を持った者から矢を持った者など。その数、300体以上。
「そうだ。今回の作戦の報酬は?」
「今回の作戦は村を落とすという物。報酬は作戦終了次第、回復ポーションと金貨200枚の配布。そして、知識の書のおまけ付き。」
「…!」
トロールは驚くような顔でリッチを見た。
「今回の報酬は豪華だ。失敗は許されないよ。」
トロールは唾を飲み込み、言った。
「………勿論だ……。」
「決行は明後日。宜しく頼む。」
「……あぁ。」
――
この世界、よくあるファンタジーで助かった。ギルドの設定とか、勇者とか。何もかもが分かりやすい。
それはさておき。冒険者ギルドは村の真ん中。石レンガでできた塔の下にある。
村長と僕は、その冒険者ギルドへ向かった。勿論ノルナは留守番。それと、僕は村長の家に泊まる事になった。
冒険者ギルドは、塔の下に飲み場入口ドアと、受付をする案内口が並んでいる。そこの案内口に村長と行った。
「ありがとうございましたー。…あっ貴方。」
「おう。」
ん?……貴方…旦那……妻…結婚……結婚?!
「あの〜。お2人はお結婚してるんですか?」
「ん?この子は?」
「あぁ。対アンデッドの戦力に入る可能性がある子だ。名前はノルス。ノルナに似ていて、魔力量が高い。」
「……」
受付人は、疑いの目で僕を見た。
「本当にこの子が?」
「あぁ。」
「そう。それなら良いんだけど…」
まぁ、見た目は少女。まともに戦えるかも分からないし、死ぬ可能性もある。戦えるかすら分からないし…でも、前世でやってたゲームの知識が役立つかもしれない…?あれ?これ大丈夫か?
「あぁ。私はレスト。あなたの言う通り、この人の妻よ。」
「へー。あっそう言えば、村長の名前って…」
「あれ?言ってなかったか?俺はビフスだ。」
「……初めて聞いた。」
「あら?」
「あー!それはともかく。ノルスの冒険者登録をしてくれ。」
「そうね。」
て言うか。なんで、冒険者登録をする必要があるんだ?
「あのー。所でなんで登録を?」
「アンデッドと戦うために必要な資格のようなものだ。」
「あと、冒険者登録すれば、登録証が貰える。その登録証を国境の門人に提示すれば、無償で国に入る事が出来る。」
「国を通るのに、お金が?」
「あぁ。不正や犯罪を防ぐためにな。」
あら?ここにもファンタジーあるあるが…
―
少し時間が経った。案内口の隣で、色々な検査をした。魔力検知や戦力としてこの村を守れるか。
幸い、ゲームの知識が役立ち、テストや実践は合格になった。VRに手を出していて良かった。
「じゃぁ、ここに名前と年齢を書いたら、登録証を発行するわっ。」
「はーい。」
あっ、そう言えば、今僕が使ってるノルスって名前、あの日記のやつだよなぁー?……まぁいっか。同名ってことで。でも、年齢は…これも日記通りに12歳っと。
「はい。」
「はい。ありがと。」
文字も頭に浮かんできた。けど、なんで書けるかは分からない。言語も理解したし、なんかの能力でも取得していたのかな?
「はい。確認しました。では登録証を発行します。」
「ありがとうございます。」
そう言えば、村長ことビフスさんは、アンデッド襲撃の作戦会議で家に戻った。
「…はいっ。登録証の発行が出来ました。ご確認下さい。」
「はい………。」
間違いはない。…あれ?職業の欄に表記が無い。
「あの、職業は…」
「あぁ。検査に失敗してね。最近精度が悪いの。だから、流されたけど…精度が良くなってきたら、また呼ぶわ。」
「そうですか。」
「他に間違いは?」
「ありません。」
「では、そのままお持ち帰り下さい。」
「ありがとうございました。」
笑顔で登録証を渡してくれたレストさんを後ろに、僕はビフトさんの家に向かった。




